<ライブレポート>サラ・オレイン、聴く者にジャズの魔法をかけるビルボードライブ・ツアー開幕

ポップスやロック、ジャズや映画音楽など幅広いジャンルの楽曲を、美しくも力強い歌声で表現し国内外のファンを魅了してきたサラ・オレインが、春のビルボードライブ・ツアー【Sarah Àlainn Quartet ~MAY there be Jazz!~】を開催。その初日を5月11日、ビルボードライブ東京にて行った。1日2回公演で、筆者が観た2ndステージの模様をレポートする。

定刻となり、サポートメンバーの田中菜緒子(Pf.)、早川哲也(Ba.)、高橋信之介(Dr.)が先にステージに現れ、腕鳴らしのインプロビゼーションを展開。遅れて黒いドレスを身に纏ったサラが登場し、客席からまずは「Feelin’ Good」をアカペラで歌唱。その力強くソウルフルな歌声に圧倒される。ステージに辿り着き、スウィングするバンドに合わせて「Are you feeling good, Tokyo!?」とスキャットでオーディエンスに呼びかけると、フロアからは大きな拍手と声援が沸き起こった。

「今日は、あらゆるジャンルの楽曲をジャズの魔法にかけていきたいと思っています」

MCでサラがそう告げていたように、この日はジャズのスタンダードはもちろん、クラシックやポップス、ロックなど様々な楽曲をジャズシーン出身のサポートメンバーとともに、自由にカヴァーしてみせた。例えばヴァイオリニストのヤッシャ・ハイフェッツが編曲したジョージ・ガーシュウィンの「It ain’t necessarily so」を、目まぐるしく変化していくリズムセクションや、ヴァイオリンとピアノのソロバトルなどによって、このカルテットならではの感性でさらにアレンジを加えていく。

かと思えばジャズのスタンダード「My Favorite Things」を、2012年の1stアルバム『セレスト』に収録されていたものとは全く違うアレンジで披露。特にイントロでサラが披露した、アフリカのパーカッション楽器カリンバ(カラマツで作られた、彼女によるプロデュースのオリジナルカリンバ)での弾き語りや速弾きソロは圧巻だった。

中盤では、フランスの国民的歌手ミッシェル・ポルナレフによる「シェリーに口づけ(Tout, tout pour ma chérie)」から、「アイドル繋がり」で日本のとある大ヒットナンバーを続けてカバー。その意外な選曲にオーディエンスは驚きながらも、満面の笑みとともにハンドクラップで応えていたのが印象的だった。

個人的に白眉だと思った演目の一つは、ライブ前半に披露した「Calling You」。ジェヴェッタ・スティールが歌う、映画『バグダッド・カフェ』主題歌のカヴァーだ。胸を締め付けるような切ないピアノのアルペジオに乗ってしっとりと歌い上げたかと思いきや、サビでは低音から超ハイトーンへと一気に飛躍するボーカル。しかも声を張り上げるのではなく、ピアニッシモでホイッスルボイスを響かせるのはおそらく至難の業だ。ここは本公演の中でも、最大の聞きどころの一つと言っていいだろう。

またライブでは、先日のインタビューでも予告してくれたように最新ゲーム『サガ エメラルド ビヨンド』から「扉を越えて」と「Crazy for Who?」、そしてゲーム『百英雄伝』からのテーマ曲「Flags of Brave」を披露。途中『サガ エメラルド ビヨンド』の主人公、歌姫メカ「ディーヴァナンバー5」を連想させる衣装に速着替えしたサラは、「Crazy for Who?」(物語の中で、「ディーヴァナンバー5」が声を失う前にヒットさせたアイドルソング)では、非常に難易度の高いダンスを踊りながら歌うという、アクロバティックなパフォーマンスを展開し自身の多才ぶりを見せつけた。

ちなみにこの日の会場にはサラがプロデュースしたオリジナルカクテル「Emerald Encore」も用意されていた。新緑の時期のカラーであり、5月の誕生石であるエメラルドにちなんでつけられたその名前はもちろん、ゲーム『サガ エメラルド ビヨンド』も意識している。音楽のアンコールと同じく、「おかわり」したくなる味わいだった。

ボーカルやヴァイオリン、カリンバのみならずピアノやボコーダーなど様々な楽器を操り、セットリストや楽曲のアレンジ、衣装、カクテルや舞台演出など隅々までサラ・オレイン本人のこだわりがぎっしりと詰め込まれたおよそ90分。盛りだくさんのセットリストだったためMCはいつもよりも控えめだったが、その代わりスターウォーズの名台詞「May The Force Be With You」をもじったツアータイトルや、オリジナルカクテルのネーミングでの「言葉遊び」など彼女ならではのユーモアを忍ばせた、まさに「サラワールド」全開の内容だった。

【Sarah Àlainn Quartet ~MAY there be Jazz!~】はこの後、5月18日ビルボードライブ大阪、5月24日ビルボードライブ横浜でも開催。このツアー以降、日本でのライブはしばらくお休みする予定だというサラ・オレインの、マルチな才能を存分に堪能できる本ツアーを、ぜひともこの機会に体験してほしい。

Text:黒田 隆憲
Photo:Makiko Takada

◎公演情報
【Sarah Àlainn Quartet ~MAY there be Jazz!~】
2024年5月11日(土)東京・ビルボードライブ東京 ※終了

2024年5月18日(土)大阪・ビルボードライブ大阪
1st ステージ OPEN 16:30 / START 17:30
2nd ステージ OPEN 19:30 / START 20:30

2024年5月24日(金)神奈川・ビルボードライブ横浜
1st ステージ OPEN 17:00 / START 18:00
2nd ステージ OPEN 20:00 / START 21:00

サービスエリア 7,900円
カジュアルエリア 7,400円(1ドリンク付)

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