就活生は「自分のキャリアは自分で選択したい」 先輩社員は称賛「企業側の動きと波長あってる」

スカウト型就職サイト「あさがくナビ」を運営する学情は2024年5月10日、2026年3月卒業/修了予定の大学生/大学院生を対象とした「キャリア形成」に関する調査結果を発表した。

自らのキャリア形成について「自身で主体的に選択したい」と答えた人が34.1%と最も多く、「どちらかと言えば主体的に選択したい」が33.4%で、主体的なキャリア形成に肯定的な考えを持っている人が3人に2人を占めた。

一方、「就職する企業に委ねたい」と答えた人は3.3%、「どちらかと言えば委ねたい」は11.8%と、合計しても15%程度。「どちらとも言えない」は17.4%だった。

ジョブ型採用に「興味がある」就活生は約半数

入社後にどのような職種で働くのかがあらかじめ決まっている「ジョブ型」採用について「興味がある」と答えた人は49.2%、「どちらかと言えば興味がある」が32.8%で、合計で8割を超えている。

都内の人材サービス会社に勤めるAさんは「高度成長期じゃないんだから、頭空っぽなソルジャーではやっていけません」と就活生の志向を歓迎しつつ、企業側の募集要項の変化についてこう説明する。

「以前は、自分がどの部署に配属されるのかは、内定式に出ないと分からないものでした。入社式で初めて教えられる人もいたかもしれません。でも、いまはキャリア採用と同様に、新卒でもジョブ(職務)ごとに採用を行うので、いわゆる『配属ガチャ』が生じないようになっています」

たとえば大手メーカーでは、新卒求人のジョブとして「データサイエンティスト」などの職務があり、「ビッグデータの解析を行い、顧客ニーズの把握やプロモーション戦略への活用を行う」といった具体的な業務内容まで明示されているという。

「昔は新卒と言えば、大学での専攻などの過去を捨ててまっさらな状態で入社し、会社の色に染まることが重視されていました。しかしいまでは『数理統計や機械学習を勉強してきた人は、ぜひ当社でデータサイエンティストとして活躍して』といった形で、専門性を重視する採用に変わっているのです」

ただしひとつの「キャリア観」に固執しすぎるのは損

以前は就活生側も、法学部や経済学部のような「つぶしの利く学部」に入り、会社に「就社」するつもりの人も多かった。しかし、ジョブ型採用を行う企業が増えるにつれて、大学で専門的な勉強を志向する就活生側が増えているという。

「単にマーケティング専攻というだけでなく、ベンチャー企業のインターンでSNSを使ったデジタルマーケティングに携わった経験を積んだうえで、そういうジョブに応募するような人もいます。昔みたいに大学時代を遊び呆けた人は『ノースキル文系』として応募するジョブがなくなっていくのかもしれませんね」

Aさんは、就活時のジョブを意識して大学生活を送ることは「いいことだと思う」としながら、乏しい社会人経験に基づくキャリア観に固執しすぎないようにすべきという。

「目標を持つとか、それに向かって努力すること自体は、とてもいいことだと思うんです。ただ、企業にはいろんな仕事があるのに、『マーケターになりたい』とか目立つ仕事にこだわり、実際に配属されないと『ガチャに外れた』と考えたりするのは、自分の可能性を狭めることになると思います」

Aさんによると、キャリア開発の世界には「計画的偶発性」理論というものがある、と説明する。それは、ビジネスパーソンとして成功した人のキャリアにおけるターニングポイントの8割が「本人の予想しない偶然の出来事」によるものだった、という研究結果があるというものだ。

「単に偶然というだけでなく、その偶然を活かす行動や努力が重要なんですが、そういう偶発性を起こす5つの行動特性として『好奇心』『持続性』『楽観性』『柔軟性』『冒険心』があると言われているんですよね」

就活生の変化に「隔世の感」

つまり、自分がある程度想定したキャリアを積みつつ、それまでのキャリアと別の選択肢が目の前に現れたとき、「こっちの道も面白そうだな」と考えて踏み出してみることで道がひらけ、ビジネスパーソンとして成功する場合があるということだ。

Aさんによると、会社側も「定期的なジョブローテーション」のようなかたちで、社員を強制的に異動することが減っていると指摘。そのため、ますます自らのキャリア形成を「自身で主体的に選択する」ということが重要になっている。

「自らのキャリア形成について『自身で主体的に選択したい』と答えた就活生は、企業側の動きと波長が合っていると言えます。そういう就活生が多数派になったという調査結果には、隔世の感を抱かざるを得ませんね」

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