"戦闘服の上に法被"地方の祭りの景色が変化 「これが良いか悪いか分からんけどね」担い手不足で自衛官が参加

福岡県みやこ町に初夏の訪れを告げる生立八幡宮の神幸祭は、祭りの担い手不足でかつて8基あった山笠が、6基に減ってしまいました。
人口の減少と高齢化率の上昇という多くの市町村が抱える問題に直面する中、山笠の保存会は、自衛隊に協力を依頼。

地方の祭りに生まれた景色の変化を取材しました。

高さ20メートル・重さ3トンの山笠8基→6基に

福岡県の北東部に位置するみやこ町です。

5月11日から始まる神幸祭を前に生立八幡宮では、祭りの華となる山笠が組み立てられていました。

生立八幡宮・熊谷晃哲宮司「疫病退散。それと五穀の豊穣ですね。太陽があって雨が無いといけませんので雨乞いのお祭りともなっています。」

準備をする地域住民「みんな沸き立ちますね、この時期になると。山笠の数が減ったしね、少し寂しいですね。」

高さ20メートル、重さ3トンに達する大きな山笠。

かつて8基ありましたが、今は、6基に減っています。

舁き手の減少と高齢化で、2つの集落が奉納を断念したためです。

人口の減少と高齢化率の上昇で祭りの担い手が不足

人口の減少が続くみやこ町。

先月の時点で、1万8000人を割りました。

その一方で、高齢化率は44.4%に達していて2040年には、みやこ町の半数が、65歳以上の高齢者になると予測されています。

地元の舁き手「高齢者ばっかりで人手がおらん、3~4年したら山も動かんのやないかなというぐらいの感じになるよね。」

祭り存続の危機保存会が陸上自衛隊に協力を依頼

迫り来る存続の危機。

山笠の保存会は、隣接する北九州市小倉南区に駐屯地を置く陸上自衛隊に協力を依頼しました。

陸上自衛隊第40普通科連隊・藤本将平第1中隊長「我々としては地域の方と顔の見える関係性というのを強めていきたくて、町の方から是非支援をして下さいという依頼があって是非参加させて下さいと。」

地元の舁き手「そりゃもうすげぇ助っ人よ。まぁこれが良いか悪いか分からんけどね。でも、昔からやって来た事だから、出来る限り続けていきたいしね。」

「神幸祭」始まる100人がかりで舁き山を

5月11日、祭りの初日「お下り」を迎えました。午後3時すぎに神輿が出発して、山笠の奉納が始まります。

まず、車輪が付いた2基の曳山が100m離れた御旅所へ移動。

舁き山は、100人がかりで動かします。

7年前、なかなか山笠を担ぎ上げられず…

7年前の「神幸祭」では、地域の舁き手が、山笠を担ぎ上げようとしますが、なかなか上がりませんでした。

山笠は、何度も止まりながら、御旅所を目指していました。

”戦闘服に法被”45人の自衛官が参加

今年は、戦闘服の上に法被を着た45人の自衛官が参加します。

地元の舁き手「真ん中4(人)の両端3(人)で入ってもらいます。」

山笠を担ぎ上げることはできるのでしょうか?1基めの山笠は、一発で担ぎ上げられました。

観客から拍手が湧き上がります。

地元の舁き手「自衛隊来たので良かったですね。ものすごくスムーズ。」

訪れた観客

「素晴らしくスムーズにいったのにびっくりした。いつも大体止まりますよね。山笠がなかなか動かなくてね」

「やっぱり動きが安心して見られる所が今年は良いですね。迫力が違います。」

2基め以降は、簡単に担ぎ上げられず

ただ、2基め以降は、そう簡単には担ぎ上げられません。

参加した自衛官「上がらんすね。いや次上げます、上げれ上げれ!」「肩痛いです」
肩にタオルを忍ばせる自衛官の姿も見られました。

力任せでは上がらないのがこの山笠。

舁き手の息が合わないと、山は動きません。

雨で山笠は重くなるも全6基を無事奉納

2日目の「お上り」。

田植えに必要な雨を願う神幸祭にふさわしい雨となりました。

幕や幟が雨水を吸い、山笠は、さらに重くなります。

自衛隊の協力を得た生立八幡宮の神幸祭。

無事、全6基の山笠の奉納を終えました。

地元の舁き手「どうもありがとうございました。来年も来てよ、頼むよ」

陸上自衛隊第40普通科連隊・藤本将平第1中隊長「地域の伝統を守っていく上で、そういったことに貢献できるのは誇り高い仕事なのかなという風に感じました。」

地元の舁き手「助けを頂きながらでもこういう伝統ある行事・祭りは残していきたいですね、後世に。」

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