「“おもしろ雑学”として使える要素がめちゃめちゃ多い」中瀬ゆかりが太鼓判を押す、新書「世界はラテン語でできている」

TOKYO MX(地上波9ch)の情報バラエティ生番組「5時に夢中!」(毎週月~金曜 17:00~)。4月25日(木)放送の「中瀬親方のエンタメ番付」のコーナーでは、新潮社出版部部長の中瀬ゆかりさんがおすすめのエンタメ作品を番付形式で紹介しました。

【"中瀬親方”による2024年4月のおすすめ作品】

◆関脇
小説「雀荘迎賓館最後の夜」
著 大慈多聞(新潮社)

新人の覆面作家・大慈多聞が書き下ろした現代版『麻雀放浪記』とも言える長編ギャンブル麻雀小説。

物語の舞台は田町にある小さな雀荘「迎賓館」。飲食チェーンの取締役や広告代理店の重役、記憶力が異様に優れている高校教師など、玄人の打ち手が集まる不思議な空間に、若くして麻雀に狂う国立大生・結城が足を踏み入れるところからストーリーが展開していく。結城は凄腕の打ち手たちとどう立ち向かい、彼らから何を学んでいくのか。

<注目ポイント>
人生背景が鮮明に表れる麻雀! 麻雀打ちたちが抱える人間の業

中瀬親方のコメント「構成がすごく面白くて、序盤は麻雀卓での会話や打ち方を通した人物同士の関係性が、中盤から各人物の雀荘の外での姿も描かれていて、それぞれが抱える苦悩とか仕事ぶりを書くことで、終盤にかけての彼らの闘牌シーンがより入り込みやすく、小説全体にも深みをもたらしています。

作中に出てくるネタもいろいろで、つボイノリオさんの『金太の大冒険』ネタとか、ちょっとクスッとしちゃう表現があって、博打にハマる勝気な大学生も、普通の若者と同じ悩みを抱えていたり、彼がいわゆる『麻雀放浪記』の坊や哲的な人物なんですけど、主人公を設定しない描き方をしているので、どの世代の人が読んでも楽しい一冊です。

まさに麻雀好きが待ち望んでいた新しい『麻雀放浪記』が爆誕しました! これは、そういう若者に年配者が何を継承していくのかということもテーマになっているんですけれども、とにかく人間の業もぎっしり詰め込んだ大型新人の大慈多聞さんの渾身のデビュー作なので、『M.LEAGUE(Mリーグ)』とかゲームで麻雀にハマっている若い人たちにも、ぜひ読んでもらえたらなと思っています。麻雀を打てない人が読んでも分かるように、人間ドラマがすごくしっかりしていて、面白いです」

◆大関
映画「関心領域」
5月24日(金)より全国ロードショー

マーティン・エイミスの同名小説を、英国の鬼才ジョナサン・グレイザー監督が映画化。第二次世界大戦中、ユダヤ人を中心に多くの人々を苦しめた悪名高きアウシュビッツ強制収容所と壁ひとつ隔てた隣の場所で平和に暮らす強制収容所所長一家の日々の営みを描く。

第96回アカデミー賞で国際長編映画賞と音響賞の2部門を受賞したほか、第76回カンヌ国際映画祭でグランプリに輝くなど世界の映画祭を席巻している、A24が放つ話題作。

<注目ポイント>
人間の奥底に潜む残虐性を音だけで表現しきる演出力

中瀬親方のコメント「この映画がすごいのは、強制収容所内での凄惨な出来事を映像では全く見せないところ。その代わりに、強制収容所の隣で何不自由なく暮らす一家の穏やかな生活を定点で映しながら、壁の向こう側で起きている惨状を音だけで表現しているのが全く新しい点です。

冒頭から"これって放送事故なの?”って思うような何も映してない画面が続いて、強制収容所の音に鳥の声がかぶさってきて、どこにでもある一般家庭の日常に悲劇の音を仕込むことで、観ている側は想像力をすごく掻き立てられるんです。

