「これぞ日本だ!」海外勢から『怪獣8号』に歓喜の嵐。珍しい“32歳の主人公”にも「一線を画す」と高評価

いま、世界中で空前の「怪獣ブーム」が巻き起こっています。先日、第96回アカデミー賞において、視覚効果賞を受賞するという快挙を成し遂げた『ゴジラ-1.0』、大人気ハリウッド版「ゴジラ」シリーズ最新作『ゴジラ×コング 新たなる帝国』。

この2作品の世界的な大ヒットによるところが大きいと思いますが、このほど、“第3の巨頭”とでも言うべき作品が、世界で一大旋風を巻き起こそうとしていることが明らかになりました。その作品こそが、2024年の春アニメとして放送を開始した『怪獣8号』です。

アニメ『怪獣8号』メインビジュアル

日本ではアニメ化以前から話題となっていた作品ですが、海外のアニメファンたちは今回のアニメ版で初めて本作に触れるというファンが大多数。何の因果か、空前の怪獣ブームが起こっているこのタイミングでのアニメ化ということもあり、まさにドンピシャのタイミング!

アニメファンだけでなく、怪獣オタクをも取り込んだ、大きな盛り上がりを見せているのです。今回は、そんな『怪獣8号』に対する海外の反応をご紹介しましょう。

一風変わった“怪獣もの”に海外ファンの反応は?

『怪獣8号』は、松本直也原作による同名マンガを原作としています。舞台となるのは、怪獣災害が頻発する“怪獣大国”の日本。

防衛隊によって怪獣が倒された後、現場の処理を請け負うモンスター・スイーパーに所属する主人公の日比野カフカは、幼馴染の亜白ミナが防衛隊の一員として大活躍している姿に羨望の眼差しを向けていました。

防衛隊の選抜試験に挑戦するも不合格を繰り返し、うだつの上がらない毎日を送っていましたカフカ。再びチャレンジすることを決意したカフカでしたが、怪獣に変貌できる能力を手にしてしまい……。

原作コミックスは、連載開始当初から各方面で絶賛され、2023年時点で累計発行部数1200万部を誇る、まさにモンスター漫画です。ファンにとっては、待望のアニメ化となる本作に対して、海外ファンは一体どのような反応を示しているのでしょうか?

まずはYouTubeにリアクション動画を投稿するリアクターたちの反応から見てみましょう。

怪獣のモザイクシーンに「これぞ日本だ!」

日本では“ニコラス兄貴”の愛称で親しまれる人気リアクターのNicholasLightTVは、本作を視聴する前に「俺は世界に2つ好きなものがある。それは怪獣と数字の8だ」と宣言。「とにかく怪獣が観たいんだ!」と、本作へ並々ならぬ期待感を寄せていることをうかがわせます。

本作では、第1話冒頭から巨大怪獣が街を強襲する場面が描かれますが、その時点で「キタキタキターーー!! イエーイ!!」とテンションMAX。

防衛隊がミサイルで怪獣を倒そうとする描写には「ゴジラって観たことある? そんなの効くわけないじゃん」と一言。筋金入りの怪獣オタクであることを伺わせる皮肉めいたコメントを炸裂させます。

しかしながら、いざ怪獣討伐のために第3部隊が現場に到着し、一瞬にして怪獣を倒す場面では「『炎炎ノ消防隊』みたいな音響だ。血の降ってくる感じは初期の『進撃の巨人』を思い出させる」と、過去の大ヒットアニメに例えて評価。

グロテスク大好きマンのニコラス兄貴は、同場面で内臓が飛び出してくる描写を見て、大喜びしていました。

怪獣による被害現場を一週間でキレイにしなければいけないというセリフが聞こえてくると「これが日本なんだよ。こんなの一週間ぐらいでキレイになって新しいビルが建ってる。ニューヨークなら10年はかかる」と、日本人の仕事の速さを称賛してか、日本アニメへの皮肉なのか、どちらとも取れる意見を口にします。

同様に、怪獣の腸内の排泄物にモザイクがかかっている部分にも「これぞ日本だ」とコメント。ニコラス兄貴は、本作に“日本らしさ”を大変感じているようでした。

後半パートでは、市川レノに対する評価が急上昇! レノの初登場時には「見ろよ、ヘッドホンを首にかけて…」と、まるで『NARUTO』に登場するサスケのようなクールで、いけ好かない奴だと言いたげな雰囲気でしたが、話が進むにつれて、どんどん先輩思いのイイ奴だということが浮き彫りになっていくと…

「ごめんな…お前イイ奴だわ…俺は好きだ」と掌返し。すっかり“レノ推し”になってしまうのが面白い限りでした。

そんなことを話していると、突如、怪獣が出現! ニコラス兄貴は茫然とし「OK、こういう感じなのね」と一言。突然のことで驚いたようです。

最後は、カフカが怪獣8号へと変貌を遂げた際にも視聴者を笑わせるギャグ線があることから「こういうところでも笑わせてくるのか! もっとシリアスな作品かと思ってた」と、コメディやユーモアがあるところを高く評価していました。

四ノ宮キコルに「お手上げだよ」と降参。一番人気は市川レノ?

