三菱重工、川崎重工、IHI…「防衛特需」膨張に官民が懸念と失望

川崎重工業から自衛隊に引き渡された潜水艦「はくげい」/(C)共同通信社

【政官財スキャニング】#76

官界通(以下=官) 3月期決算の上場企業の2023年度の業績がかなり発表されたが、純利益と呼ぶ最終的な儲けが3年連続で過去最高になるようだな。

財界通(同=財) そうだ。中間集計で売上高の総額が前年より6%くらい増え、純利益は14%強も膨らんだ。

政界通(同=政) えっ、政府がまだデフレ脱却宣言もできないのに、そんなに業績がいいのか?

財 大幅な円安で、製造業などが海外で稼いだ利益が円換算で膨張した面も大きいが、原材料費や物流費などの上昇分が製品やサービスの価格へスムーズに転嫁できたこともある。

官 それで社員の賃金も上がれば、日本経済はいい循環に入ったことになるから、悪い話ではない。

財 でも、気になる点がある。

政 何だい、それは?

財 防衛産業の業績だ。日本でミサイルや艦艇などをつくる大手は三菱重工、川崎重工、IHIの3社で、政府の「防衛費倍増計画」の決定で業容が上向いている。

官 防衛分野の発注は原価に薄い利益を乗せた額が基本で、利益率は低いが安定した収益源だ。それが防衛費の倍増で何年も続くとなれば……。

政 どのくらい見込めるのかね?

財 大手3社の今3月期の受注高は計3兆1800億円で、前年の2.2倍だ。来年の3月期も同水準の見通しで、来3月期の防衛を含む売上高は3社合計で42%も増えるそうだ。

政 「防衛特需」だな。

財 ただ、兵器は国防には大事だが、社会にじかに付加価値をもたらすわけでなく、いわば消耗品。それに業績を依存し過ぎるのはいかがか、という声が経済界にある。

■日本の技術開発がしぼんだ

官 私も、そう思う。通信や気象観測など平和利用の宇宙ロケットに失敗が目立ち、三菱重工はジェット機の開発がうまくできずに撤退した。大型客船「飛鳥」の事業も打ち切った。結果からみると防衛特需に依存する面が大きく、日本の技術開発がしぼんだ印象だ。

政 戦場で燃え尽くす兵器よりも、宇宙や世界一周クルーズのほうに夢がある。再挑戦を期待したいね。

(構成=竜孝裕/ジャーナリスト)

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