映し出されている人間たちは、みんな自分たちの関心事しか見てないわけです。ズバッと言うと、分かっているけど目を向けてないという、人間は見たいものしか見ないとか、聞きたいものしか聞かないという心理を見事に表現しきった作品です。

人間の醜さを対比的に描く手法っていうのは、『パラサイト 半地下の家族』を含め、ほかの映画でも見かけますけど、人間の奥底にある残虐さ音を中心に表現する作品は本当に珍しいと思うんですね。

映画が進むにつれ、いつの間にかあんなに気になっていた壁の向こうの音に自分も慣れてきたような感覚に恐怖を感じますし、川のシーンとかでもずっと緊張感で金縛りにあったような状態で、ある意味、どんなホラー映画よりも怖いものを観たかもしれません。(作品を)観終わった後に誰しもの奥底に潜んでる『関心領域』という名の残酷さについて深く考えさせられる一作ですので、ぜひ劇場で観てください。そして、観終わった後、大いに深く語り合ってほしいです」

◆横綱
新書「世界はラテン語でできている」
著 ラテン語さん(SB新書)

X(旧Twitter)フォロワー8万人超の人気ラティニスト「ラテン語さん」による初の著書。著者とヤマザキマリとの巻末特別対談も収録。みんな無意識にラテン語を使っている? ラテン語の知識が皆無でも楽しく読めるラテン語雑学本。

<注目ポイント>
明日から街でラテン語を探したくなる、おもしろ雑学が詰まった一冊

中瀬親方のコメント「ラテン語って、もちろんみんな知っていると思うんですけど、『何?』って言われると、『古代ローマ人が使っていた』とか『英語の起源ですか?』とか、ふわっと分かっているけど、今の日本で生きている私たちにはあまり馴染みがないと感じがちですよね。

でも、本当はそんなことないんですよ。例えば、午前、午後を表すAMとかPMを普通に使っていますけど、これラテン語の略ですし、刑事ドラマなどで出てくる『アリバイ』という言葉もラテン語からきているんです。

実はラテン語は、すごく身近な存在であることが分かりやすく描かれていて、いわゆる"へぇ~”の連発で、言葉好き、語源好きの私としては大好物の話だらけで、本当に勉強になりました。

内容も小難しくなくて、政治とか科学とか宗教とか、いろいろな視点からラテン語が我々にとって身近な存在であることを面白く教えてくれるので、友達に話すと『それ、知らなかった!』ってなるような"おもしろ雑学”として使える要素がめちゃめちゃ多いです。

例えば、大井町駅(近く)にある『きゅりあんホール』のきゅりあんは、ラテン語で会堂を示すキュリアからきているとか、ほかにもたくさんの日本の街中の名前やはたまたディズニーランドにまで、ラテン語があふれていることがよく分かるんですね。

例えば、ボツリヌス菌とかレジオネラ菌など菌の名前もラテン語が由来だったりするんです。だから皆さんがこれを読んだら、ラテン語に興味を持つこと請合で、楽しみながら賢くなった気分になれて、明日から本当に街を歩きながらラテン語を探したくなるような一冊なので、ぜひご覧ください。私はこれを読んで、老後はラテン語を覚えようと思いました(笑)」

中瀬さんが推す3作品、ぜひチェックしてみてください! 毎月最終木曜日に発表するこのコーナー、次回5月のエンタメ番付は、5月30日(木)にお届けする予定です。お楽しみに。

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<番組概要>
番組名:5時に夢中!
放送日時:毎週月~金 17:00~18:00 <TOKYO MX1>
「エムキャス」でも同時配信(地上波放送エリアを除く)
メインMC:垣花正(月~金)
アシスタントMC:大橋未歩(月~木)、ミッツ・マングローブ(金)
番組Webサイト: https://s.mxtv.jp/goji/
番組X(旧Twitter): @gojimu
番組Facebook:https://www.facebook.com/5jinimuchuu

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