ALS患者、痰吸引後に人工呼吸器外れ死亡 遺族が病院側を提訴「担当看護師への指導義務怠った」 鹿児島地裁

 鹿児島市の医療法人春風会田上記念病院で、2019年に筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の女性=当時(67)=の人工呼吸器が外れ死亡した事故について、遺族は17日までに、看護師の指導義務を怠った過失があるなどとして同法人に約4600万円の損害賠償を求め、鹿児島地裁に提訴した。16日付。

 原告で女性の長男(47)は、17日のオンライン会見で「同様の被害者が出ないよう、病院のずさんな管理体制を見直してほしい」と訴えた。

 訴状などによると、19年5月23日、担当看護師が人工呼吸器を外し痰(たん)を吸引。再接続したが緩んでいたため呼吸器が外れ、1時間近く酸素が流入せず心停止になった。その後、低酸素脳症による多臓器不全で6月13日に死亡した。

 人工呼吸器は取り外し不要だったにもかかわらず、担当看護師は日頃から外して痰を吸引していた。事態に気付かなかった人員体制にも問題があったとしている。

 事故を巡っては、遺族が20年7月22日、業務上過失致死の疑いがあるとして告訴。鹿児島地検は24年3月29日付で、理事長兼院長と看護部長を不起訴処分とした。鹿児島区検は担当看護師を略式起訴し、鹿児島簡裁が4月8日、罰金50万円の略式命令を出した。

 同法人は「訴状が届いていないのでコメントは差し控える」とした上で「事実が確認でき次第、誠意を持って対応していく」としている。

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