ことばの日

 〈カッコいい俺の兄貴の車〉…あれっ、と思われた皆さん、鋭いです。そう、こう書いてしまったら〈カッコいい〉のは「俺」なのか「兄貴」なのか「車」なのか、がまるではっきりしない▲長崎北陽台高の卒業生で言語学者の川添愛さんが著書「ふだん使いの言語学」で悪文の“お手本”として紹介していた。きょう5月18日は「5.10.8」の語呂合わせで「ことばの日」▲記事を書くときに心掛けていることの一つは「ひと通りにしか読めないように書く」ことだ。ちなみに、冒頭の一節は「修飾関係があいまいです」と記者端末の校正機能も警告を▲さて、言葉-意思や感情を音声で伝達するのはヒトだけが持つ能力ではないらしい。シジュウカラは鳴き声で「集まれ」「ヘビだ」などと会話するそうだ。鳴き方には地域性もあるという。方言だ▲〈言葉はまるで雪の結晶〉-人気バンド「Official髭男dism」のヒット曲にこんな一節がある。綺麗(きれい)で揺るぎないもの/胸の奥の奥を温めるもの。探しても見つからないんだ、と頭を抱える主人公の青年▲当方も一度ぐらいそんな言葉を、と願いつつ、内政記事の〈楽観視できない〉の「観」と「視」の重複が気になったり、言葉巧みな詐欺話の記事にげんなりしたり。それでも、気を取り直して。(智)

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