訪問看護師のDX化で成長街道を歩む:eWeLLに株価も期待を示す

eWeLL(東証グロース。以下、イーウィル)。在宅医療を担う訪問看護師向けの記録作成などの支援ツールを、クラウド提供で展開している。基軸は訪問看護専用の電子カルテ(iBow:アイボウ)。

慢性期医療の在宅患者が対象。高齢化の加速で急性期医療(病気になり始める時期)から慢性期医療が必要な患者が加速している。対して訪問看護師の確保が困難な状況になっている。

厚労省の調べでは、2022年の訪問看護師の概数は約10万人。これが25年には約13万人が不可欠と想定されている。ちなみに23年4月時点での訪問看護事業所数は1万5697。14年の7473拠点に比べると右肩上がりの増加傾向にはあるが、厚労省では前記のとおり「いまだ訪問看護師の数は足りない」としている。

看護師数の増加と並行して求められているのが、訪問看護事業のDX化の推進。イーウィルはDX化推進に焦点を当て、2016年に設立された。

具体的には、訪問看護師は看護情報を作成し、それに基づきレセプト(診療報酬明細書)を作成する。従来は、手作業で行われ、看護師に多くの時間を強いてきたものだ。がアイボウを活用することで自動的にレセプトの作成が可能になる。患者のケアに費やす時間がその分、増える。

イーウィルは創業者社長の中野剛人によって起業された。元水上バイクのプロライダー。2006年・07年には年間チャンピオンにもなっている。

それが現業を興した理由を中野氏は、こう語っている。「事故で生死をさまよった際に助けてもらった看護師に、恩返しがしたかった」。

時流に沿った事業であることは、上場(2022年9月)後の収益動向に顕著に示されている。初の22年12月期が「34.4%増収、72.4%営業増益、15円配開始」。前23年12月期は「29.1%増収、31.2%営業増益、5円増配20円配」。今期も「23.7%の増収(25億6000万円)、22.3%の営業増益(11億1100万円)、2円増配22円配」計画。今年1月付けで1:2の株式分割も実施した。

かつ至26年12月期の中計を開示。「売上高41億7700万円(23年12月期比2倍強)、営業利益18億7000万円(2倍強)、営業利益率44.9%(2.3%P増)」を掲げている。

公開公募価格1700円に対し初値3910円で生まれた株価の時価は、CPI人気の調整を経て1400円トビ台。1月の2025円から4月の1324円まで押しを入れ戻り歩調。じっくりと構えて中長期視点で付き合うべきか・・・

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