『BeReal』COOがZ世代に伝えたい″家族や友人とのつながり″の大切さ 「多くの時間をリアルな世界で送ってほしい」

Z世代を中心に人気を集めている『BeReal』。その最大の特徴は、1日に1回だけ来る通知から2分以内に「リアルな瞬間」を撮影するという仕組みになっていることだ。時間通りに投稿すると追加の“BeReal”を獲得できるため、Z世代の間では「BeReal来た!」という通知が来たことを示す会話が日常になっている。″盛る″ことに疲れてきた現代を生きるZ世代には、突如撮影の瞬間が訪れるため「自分のありのままの姿を投稿せざるを得ない」という状況が生まれることが支持されており、筆者もZ世代ユーザーの一人として、日記感覚で日常の瞬間を記録に収めることを楽しんでいる。

周囲からは『BeReal』を利用して以来、自然体の姿を写真に収めることに抵抗を感じなくなったという声も聞かれるなど、日本のZ世代から幅広く支持されている。そこで本稿では『BeReal』の COO、Romain Salzman(以下、Romain)に『BeReal』誕生のストーリーやZ世代を中心に人気を集めている理由、今後の展望などについて聞いた。是非本稿を通して、他のSNSとは違う『BeReal』の魅力を再発見してほしい。

■SNSに時間を費やさない″ありのままの瞬間″を大切にする理由とは

――『BeReal』を立ち上げることになった経緯を教えてください

Romain :『BeReal』は、SNSが私たちの精神的な部分に与える負の影響、具体的にはFOMO(他人の楽しみを見逃す恐怖)やフィルタリングに対抗し、最も親しい人々とのリアルなつながりを重視し創設されました。コロナ禍において、家族や友人と離れ離れになり孤立する人も多く、日常のリアルな瞬間を共有する場所が必要でした。そこで、『BeReal』の自分たちのありのままの姿を素直に見せるスナップショットを共有する手段はコロナ禍以降注目を集めました。

――「サービス側が指定したタイミングで写真を撮る」というアイデアを思いついたきっかけは?

Romain :『BeReal』の目的は、最も親しい友人たちと″ありのままの瞬間″を創出することです。私たちは、その日のリアルなスナップショットを人々に共有してもらうことを促進したいという想いがあります。

他のSNSでは、人々が面白いことが起こっている時や、生活が充実して見える姿のみを投稿する傾向にあると思います。一方で″ありのままの瞬間″を重視する『BeReal』では、人々があえて投稿内容の計画を立てにくくすることが重要だと感じました。そこで、サービス側が指定したタイミングで写真を撮ることで完璧なイメージを創造させるのではなく、人々にその時何が起こっているのかをそのまま共有することにしました。『BeReal』は通知とともに公開されるのみなので、ユーザーがスマホをスクロールする時間を消費することを軽減することも期待しています。

Z世代が求めるSNSは量より質?限られたユーザー同士で日常を共有することが支持されるワケ

――なぜここまでZ世代の支持を得ることができたと考えていますか?

Romain :Z世代はフィルターがかかったコンテンツと共に成長してきており、今では画像の背後にある実生活をもっと見たいと感じています。そこで『BeReal』では等身大の自分を共有する方法をユーザーに提供しているからこそ、これまで以上にリアルなつながりを求めているZ世代の支持を得ることができたと考えています。

――毎日の通知を送るタイミングに法則性は持たせていますか?

Romain :『BeReal』のユーザーは通知時間に非常に関心を持っており、日本のユーザーも通知時間を意識し様々なコンテンツを投稿してくれています。しかし通知タイミングには特定のパターンはありません。ランダムではないものの、そのタイミングがどのように決定されるかは秘密です。

―― Z世代にとって『BeReal』が『Instagram』のストーリー機能よりも利用・更新頻度が高いことについて、どのように分析していますか。

Romain :『BeReal』が『Instagram』のストーリーズと大きく異なる点は、量より質を重視している点です。私は多くの人に実生活を伝えるのではなく、選ばれた少数の人々と無防備な瞬間を共有してほしいと考えています。
『BeReal』ユーザーは1日に1度、通知が来た時に参加し友人と瞬間を共有した後、スマホから離れることができるので、多くの時間をスマホを置いてリアルな世界で送ることを望んでいます。

■公式アカウントやEvents機能など新機能登場で拡大する″つながり″の選択肢

――これからの課題はありますか?

Romain :私たちの最大の課題は、人々が最も親しい家族や友人と本物のつながりを持つ方法を見つけ出すことです。私たちは、ユーザーが期待している品質基準を維持し続けたいと考えており、そのために新機能や新しいツールに関する試みに絶えず投資しています。なお、私たちはSNSの世界にポジティブな影響を与えたいと考えており、常にユーザーが求めることを自分たちが行えているかどうかを確認することが私たちの課題です。

――新機能(公式アカウント)の詳細と活用方法について教えてください。

Romain :「RealPeople and RealBrands(公式アカウント)」は、ユーザーが最も興味を持つブランドや人物を見つけてフォローする方法です。これらの公式アカウントも、全ユーザーと同様のルールに従う必要があり、ファンが見たいと望むフィルターなしのリアルなコンテンツを共有します。

ユーザーは最大42のRealアカウントのみをフォローできるため、本当に詳しく知りたい人やブランドを選ぶ必要があります。現在アプリには多数の公式アカウントがある(スポーツチーム、俳優、ミュージシャン、コンテンツクリエーター、美容およびファッションブランドなど)ので、誰とつながる時間を過ごすかを慎重に選んでほしいですね。

この新機能により、友人や家族とのより深いつながりを築くだけでなく、彼らが好む著名な人々やブランドともつながりを築くことができるようになりました。しかし、優先事項は友人や家族とのつながりだと考えています。ユーザーが公式アカウントのフォローを拒否したとしても、『BeReal』での体験は全く変わらず継続することができます。

――今後の展開として考えていることを教えてください。

Romain :昨年、いくつかの新機能(タグ付け、BTS、RealGroups、Bonus BeReal、メンション)を導入し、最近ではEvents機能とRoulette(ルーレット)を新たに追加しました。

Events機能では、ユーザーがイベントの公式アカウントから舞台裏やステージからのコンテンツを見たり、会場または会場外でも自分のイベントコンテンツを共有することができます。この機能は米国のコーチェラフェスティバルで導入され、様々なアーティストがコーチェラでのステージ上の姿を『BeReal』を通じて共有しました。また、ジョー・ジョナスやナイル・ホーランのようなアーティストや、パリ・サンジェルマン、FCバルセロナのようなスポーツチームの公式イベントも開催しています。

また、新たに導入されたRoulette(ルーレット)機能では、ユーザーが写真のホイールを回し、自分のスマホのカメラロールからランダムな写真を選ぶことで、その瞬間に対する反応と共に共有できます。

今後も、ユーザーが互いにつながり、日常のユニークで無防備な瞬間を友達や家族の間でもっと共有できる機能を追加し続けたいと考えています。

(取材=中村拓海、文=田中亜梨朱)

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