婚姻届に無意識の偏見が影響か 記入例に「夫の氏」を選択は県内23市町 見直しに向けた動きも

宇都宮市の婚姻届の記入例。「夫の氏」「妻の氏」にチェックが入った2種類ある

 自治体窓口で配布している婚姻届の記入例について、県内25市町のうち23市町が「婚姻後の夫妻の氏」の欄で夫の氏を選択していることが17日までに、下野新聞社のまとめで分かった。全国の自治体でも同様の傾向があり、「女性の改姓が当たり前」などとの無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)が影響していると指摘する声がある。一方でジェンダー(社会的な性差)平等の機運の高まりを背景に、見直しに向けた動きも出ている。

 婚姻届には、婚姻後に夫婦のどちらの姓を選択するかチェックを入れる欄がある。記入例は自治体それぞれの判断で用意している。

 県内各市町へ5月上旬~中旬に確認したところ、記入例で夫の氏にチェックしていたのは、宇都宮市と栃木市を除く23市町に上っていた。国の統計では、2022年に婚姻届を出した夫婦のうち、約95%が夫の氏を選択。このような実情を記入例に反映している自治体が多い。

 一方、宇都宮市は「夫の氏」「妻の氏」それぞれにチェックを入れた2種類を配布している。同市市民課は「アンコンシャス・バイアスへの他自治体の動きなどを踏まえた。どちらかをオーソドックスとする意図はない」という。

 栃木市は県内で唯一「妻の氏」を選択している。ジェンダー関連の報道を契機に議論し23年12月、「夫の氏」から見直した。同市の担当者は「(夫妻の)双方の意思が反映されているかを確認するきっかけにしてほしい」と話した。

 全国的には無意識の誘導を避けるため、欄を空白のままにし「どちらかにチェックしてください」などと促す形式の自治体もある。

 「ジェンダーへの意識はなかった。今後の作成時に議論していく」。真岡市は見直しの必要性を感じている。同市は記載漏れを防ごうと、「夫の氏」にチェックを入れた。その際に特段の議論はなかったという。

 同市同様に見直しを視野に入れる市町は少なくない。壬生町は「他自治体の動向も見ながら検討してみたい」とした。

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