膀胱炎のリスク大…女性にも多い「尿漏れ」はトレーニングで改善できる

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咳やくしゃみをした際に、「尿漏れ」してしまう悩みを抱えている人は多い。P&Gジャパンが2019年に行った大規模調査では、20~60代の女性4万人のうち63.7%が「尿漏れの経験あり」と答えている。女性専用の泌尿器外来を設置する亀田総合病院ウロギネ・女性排尿機能センター長の野村昌良氏に対策法を聞いた。

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尿漏れは、咳やくしゃみなどでお腹に力がかかった際に尿が“チョロッ”と漏れる「腹圧性尿失禁」と、突然尿意に襲われトイレに間に合わない「切迫性尿失禁」のほか、両者の症状が合わさった「混合性尿失禁」に分けられる。

「腹圧性尿失禁は、出産や便秘により尿道を支える骨盤底筋がダメージを受けて緩くなり尿漏れが起こるのに対し、切迫性尿失禁の場合、水に触れたり寒い場所を訪れるなど、何らかのきっかけで膀胱が異常に収縮することで起こります。ほかにも、生まれつき膀胱が小さく尿をためられる量が少ないのも尿漏れの原因のひとつです。患者さんは60代に最も多く、30代で受診される方も珍しくありません」

尿漏れを繰り返すうちに早めにトイレに駆け込むようになると頻尿になりやすい。また、尿漏れに備えて吸水パッドを使用している人も少なくないが、濡れたパッドを長時間取り換えずそのままにすると、膀胱炎を引き起こして残尿感の症状も現れやすくなる。野村氏によると、中・高齢者の膀胱炎のほとんどが、尿漏れが原因だという。

「また、膀胱に尿をためる蓄尿は自律神経によって調節されています。精神的なストレスで自律神経が乱れると動悸や息切れのほか頻尿になるので、尿が近い→尿漏れが心配になる→尿が近いといった負のスパイラルに陥りやすい。患者さんの中には、孫に臭いがバレているのではないか、すれ違う人が鼻をすするのは臭うからではないかと思い込み、抑うつ状態になるケースも少なくありません」

尿意を意識してトイレ行くタイミングを調整

尿漏れというと、前立腺肥大など男性に多い疾患というイメージが強く、受診を後回しにしている女性は多い。悩んでいるなら、負のスパイラルに陥る前に対処したい。女性専門の泌尿器科であるウロギネ科では、腹圧性尿失禁に対しては、肛門、腟、尿道をキュッと締め上げ骨盤底筋を鍛える体操や、特殊なテープで下がった尿道を正しい位置で固定するTVT手術が実施されている。切迫性尿失禁では膀胱の収縮を抑える作用をもつ抗コリン薬やβ3作動薬の服薬治療が有効だ。

加えて大切なのが「行動療法」だ。自身の尿意を意識してトイレに行くタイミングをコントロールすると、病状によってはそれだけで尿漏れが改善されるという。

「当院で推奨しているのが『尿意知覚トレーニング』です。尿意は7段階(表)に分けられ、普段は『かなりトイレに行きたい』『すごくトイレに行きたい』のタイミングでトイレに行く人であれば1つ手前の段階で行くようにして、尿漏れを防ぐ方法です。よく考えてみれば当たり前のことですが、実行できている人は少ないので試してみてください」

水分摂取量にも気を付けたい。通常、適切な尿量は1分間に1ミリリットルとされ、1日に換算すると約1500ミリリットルになる。食事に含まれる水分量や汗で蒸発する水分量を換算すると、飲料水から摂取する1日の水分量は、800~1000ミリリットル、多くても2000ミリリットル以内が望ましい。

「高齢者の場合、夏の時季に熱中症にならないよう水分を取りすぎて、1日の尿量が3000ミリリットル前後の人も少なくありません。それでは頻尿や尿漏れは避けられず夜間頻尿につながり、夜間の転倒リスクが高まります。まずはセルフケアから始め、自分の尿意について把握するといいでしょう」

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