近年、アジアのサッカーは急速にレベルを上げている。そうした環境での切磋琢磨で、各国は成長していく。ライバル関係にある日本と韓国も、互いに高め合う仲間だ。蹴球放浪家・後藤健生が、両国をつなぐサッカーと文化についてつづる。
■韓国に「いくらでもある」日本と同じ地名
考えてみると、韓国には漢字にすると日本と同じという地名はいくらでもあります。
韓国中部に、人工150万人の大田(テジョン)広域市と言う大都市がありますが、東京にも大田区という特別区がありますよね(大森区と蒲田区が合併して「大田」となったという安易なネーミング!)。
ソウルのすぐ南には、アメリカ空軍基地があるので有名な烏山(オサン)市がありますが、「烏山(からすやま)」も東京の世田谷区西部にある地名です(京王線には「千歳烏山」という特急も停車する駅があります)。
その他にも、探せば日本と共通の地名はいくらでもあるでしょう。
■侵略軍を撃退した「将軍の名前」が由来の通り
一方で、漢字で書くと韓国の歴史を思い出させてくれる地名もあります。
ソウルの旧市街を東西に走る「鍾路(チョンノ)」という大通りがありますが、これは王朝時代に時刻を告げる鍾を鳴らすための施設「鍾閣(チョンガク)」があったことに由来します。「鍾閣」は今でも復元されたものが残っていて、地下鉄1号線に「鍾閣」という駅があります。
鍾路の南側の大通りは「乙支路(ウルチロ)」と呼ばれていますが、「乙支」というのは7世紀、高麗王朝の時代に中国・隋の侵略軍を撃退した乙支文徳(ウルチムンドク)将軍の名前が由来となっています。
なんとも雅な王朝風の地名もあります。
漢江(ハンガン)の南、江南(カンナム)地区の高級ショッピングエリアとして日本でも有名な「アプクジョン」という街があります。不思議な音の響きを持った名前ですが、漢字で書くと「狎鴎亭」となります。
■「超学歴社会」の韓国らしい地下鉄の駅名
現在のソウルが漢城(ハンソン)と呼ばれ、李氏朝鮮王朝の首都だった頃、漢江のあたりは市外の田園地帯でした。養蚕業が盛んだったので、蚕室(チャムシル)とか蚕院(チャムウォン)といった地名が残っています(蚕室は、オリンピック・スタジアムがある地区)。
そして、朝鮮の貴族たちは静かな漢江の畔に別荘を持っていて、狎鴎亭もそうした別荘の名前でした。
飲み屋が並ぶソウルの盛り場の一つに「ホンデ」という街があります。これは、「弘益大学校(ホンイクデハッキョ)」という私立大学があるので、略して「弘大(ホンデ)」という安易なネーミングです。梨花(イファ)女子大学校のある「梨大(イデ)」をはじめ、ソウル地下鉄には大学の名前が付いた駅がたくさんありますが(「~デ」という駅はほとんどが大学名です)、このあたりは超学歴社会の韓国らしいところでしょう。
カタカナ表記ではなんだかよく分からない韓国の地名も、漢字で書いてみると、いろいろなことが分かって来るというわけです。