理化学研究所など、ラットの繁殖効率を大幅に向上させる過排卵法を確立

理化学研究所、京都大学、東海大学などの共同研究グループは、ラットの産子数を1.4倍以上に増加させる過排卵妊娠に成功した。

本研究で用いた過排卵試薬は、発達した卵胞から放出されるホルモンであるインヒビンのモノクローナル抗体(AIMA)である。AIMAによりインヒビンの働きを抑え、卵胞形成ホルモン(FSH)を過剰に放出させることで、排卵数を増加させることができる。50年にわたり研究されてきた、ウマ由来のホルモンを投与する従来の過排卵法では、過排卵処理をしても多くの産子は得られず、成功しなかった。一方AIMAは、種が異なるウマではなく、動物自身のFSHで卵子を発育させるため、順調な胎仔発育が実現できるのが強みだ。

これまでにマウスへのAIMA投与で産子数が1.4倍に増加することを報告したが、マウスだけでなくラットでも同様な効果が得られるかを検証した。まず、ラットの代表的なWistar系統では、1.4倍の産子が得られ、AIMA投与で生まれた子が健康的に発育し、次の世代まで順調に繁殖することも確認した。同様にBN系統で産子数1.2倍、F344系統で1.5倍、東海大学で確立されたTHA系統でも1.5倍となった。最終的に、AIMAを投与した4系統のラット全てで繁殖効率(妊娠率×産子数)が1.4~2.7倍に増加することを確認した。

AIMA投与は、排卵数を適度に増やしながら、妊娠率を向上させる相乗効果により、効率よく健康的な多くの産子が得られる手法といえる。繁殖成績が不良なラット系統や高齢のラットの繁殖効率も大幅に改善できることが期待され、バイオリソースとして貴重なヒト疾患モデルラットの作出や繁殖維持に大きく貢献するとみられる。さらに、インヒビンにはほぼ遺伝子配列の種差がないため、AIMAはマウスやラットだけではない哺乳類、鳥類、霊長類、絶滅が危惧される希少動物などの繁殖効率改善にも寄与できる可能性があるとしている。

論文情報:

【Scientific Reports】Superovulation with an anti-inhibin monoclonal antibody improves the reproductive performance of rat strains by increasing the pregnancy rate and the litter size

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