また、同じくYouTubeにリアクション動画を投稿するマイケル・アンジェロさんは、とりわけ怪獣の作画に驚かされたようで「作画がスゴイ!モンスターってCGだけで描かれることが多いと思うんだけど、本作はCGだけじゃないのが良い」と評価。

カフカが怪獣8号になってしまう場面では、突然の出来事に頭が追いつかない様子が見て取れ「What the hell!?(なんてこった!?)」を連発。「カフカが怪獣に? この展開は予想外だった。良い出だしだ。思わず見入っちゃったよ」とコメントしていました。

そんなアンジェロさんの興奮が最高潮に到達したのは、第4話「フォルティチュード9.8」。

四ノ宮キコルのあまりの強さに「お手上げだよ」と半ば降参状態のアンジェロさんの前に、突如、驚異的な強さを誇る新手の怪獣が出現。驚きを隠せないアンジェロさんでしたが「きっとカフカが来てくれるはず…カフカ、早く来てくれ!頼む!」と、まるでヒーローショーを見守る子供のような反応を示します。

いざ、瀕死のキコルの前にカフカが現れると「いいぞカフカ!来ると思ってたよ!」と歓喜。怪獣8号の強烈なパンチには、『僕のヒーローアカデミア』を引用し、「ワン・フォー・オールを見に纏ってるぞ…こりゃあスゲー!!!」と大興奮。「パンチの衝撃で肉が吹っ飛んだ!作画がスゴイ!」と、終始大興奮のまま拍手を送っていました。

全体的な海外ファンの反応を見てみると、やはり市川レノのキャラクター性に心をガッチリ掴まれてしまっている印象。初登場時の冷たい態度とは裏腹に、先輩思いの良き後輩となる第1話後半以降の落差が、ファンを引き付ける要因になっているようです。

そして、随所に織り交ぜられるコメディ要素もまた、海外ファンにはツボだったようです(笑)。

32歳の夢を諦めた男。らしくない主人公に高評価。

一方、海外のレビュワーはどのような反応を示しているのでしょうか? 英語版IGNには、『怪獣8号』の独特な魅力に触れたレビューが掲載されています。

それによると「『怪獣8号』は怪獣バトルを率先して見せるわけではなく、ほとんどのアニメがわざわざ尋ねようとしない“この後始末をしなければならない不運な奴は誰なのか?”という問いに答えている」と冒頭で語られます。

日比野カフカというキャラクターが、このお話の主人公であることは明らかですが、それを示唆するものが何もない点が他作品と一線を画す要因だと言います。

「ほとんどの主人公が天才的な才能を持った高校生であるのに対し、カフカは32歳で、ずっと昔に夢を諦めた男だ」と続けられており、近年のアニメ作品とは異なる視点で物語が語られていると評価。

さらに「カフカは脚光を浴びる代わりに、怪獣廃棄物処理作業員という報われない仕事をせっせとこなしている。本作は近年人気の“異世界”ジャンルのルートを進むのではなく、不屈の決意によって畏敬の念を抱かせる主人公を描いている」と綴られます。

カフカが自分の過酷な人生を乗り越えようと必死に生きている様が、実に感情移入を誘うと言うのです。

「戦いはスコールのように突然勃発し、絶望的な戦いを目の当たりにする。だが、危険を伴うストーリーを深刻に捉え過ぎず、ユーモアをもって緊張を和らげる素晴らしい仕事もしている」とリアクターと同様に、シリアスになり過ぎず、コメディ要素でしっかりと箸休めができる点も高く評価しています。

「見逃せないアニメとなる準備は整った」

最後に同レビューは、「Production I.G.の見事な仕事ぶりはカフカを愛すべきキャラクターへと昇華させている。スタジオ カラーによる恐ろしい怪獣デザインと相まって、『怪獣8号』が絶対に見逃せないアニメとなる準備は整った」と締めくくられています。

10点満点中8点の高得点を叩き出しており、序盤の滑り出しとしては上々のようです。

アニメ界に颯爽と現れた巨頭『怪獣8号』。

オープニング、エンディング共に洋楽アーティストを起用している辺りに、海外を視野に入れた作品であることが伺えますが、その戦略は功を奏し、日本よりも海外の方が大きな盛り上がりを見せている印象さえ受けます。

今後『怪獣8号』が、世界でどのような足跡を残していくことになるのでしょうか。

(執筆:zash)

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