離婚後の「共同親権」導入 子どもの権利、家裁の態勢充実…専門家の見解は? 長崎

 共同親権を導入する改正民法が17日、参院本会議で可決、成立し、長崎県内の専門家からは子どもの権利尊重や、親権を判断する家庭裁判所の態勢充実を求める声が上がった。
 県弁護士会子どもの権利委員会の鮎川愛委員長は、共同親権への危惧に対して一定の対応が示された点を評価。一方で「急迫の事情」「日常の行為」といった単独で親権を行使できる場合について「具体的な適用場面を想定しにくく、現場が混乱する可能性もある」とし、「施行までに慎重かつ十分な検討が必要」と指摘した。
 親権に関して子どもの意見を適切に反映するには、弁護士による子どもの手続き代理人制度の積極活用など環境整備は必須。「原則償還せずに、国費により費用負担すべき」とした上で、子どもの意見表明権の保障なども求める。
 改正法ではドメスティックバイオレンス(DV)の恐れがある場合は単独親権と明記されたが、NPO法人DV防止ながさきの中田慶子理事長は「DVの証拠がなければ被害者を守ることができないのでは」と疑問視。「立証が難しい精神的暴力や性的暴力の場合、家裁はどのようにDVを判断するのか。今後トラブルが増えるだろう」と危機感を口にする。
 司法統計によると、全国の家裁が受理した家事事件は増加傾向にあり、中田理事長は「家裁の人的基盤の拡充が施行までにどれだけ進むかが課題」とした。

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