NBAドラフト外、2WAY契約→解雇の苦労人がユーロリーグでMVPに!マイク・ジェームズの波乱万丈キャリア<DUNKSHOOT>

ユーロリーグの2023-24シーズンのMVPに、モナコのマイク・ジェームズが選出された。

フランスの強豪チームを牽引するアメリカ人ガードは今季、レギュラーシーズン全34試合にプレーオフ5試合の計39試合にスターターとして出場し、リーグ2位の平均17.9点、5.1アシスト、自己最多の4.1リバウンドを記録。フェネルバフチェと対戦したプレーオフの第2戦を除く全試合で2桁得点をマークした。

勝率で2位のパナシナイコスと並ぶ第3シードでレギュラーシーズンを終えたモナコにおいて、持ち前の得点力だけでなく、オールマイティーな活躍を披露したジェームズが立役者であったことは言うまでもない。

それだけに、プレーオフでは平均13.0点にとどまり、最終戦を1点差で落としてファイナル4(準決勝)進出を逃したのは、彼にとっては悔やまれることだろうが、この試合でしのぎを削った対戦相手フェネルバフチェのエース、ニック・カレイテスは、「彼はアメージングなプレーヤーだ。もし今シーズン、ユーロリーグのMVPが彼に与えられなかったとしたら、僕はものすごくショックだし落胆するだろう。彼がこのチームのためにしてきたことは、それに値する」と熱いコメントを寄せていた。
現在33歳のジェームズは、無指名に終わった2012年のNBAドラフトのあと、すぐに欧州へと渡り、クロアチアのKKザグレブを皮切りにヨーロッパでキャリアを築いてきた。

ユーロリーグには、スペインのバスコニアに所属していた2014-15シーズンに初出場。翌年には、このバスク地方の雄を8年ぶりのファイナル4に導いている。

今季はジェームズにとってちょうどユーロリーグ参戦10シーズン目にあたり、節目の年での受賞となったわけだが、平均19.8点で得点王となった18-19シーズンなど、これまでも何度か候補には挙がりつつも、受賞には及んでいなかった。

しかし今季は、第28節のレッドスター戦でそれまでヴァシリス・スパノーリス(元オリンピアコスほか)が保持していたユーロリーグの得点記録(4455点)を更新し、歴代トップスコアラーに君臨するという快挙も成し遂げた。その後シーズン終了までに4623点まで記録を伸ばしている。 歴代得点王となった時点でジェームズのMVP受賞の可能性はさらに高まったが、肝心なのはモナコがファイナル4に残るかどうかだった。昨季までの過去18回において、ファイナル4に進出していないクラブからMVPが選出されたことはいまだかつて一度もなかったからだ。

しかし、投票に参加したファン、メディア、各チームのキャプテンとコーチにとって、ジェームズの今シーズンの活躍ぶりは、その慣習を打ち破るほど目覚ましかったということだ。

ジェームズはまた、ユーロリーグがアウォードを導入した2004年の初代MVPであるアンソニー・パーカー(元マッカビ・テルアビブほか)以来、2人目のアメリカ人受賞者となった。

パーカーは、NBAから欧州に渡ってユーロリーグで活躍し、そこからまたNBAに復帰するというキャリアを辿ったアメリカ人選手の草分け的存在で、初年度を含む2回、しかも2年連続でMVPを受賞した唯一の選手でもある。

ジェームズも、12年に及ぶプロキャリアの中ではNBAも経験した。
2017-18シーズンに導入されたばかりの2WAY契約をフェニックス・サンズと結び、12月には本契約に昇格した初の選手に。しかし同月に解雇の憂き目に遭い、1月にニューオリンズ・ペリカンズと同じく2WAY契約を結ぶも、ここでも2月に解雇と、いずれも短いキャリアに終わっている。

最近では2020-21シーズンの終盤にブルックリン・ネッツと10日間契約を結び、この時にチームメイトだったケビン・デュラントが翌年、モナコに彼の応援に来るという微笑ましいシーンも見られた。

CSKAモスクワ時代にはヘッドコーチと衝突して謹慎処分になったこともあり、「気難しい」、「自己中心的」という印象を持たれがちだが、デュラントをはじめ選手仲間からは「熱い男」として一目置かれている。

なお、オールユーロリーグ1stチームには、ジェームズと合わせて以下の4人が選出された。

ファクンド・カンパッソ(レアル・マドリー/元デンバー・ナゲッツほか)
ケンドリック・ナン(パナシナイコス/元マイアミ・ヒートほか)
ナイジェル・ヘイズ・デイビス(フェネルバフチェ/元サクラメント・キングスほか)
マティアス・ルソー(パナシナイコス)

フランス代表のビッグマン、ルソー以外はNBA経験者。そしてジェームズを除く4人は、全員ファイナル4出場チームのメンバーだ。その注目のファイナル4は、5月24日に準決勝、26日に決勝が行なわれる。

文●小川由紀子

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