社説:空き家数最多 中古重視へもっと踏み込め

 空き家の増加に歯止めがかからない。既存住宅の利活用に向けて、住宅政策を抜本的に見直すべきではないか。

 全国の空き家数が昨年10月時点で過去最多の900万戸に上ることが、総務省の住宅・土地統計調査の速報値で明らかになった。京都府は18万戸、滋賀県は8万1千戸だった。

 全国で5年前の調査と比べて51万戸増え、30年間で倍増した。住宅総数に占める割合も0.2ポイント上昇して過去最高の13.8%で、おおむね7戸に1戸となっている。

 空き家の増加を防ぐため自治体の権限を拡充する特別措置法の全面施行から10年近くになるが、改善に向かっていないのは明らかだろう。

 深刻なのは、賃貸や売却といった使用目的のない物件が、前回比37万戸増え、385万戸に上る現状だ。京都は8万5千戸、滋賀は4万8千戸ある。

 放置されれば、倒壊の恐れや衛生面と治安の悪化、景観の阻害を招く。災害時には救助や復旧の妨げにもなる。実際に能登半島地震の被災地では、所有者の確認が取れない空き家の解体が課題となっている。

 自治体は、空き家放置のリスクに危機感を持って対応すべきだ。

 空き家の所有者が物件を取得した理由の半数は、相続や贈与という。放置されるのは取り壊しの費用負担や売却の難しさが理由だが、除却して更地にするよりも土地の固定資産税が安く済む制度にも起因している。

 昨年末施行の改正空き家対策特措法では、倒壊の恐れが迫る前に市町村が「管理不全」と認定し、税の優遇を解除する物件の範囲を広げた。4月には相続登記の申請も義務化された。

 危険な空き家を減らし、管理を促す狙いだが、所有者の悩みは簡単に解決しない。除却や活用を積極的に選択できる施策の充実が欠かせない。

 京都市では今月、不動産団体などを空き家の「管理活用支援法人」に指定した。改正法を根拠として住宅業者に所有者情報を提供し、売買や賃貸につなげていくという。所有者や入居希望者のニーズに沿った運用が求められる。

 市が物件の流通を進めるために条例化した「空き家税」は、システム開発が遅れている。早急に導入時期の見通しを立て、対策の財源として活用できる体制を整えたい。

 人口減少が進み、2050年には1人暮らしの高齢者が全世帯の2割に増えると国は推計する。空き家は単身の高齢者の死亡や施設入所で発生しやすく、長期的に増加は避けられまい。

 経済対策と相まって税制などで新築を奨励する一方、空き家の利活用が後回しになっているのは否めない。子育て支援や高齢者の住宅福祉の面からも、中古住宅の活用に注力すべきだ。

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