“特捜戦隊デカレンジャー”デカブレイク役を襲った病、そしてデカピンクとの結婚と移住…放送から20年、6人の戦士が新作映画で再び集結

20年前に放送され、今なお人気を誇る“特捜戦隊デカレンジャー”。デカブレイク役の吉田友一さんは役者として花開いた矢先に病に襲われた。不安で眠れなかった日々、そしてデカピンク役との結婚。放送から20年、新作映画への思いを聞いた。

放送終了後も根強いファンを持つ「特捜戦隊 デカレンジャー」

“特捜戦隊デカレンジャー”は2004年から1年間、テレビ朝日系で放送。宇宙警察・地球署配属の選ばれし刑事たち、デカレンジャー6人が地球を守るために、宇宙犯罪者と戦う姿を描いた作品だ。

1話完結、刑事ドラマ仕立てのストーリーが大人の心をもつかみ、2006年にはファン投票で選ばれる日本SF大会の大賞にあたる「星雲賞」を、スーパー戦隊シリーズとしては初めて受賞するなど幅広い層から支持されていた。

放送から20年が過ぎ、新作映画も地球署配属20年という設定だが、現実の世界でも「苦しい闘い」を強いられた“戦士”がいた。

順風満帆の役者人生と思いきや、デカブレイクの体に異変が…

デカブレイク役の吉田友一さん(41)は、17歳のときにスカウトされ芸能界入り。デビュー当時はCMや雑誌のモデルなどの仕事が多かったが、デカレンジャーへのレギュラー出演を機に注目を浴び、一気に映画やドラマ、舞台にと活躍の場を広げていった。

しかし、役者として更なる飛躍が期待されていた矢先の2011年夏、病魔に襲われる。過労とストレスで、急性扁桃炎と咽頭炎を併発し入院。決まっていた舞台も降板せざるをえなかった。さらにその翌年、今度は舞台中に顔に異変が…。

顔の左半分が硬直して動かなくなり、左目を閉じることさえできない状態に。何とか最後まで舞台を務めはしたものの、病院での診断の結果は「末梢性顔面神経麻痺」。

戦隊ヒーロー役で大きなチャンスをつかむなど順風満帆のはずだった友一さんに、役者生命を脅かしかねない病が、暗い影を落とした。

■吉田友一さん 「左半分が麻痺しているので表情を作ることも難しく、声も、特に『ぱぴぷぺぽ』の破裂音が出しづらい。食事をするにも口が半分開かないので時間がかかる。もし、このまま治らなかったら、と思うと、不安で眠れない日もありました」

病を乗り越え「二足の草鞋」に

「末梢性顔面神経麻痺」と診断された友一さん。当時の主治医からは、薬物療法から鍼灸治療へシフトすることが提案された。

藁にもすがる思いで薬物療法から切り替えたところ、施術を始めて3、4か月経って症状がだんだん軽くなり、半年でほぼ完治したという。

このときの経験から、友一さんは俳優業と並行して、医療の道を目指すことを決意。東京の医療大学附属の鍼灸学校で学び、2016年に「はり師・きゅう師」の国家資格を取得した。

病を乗り越え、「二足の草鞋」でまた新たなスタートを切った友一さんが、人生のパートナーとして選んだのが、デカレンジャーで“デカピンク”役を演じた菊地美香さんだった。

デカレンジャー夫婦の誕生

菊地さんとは、京都のドラマロケで再会し意気投合。2018年に結婚し、デカレンジャー夫婦が誕生した。その後、新婚生活を京都で過ごしていた2人だったが、友一さんの大学院時代の師匠が高知市のクリニックの院長をしていた縁で、3年前、高知市に移住。2人にはある共通の思いがあった。

■吉田友一さん 「沖縄の離島で研修していたときに中山間地域での医療の大切さに気づき、地域を“診る”ことでもっと医療の道を究めたいと思うようになりました。師匠からも、それができるのが高知ではないか、とアドバイスを頂いて…」

■菊地美香さん 「いろいろ2人で話をしていくうちに、緑がたくさんあるところに住みたいという気持ちが一緒だったんです。気が付いたら結婚して高知にいましたね」

そんな高知に、デカレンジャーは再び集結する。「映画で地方創生を」という思いから始まった新作映画。高知城の天守でデカレンジャーがポーズを決めるシーンは、何とも圧巻だ。

新作映画でデカレンジャー夫婦初共演 映画への思いは

高知に移住してからの2人は、様々な姿に“変身”。友一さんは、地域おこし協力隊として、高知市役所に勤務しながら鍼灸師としての活動も続けている。

一方、元々料理好きの美香さんは、体にやさしい食を提供しようと、弁当店のオーナーに“変身”。高知にいながら、俳優・声優として活躍している。

そんなデカレンジャー夫婦初共演となる今回の新作映画は、2人が暮らす高知が舞台。友一さんは、地域おこし協力隊として地域の活性化に取り組むなかで「映画で地方創生」を実現させたいと、ロケ地誘致に尽力。制作側にその熱意が伝わり、デカレンジャーが高知に来なければ、事件が解決しないストーリーに仕上がったという。

映画には、高知城や牧野植物園など高知の観光地でのシーンがふんだんに登場する。制作にあたって高知市が行ったクラウドファンディングは最終目標もクリア、全国各地から2000万円を超える支援金が集まった。映画を一過性のもので終わらせず、ロケ地巡りなど持続できる活動資金に充てたいと友一さんは意欲的だ。

■吉田友一さん 「地方都市を舞台に映画が作れたことは本当に嬉しい。地域の人、職場の人たちも映画を楽しみにしてくれている。関わった人みんなが幸せな気持ちになる、それこそが本当の意味での『地域の活性化』なんだなということに気づきました」

■菊地美香さん 「高知は本当に食材のパワーもあって、ずっと住みたい場所。私は県外の方にはいつも、『高知に引っ越しておいで』って言ってます。この高知でまた何かドラマが作れたらいいな、とも思いますね。でもまずはデカレンジャーを劇場でぜひ見て頂きたいです」

今後は、地域を守る「高知家」のヒーローとしても活躍が期待されるデカレンジャー夫婦。「特捜戦隊デカレンジャー20TH ファイヤーボール・ブースター」は、6月7日全国で公開され、5月29日、高知での先行上映の際には、吉田友一さん、菊地美香さんらの舞台挨拶も予定されている。

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