熾烈を極めた体操男子のパリ五輪代表サバイバルレース。注目の”チーム貢献度”に水鳥強化本部長が「一番アツイ」と挙げた選手は?【NHK杯】

大舞台の切符を掴むのは誰か――。

今夏のパリ五輪代表選考会を兼ねた体操のNHK杯が5月17日、群馬・高崎アリーナで行なわれ、男子個人総合予選は4月の全日本選手権2位の岡慎之助が合計258.196点を叩き出し、全体トップに立った。2位には萱和磨が256.495点、3位は2大会ぶりの五輪出場を狙う田中佑典が255.128点の僅差で追う。

全日本の得点を持ち点として争われる今大会。絶対王者の橋本大輝がすでに五輪内定を決めており、残るイスは4枠。佳境を迎えた代表選考レースはNHK杯の上位2人が内定し、残り2人はチーム貢献度によって決まる。

17日の予選を終え、このままいけば首位の岡、2位の萱の2人が五輪切符を獲得。団体を組んだ時に高得点となる選手が貢献度で選出される2人のうち1人は、今大会終了後の10位以内。もうひとりは順位に関係なく選出される。

上位7人の得点差は3.967点差の僅差で、ひとつのミスも許されない。たとえ2位以内を逃しても、種目別で高得点を稼ぐ強いスペシャリストにとっては、代表入りの可能性は残されており、いかにミスが少なく高い演技力で得点につなげるかが五輪切符を掴むカギとなる。まさに、最終選考会に相応しい痺れる展開のなか19日の決勝を迎える。
激闘の予選を見守った男子の強化本部長を務める水鳥寿思氏は、「あくまで参考」と前置きしたうえで、現状での代表候補選手として田中佑典、杉野正尭、谷川航らの名前を挙げた。

12年ロンドン、16年リオ五輪に出場している田中は5つ目の平行棒(15.100点)と、最終種目の鉄棒(14.666点)で高得点をマーク。特に平行棒は全体2位で、1位の岡と0.033差の大接戦だったことに注目し、「平行棒の貢献が大きいので可能性はある」と言及した。あん馬で全体1位だった杉野の実力も高く評価しつつ、東京五輪団体総合で銀メダルに貢献した谷川航も侮れないとし、「跳馬がバチッとくれば、入ってくる可能性はすごいある」と見解を示す。

同強化本部長は「日本が少し苦手としているつり輪とか、1種目なんですけど、すごく(得点が)取れるっていう選手にもチャンスが回ってくる可能性はゼロではない」とも話し、決勝の結果次第ではサプライズ選出の可能性も示唆する。

予選の結果を踏まえ、岡と萱が決勝でもワンツーだった場合は、最上位の貢献度は谷川と田中の2名を挙げたが、「割とどの組み合わせでも残ってくる可能性があるのは、杉野選手。一番アツイ」と強調する場面も。「個人総合のメンバーが誰かっていうのと、その出来がどうかっていう所に、まだ左右されてしまうので。先ほど、名前が挙がったみんなに可能性が高い」と説明。最後まで混戦になると予想した。

水鳥強化本部長も悩ませる代表選考。はたして、パリへの切符を掴み取るのは誰なのか。19日の決勝で、すべてが決まる。

取材・文●湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)

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