ペロシ元米下院議長宅を襲撃の男に禁錮30年判決 重傷の夫は今も後遺症

米連邦下院の議長だったナンシー・ペロシ氏(民主党)と夫ポール氏(82)の自宅に押し入り、ポール氏に重傷を負わせた罪で有罪評決を受けた男に対し、カリフォルニア州サンフランシスコの連邦地裁は17日、禁錮30年の判決を言い渡した。襲撃で襲われたポール氏は、今も後遺症に苦しんでいることを公判中に証言していた。

カナダ出身で20年以上前からアメリカ在住のデイヴィッド・デパピ被告(44)は2022年10月28日未明、サンフランシスコでペロシ夫妻の自宅に侵入し、ポール氏をハンマーで襲い、重傷を負わせたとして、殺人未遂や連邦政府職員の家族への暴行など、複数の罪状で起訴されていた。

検察は連邦政府職員の家族への暴行について、禁錮40年を求刑していた。デパピ被告はほかに、殺人未遂や強盗などの州法違反でも起訴されており、終身刑になる可能性がある。

事件を審理するサンフランシスコ連邦地裁が、地区検事に証拠公表を指示。それによって公開された警察のボディカメラ映像では、ペロシ邸の扉を警察が開くと、ポール氏とデパピ被告が立っている様子が見える。1本のハンマーの柄を被告が握り、先端をペロシ氏がつかみ、そのペロシ氏の腕を被告が抑えている。

警官たちが「いったい何事だ?」と問いかけると、被告は「何でもないよ、大丈夫だ」などと答えるが、警官たちが「ハンマーを放せ」と言うと、被告は「ノー」と答えながら、ハンマーの先端をつかむポール氏の手を外させて、ハンマーを振りかざして殴りかかる、その様子が撮影されていた。

現在84歳のポール氏は当時、頭蓋骨骨折などの重傷を負い、6日間にわたり入院した。

捜査当局が裁判所に提出した捜査資料によると、デパピ被告は事件当時ワシントンにいたペロシ下院議員を人質にとり、自分に「うそ」をついたら「膝頭」を折るつもりだったと供述している。逮捕時には警察に、「ワシントンから出てくるうそ」を嫌悪しているのだとも話したという。

ペロシ議員はサンフランシスコの連邦地裁で行われた昨年11月の公判で、被告人に対して「とても長い」刑期を求めていた。

禁錮30年の量刑発表を受けてペロシ議員の報道担当は、家族は襲撃当時とその後の公判で証言した際の「パパの素晴らしい勇気を、これ以上はないほど誇りに思っている」と述べた。

「ペロシ元議長と家族は、ペロシ氏が回復を続けてきたこれまでの18カ月間、愛と祈りを送ってくれたすべての人に、大いに感謝している」と

で述べた。

公判中にポール・ペロシ氏は、デパピ被告がペロシ議員を「一味のリーダー」と呼び、議員を「消す」つもりだと話していたと証言した。

「非常にショックだった。彼を見て、ハンマーを見て、結束バンドを見て、これは大変危険な状況だと認識した。できるだけ落ち着いていようと思った」と、ポール氏は述べ、襲撃後は「血だまり」の中で意識が戻り、病院に急ぎ搬送されたのを覚えていると証言していた。

量刑言い渡しの前に裁判所にあてた手紙でポール氏は、自分は今も攻撃の影響に苦しめられていると明らかにした。

「歩き方はゆっくりとしたもので、バランスをとるのに苦労している。ほぼ毎日のように頭痛があり、素早く対処しなければ片頭痛になる」、「日中に寝る必要があり、長時間続くまぶしい光や大きい騒音には耐えられない」のだという。

デパピ被告を担当した公選弁護人のジョディ・リンカー氏は後半で、被告の動機は右翼の陰謀論で、被告は「自分の全存在をかけて」その内容を信じていたと主張した。

これに対して検察側は、被告人は「暴力の計画」をたて、結束バンドやガムテープなどを持参していたと指摘。被告人自身が捜査員に、自分には「標的のリスト」があるのだと語っていたことも強調していた。

(英語記事 Paul Pelosi attacker sentenced to 30 years in prison

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