【雑草プロの世界転戦記22】ヨーロッパ各国の国内大会事情~ドイツ、オランダ、フランスの場合<SMASH>

25歳でテニスを始め、32歳でプロになった市川誠一郎選手は、夢を追って海外のITF大会に挑み続ける。雑草プレーヤーが知られざる下部ツアーの実情を綴る転戦記。

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ヨーロッパのテニス環境についてリポートするシリーズ。今回は各国の国内大会について書きたいと思います。

ヨーロッパでは各国で国内大会やクラブリーグがたくさん開催されており、“国内”といっても選手層が厚く、とてもレベルが高いです。国際ツアーに出場しない選手でも、そこで多くの試合経験を積むことができます。それぞれの国の特徴を紹介しましょう。

【ドイツ】

ドイツは夏の間に多くの大会が開催されます。フランクフルト、シュツットガルト、ミュンヘン周辺で特に多くの大会があり、レベルにもよりますが、7月頃であれば毎週複数の大会に出場することも可能です。

僕の経験上、ドイツでは電車とバスだと大会会場まで1時間以上かかることも多く、車があった方が出場しやすいと思いました。また、ドイツの冬はインドアシーズンになるため大会は少なくなります。

ドイツの国内大会に出場するには、どこかのテニスクラブに所属することが必要です。クラブに登録するとクラブリーグにも出場できる機会があるでしょうから、メリットは大きいはず。ドイツは特にクラブリーグが盛んな国で、6、7月は多くのクラブリーグの試合が組まれます。

【オランダ】

アムステルダム周辺でも、夏の間に多くの試合がありました。基本的には毎週試合があると考えていいでしょう。冬場になると大会数は減少します。

ドイツ同様、国内大会出場にはクラブへの登録が必要になるはずです。オランダでもクラブリーグはありますが、伝え聞くところドイツほど盛んではありません。
【フランス】

僕は行ったことがないのですが、国内大会で一番たくさん試合経験を積めると言われているのがフランスです。どの地域でも試合は数多くあるようですが、やはり一番薦められるのはニース付近の南フランスです。

通常ヨーロッパは夏の時期に大半の試合があり、冬に大会を探すのは少し大変になりますが、南フランスであれば冬の間も多くの大会があるようです。そして夏場は毎週3大会に同時出場できると言われるほど、試合を豊富にこなせます。試合経験のために夏の間フランスに渡る選手もいるほどです。

ニース付近であれば、有名な「ムラトグル・アカデミー」をはじめ、多くの練習拠点もあります。国内大会を中心に試合経験をたくさん積みたい人は、南フランスのニース付近がいいでしょう。

次回はイギリス、スペイン、セルビアの国内大会事情を紹介したいと思います。

文●市川誠一郎

〈PROFILE〉
1984年生まれ。開成高、東大を卒業後ゼロからテニスを始め、32歳でプロ活動開始。36歳からヨーロッパに移り、各地を放浪しながらITFツアーに挑んでいる。2023年5月、初のATPポイントをダブルスで獲得。Amebaトップブロガー「夢中に生きる」配信中。ケイズハウス/HCA法律事務所所属。

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