改正された相続時精算課税制度を活用しよう <その3> 土地や株式を新相続時精算課税制度の対象にするメリット

土地・株式などを新相続時精算課税制度の対象にした場合

「相続時精算課税制度」は現金だけでなく、株式、土地・建物等の不動産など、全ての財産が対象となります。土地や株式など時間の経過によって価値が変動するものを、相続時精算課税制度の対象とした場合は、贈与時の時価が相続財産に加算されることになります。

すなわち、土地や株式などが相続開始時までに値上がりしても値下がりしても、贈与時の時価に応じて相続税が計算されることになるのです。

もちろん、土地にしても株式にしても、値下がりする可能性もあるので、値下がりした場合は、相続税を払いすぎてしまう可能性もあります。しかしながら、今後値上がりする可能性が十分見込めるものを相続時精算課税制度の対象に選べば、節税できる可能性が高くなることになります。

また事業承継を考えている方であれば、自社株の評価額を引き下げる対策をとり、それが十分有効である場合には、その時点で相続時精算課税制度を使って後継者に 贈与することもできます。そうすれば、贈与後に株価が上昇しても、相続税は贈与時の低い株価をベースにした額を支払えばよいので、節税になります。

これらは、改正前の相続時精算課税制度から引き継がれたもので、新制度になっても変更されていません。

贈与財産が災害を受けた場合の特例がある

従来の制度では、贈与した財産が相続開始時までに災害等により滅失したとしても、贈与時の時価が相続財産に加算されることになっていました。

ところが、改正された相続時精算課税制度では、贈与をした日から相続税の申告期限までに、土地や建物などの贈与資産が令和6年1月1日以後の災害などによって一定の被害を受けたときは、贈与時における価額から災害によって被害を受けた金額を控除することができるようになりました。

ただし、経年劣化等により資産価値が下がった分は減額されないので、その点については注意が必要です。

賃貸マンションなどの収益物件を贈与すると、家賃等の収益は受贈者のものになる

賃貸マンションを相続時精算課税制度で子や孫に贈与した場合、贈与後の家賃収入は子や孫のものになります。しかし家賃等については、所得税等の対象にはなるものの、贈与税は課せられません。

賃貸マンションの場合、建物部分が贈与時の貸家建物の相続税評価額、土地部分が贈与時の貸家建付地の相続税評価額で評価されます(注:貸家建物の相続税評価額および貸家建付地の相続税評価額は、自用、つまり自ら住んでいる場合の相続税評価額より安くなります)。

これは、相続時精算課税制度によらず、親が死亡して相続をした場合でも同様で、家賃自体は相続税の対象になりません。ただし、相続時精算課税制度によって贈与をすれば、早めに家賃収入を子や孫に引き継ぐことができるというメリットがあります。

「賃貸マンションを贈与すると、将来の家賃収入を現在価値に割り戻して課税されるのではないか」と、心配する必要はありません。

まとめ

「その3」では価値が変動する資産を贈与した場合の留意点について述べました。「その4」では、相続時精算課税制度について注意すべき点を説明したいと思います。

出典

国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択

執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

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