ドイツを歩く(上)「ベルリンの壁」崩壊から35年…平和運動の発祥地ライプチヒで中世に迷い込んだかのような錯覚に

美しいルネサンス様式の建物がズラリ(C)日刊ゲンダイ

【話題の現場 突撃ルポ】#7

1989年11月9日──。東西冷戦の象徴である「ベルリンの壁」が崩壊した年だ。あれから35年の節目を迎えたドイツ国内はどんな雰囲気に包まれているのか。本紙記者はドイツ観光局が主催するツアーに同行。現地を歩いた。

◇ ◇ ◇

オーストリアやイタリア、ベルギーなどヨーロッパ各国から集まったメディア関係者に交じって向かったのは、旧東ドイツ第2の都市といわれるライプチヒ。東京から行くと、ミュンヘン経由で国内線を乗り継ぎ約15時間かかる。

冷戦時代はソ連支配下の旧東ドイツに属していたが、古くは音楽・芸術の街、現在では商業都市としても知られる。バッハやワーグナーなど偉大な音楽家ゆかりの地だ。ちなみに、600年以上の歴史があるライプチヒ大学は、ドイツを代表する文学者ゲーテや森鴎外が学んだことでも有名だ。

市内はバスやトラム(路面電車)などの公共交通機関が網の目状に発達しており、大体5~10分置きに運転しているため移動に不自由しない。歩道と車道の間には自転車専用レーンが敷かれ、朝の通勤時間はビュンビュンと自転車が通り過ぎる。うっかりしているとぶつかりそうになる。

「世界で最も美しい駅」のひとつといわれるライプチヒ中央駅の南西側が市の中心部に当たる。現在はライプチヒ市歴史博物館として使用されている旧市庁舎を中心に、「歩けば“歴史を発見できる”建造物が広がっている」(現地ガイド)という。15~16世紀に建てられた美しいルネサンス様式の建物が並び、中世に迷い込んだかのような錯覚に陥る。

「コーヒーハウス・リケー」では日本茶や中国茶の提供も

カフェひとつとっても味わい深い。旧市庁舎から歩いて1分の場所に位置するのが、入り口に象の彫像があしらわれた「コーヒーハウス・リケー」だ。もとはコーヒーや紅茶などを扱う貿易商(1745年創業)の商館だった。コーヒーやケーキだけでなく、日本茶や中国茶も提供しており、建物の側面には「Japan」の文字が見て取れる。

リケーのイチ押しは「エレファント・コーヒー」。象が好む南アフリカ産の木の実「マルーラ」を原料とするリキュールと一緒に、ホイップがのったコーヒーをたしなむスタイルだ。

リキュールはバニラとキャラメルを混ぜたような味わいで香りが高く、コーヒーとの相性は抜群。店員に飲み方を聞くと、「混ぜてもいいし、別々に飲んでもいいし、お好きにどうぞ!」とピカピカの笑顔で答えてくれた。個人的には、リキュールをエイヒレのごとくチビチビなめながら、コーヒーを楽しむのがオススメだ。

■東西統一の原点

ライプチヒは現代史でも重要な役割を果たしている。「ベルリンの壁」の崩壊へとつながる平和運動の発祥地なのだ。

旧市庁舎のすぐそばにある聖ニコライ教会。私的な集会が禁じられていた東ドイツ時代、毎週月曜に開かれていた教会での集まりがやがて社会運動へと発展していき、約7万人が市中心部に集結した非暴力・非武装の「平和革命」(89年10月9日)へとつながったという。「ライプチヒは東西ドイツ統一の流れをつくった原点」(地元ガイド)だ。

毎年10月9日、平和革命を記念して「光の祭典」が行われている。=後編につづく

(高月太樹/日刊ゲンダイ)

© 株式会社日刊現代