【鉄路と生きる】只見線沿線観光客2割増 全線再開通後1年間 効果波及に課題 福島県が初推計

 福島県のJR只見線が全線再開通した2022(令和4)年10月1日から1年間の沿線の観光客数は約27万3千人で再開通前より2割以上増加した。このうち鉄道を利用した観光客数は約4万7千人で、再開前の9倍に。県内の観光や商工業などへの経済波及効果は約6億1千万円となった。県が17日、会津若松市で開いた只見線利活用推進協議会で初の推計結果を公表した。県は沿線の7市町と観光・商工団体と連携し、推計結果を基にさらなる利活用促進を図る。

 再開通後の鉄道利用の観光客は4万7080人で再開通前より4万1620人増えた。車を利用した観光客は22万6818人で1万2427人増加し、鉄道利用と合わせると5万4047人増えた。鉄道利用の観光客数は県管理の会津川口駅(金山町)―只見駅(只見町)間の1日平均通過人員の79人を基に、通学や通院などの利用を除いて算出した。車利用の観光客数は三島町の「道の駅尾瀬街道みしま宿」を訪れた観光客数などを基に推計した。新型コロナウイルスの感染拡大が始まる前の2019年度下期と比較した。

 経済波及効果の概要は【図】の通り。観光客が県内で飲食や宿泊した直接効果は約4億1千万円。土産が売れることで工場の生産量が増加したり、従業員の所得向上で消費が増えたりした効果を合わせると約6億1千万円となった。県と会津地方の市町村が負担している年間維持管理費は約5億5千万円。関連産業で創出された雇用は52人。

 ただ、県が目標としている平均通過人員100人には達しておらず、波及効果は沿線が中心になっているとみられる。沿線自治体からは本数増を求める声も上がる。協議会に出席した只見川電源流域振興協議会長の押部源二郎金山町長は「再開通の効果は肌で感じているが、まだまだ沿線で降りる観光客は少ない」と指摘する。「宿泊など観光客の受け入れ環境の充実も進めたい」と語った。県の担当者は「訪日客は増えているが、経済波及効果につながっていない面がある。消費を促す取り組みを検討したい」と話した。

■福島県、観光列車導入へ

 県はさらなる観光誘客を進めるため、只見線へのオリジナル観光列車の導入を目指す。会津の自然や文化を表現した外観や内装で、訪日客も楽しめるような列車を想定。今月中に検討部会を設置し、導入に向けた議論を本格化させる。

 会津地方全体の活性化を図るため会津鉄道(本社・会津若松市)の会津線と共通運用できる列車を想定する。只見線での乗り入れ実績がある会津鉄道のトロッコ列車「お座トロ展望列車」の耐用年数が残り数年となっており、後継車両として会津鉄道が所有・管理する方向で調整する。早ければ2028年度からの運行を目標とする。

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