新酒日本一返りザケ 22日鑑評会結果発表 吉報待ち準備着々 福島県観光物産館 一足早く販売会

新酒鑑評会の出品酒を紹介する桜田さん=県観光物産館

 日本酒の出来栄えを競う全国新酒鑑評会の審査結果発表が22日に迫り、製造や流通に携わる福島県内関係者は都道府県別の金賞受賞数日本一返り咲きに期待を寄せている。福島市の県観光物産館は消費者の関心を高めようと17日、一足早く出品酒販売会を始めた。酒販店や卸業者は受賞による需要増に備えて入荷に余念がない。酒造関係者は「昨年より質の高い酒を造ることができた」と吉報を待つ。

 鑑評会は酒類総合研究所(広島県東広島市)の主催で、2023酒造年度(2023年7月~2024年6月)に醸造された酒が対象。県観光物産交流協会によると、県内からは46蔵元が出品した。コラッセふくしま(福島市)1階の県観光物産館はこのうち、35銘柄を順次入荷・販売している。審査結果が出る22日は午後4時30分から金賞酒の飲み比べイベントを催す。

 福島県は新型コロナ禍の影響で金賞を選ばなかった2019酒造年度を挟み、都道府県別の金賞数で2012酒造年度から9連覇していた。前回の5位で連続記録は途絶えたが、物産館で扱う金賞酒は高い人気を保ってきた。館長の桜田武さん(54)は「酒蔵の努力や苦労が報われてほしい。県民みんなでお祝いしたい」と好結果を待ちわびる。

 郡山市の酒販店「つたや」は金賞酒を毎年多めに仕入れる。専務の斎藤淳宏さん(66)は「土産に地酒を選ぶ人も多い。年間を通して引き合いに応えたい」と受賞による県産酒のニーズの高まりを語る。全県の酒販店や道の駅など約千カ所に日本酒を卸している同市の福島県南酒販の担当者は「金賞は業界の発展につながる」と盛り上がりを願う。

 いわき市小名浜地区などの飲食店でつくる磐城料飲業会長の新田秀二さん(54)は経営する居酒屋「遊食亭柘榴(ざくろ)」で県産銘酒を出している。「日本酒は『常磐もの』の魚介類とも合う。積極的にPRしたい」と声を弾ませる。

 多くの酒蔵がある会津若松市は毎年、「会津清酒で乾杯」など地酒を楽しむ催事を展開。今年は日本酒で飲み始める「乾杯条例」制定から10年を迎える。市商工課の担当者は「金賞日本一が奪還できれば、イベントの意義が増す。会津や県内の酒をPRする機会になる」と期待している。

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 審査結果は22日午前10時に酒類総合研究所のホームページで発表される。県は同日午後5時15分から、福島市のまちなか広場で記念セレモニーを行う。

■「出来栄え良い」福島県酒造組合の鈴木特別顧問

 県日本酒アドバイザーで県酒造組合特別顧問の鈴木賢二さん(62)は「今年の酒は昨年に比べて出来栄えが良い。好結果が期待できる」との見方を示す。

 昨年の出品酒に主に使われた酒米は出穂期の気温が平年より高かった影響で想定以上にコメが硬く、水に溶けにくかった。今年も同じ傾向があったが、仕込みの水を減らすなど前年の経験を基に工程を改善した。

 鈴木さんによると、品質向上を志し、酒米を山田錦から県オリジナル高品質酒造好適米「福乃香(ふくのか)」に変えるなど、製造法を大きく見直した蔵元もあるという。「連覇の重圧が消え、個性を打ち出す酒に挑む蔵元が増えた。全体的にレベルアップした」と業界の進化を感じている。

 県酒造組合会長の渡部謙一さん(58)=南会津町、開当男山酒造蔵元=は「鑑評会の結果を追い風に、県産酒の一層のPRにつなげたい」と消費拡大を期している。

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