Honda的「かつてない感動体験」って、どんな体験? 「2024 ビジネスアップデート説明会」を通して、EVだけじゃない未来が見えてきた

ホンダは2024年5月16日、報道陣向けに「2024 ビジネスアップデート説明会」を開催しました。電動化に向けた取り組みの今後の方向性とともに、財務に関する戦略も紹介。改めて、EVを柱としながら歩んでいく決意表明となります。同時にそこには次世代の「ホンダらしさ」を生む、革新の行方を垣間見ることができました。

EVシフトは踊り場に。さらに力強く普及が進むと予想

記者会見にあたって、壇上に立った本田技研工業株式会社 取締役 代表執行役社長である三部 敏宏氏は冒頭、世界的に広がりつつあるEV懐疑論について「長期的視点で観ればシフトは確実に進むと確信している」と、語りました。

EV普及の速度変化についてはすでに織り込み済み、と語る三部社長。小型モビリティに関しては、EVがもっとも有効なソリューションであることを改めて強調した。

その上で、2020年代前半の「黎明期」から始まり、中盤の「移行期」を経て、後半以降の「EV普及期」に向けてEVの包括的バリューチェーンを構築することを明らかにしています。

核となるのはバッテリーであり、EVの垂直統合型バリューチェーンを構築することで2030年には北米で調達するバッテリーのコストを現行比で20%以上削減を目指す、とのこと。年間約200万台という目標生産キャパシティを賄うための調達体制は、すでに完成していると言います。

競争力の鍵となるバッテリーを中心に、調達の方策についても段階的に「進化」させ、最適なバリューチェーンの構築を図るという。

こうした取り組みによって、ホンダの電動化(というかフル電動化戦略)は、今後の数年間で一気に加速することになりそうです。2030年の本格的な普及期に向けてホンダは現在、カテゴリーやエリア特化を含めた3つのラインバリエーションを用意しています。

ひとつはグローバルEVである「Honda0(ゼロ)シリーズ」、中国向けのエリア限定型ブランド「e:Nシリーズ」および「ye:イエシリーズ」、そしてニーズのあるエリア向けのボリュームゾーンとして小型EVの展開を拡大させる計画です。

ホンダ ゼロシリーズのフラッグシップ コンセプトモデル「サルーン」。フル4シーターながら、ガルウイング式ドアを採用している。

このうちゼロシリーズはセダンモデル「SALOON(サルーン)」が「フラッグシップ」を謳うとおり、比較的プレミアム性の高いラインナップが揃うようです。2026年までの北米での上市を皮切りに、2030年までには全世界で7車種が投入されますが、中型SUV、3列大型SUVなど、クラスの中ではより上級に位置するSUVが豊富に揃います。

中国向けは、2027年までに10モデルを投入、2035年までに全モデルをEV化する大盤振る舞いです。

軽量化、低重心化とともに、ロボティクス技術走りを変える

一方、小型EVラインナップの方は、N-VANe:を始めとする軽乗用EVやホンダ モバイルパワーパックを4個搭載する超小型モビリティなど数タイプが、ニーズのあるエリア向けに導入されます。

2024年秋に日本で発売を予定する軽商用EV「N-VAN e:」を皮切りに、2025年には軽乗用EVモデルを投入する。

そんな中でちょっと気になるのが、「2026年には操る楽しさを際立たせた小型EV」の誕生が、予告されたことでしょう。

具体的に「どんな楽しさなのか」はまだ内緒、のようですが、ゼロシリーズの魅力として明らかにされたポイントとしては、次の4つが挙げられました。

操る喜びとともに軽快な走りを支える新技術

・ボディ骨格の軽量化に加え、F1やハイブリッドの開発で培った技術で軽量・薄型化した新型パワーユニットの採用により、従来比約100kgの軽量化を実現
・バッテリーやパワーユニットなどの重量物を低く、車体中心に配置し低重心化することで、クルマの挙動が安定し、キビキビとした軽快な走りを創出
・ドライバーが思い通りコントロールできる技術として、Honda独自のロボティクス技術で培った姿勢制御によるモーションマネジメントシステムがさらに進化
・モータースポーツで培った高効率なパワーユニットと、高い空力技術の組み合わせにより、Hondaらしい軽快な走りと世界トップクラスの電費性能を両立、各モデルで300マイル以上の充分な航続距離の実現を目指す

もしかしてフル電動「CR-Z」復活? いや、さらに遡って「CR-X」復活!?まで期待してもいいかもしれません。

人の感性に寄り添うソフトウェアデファインドモビリティ

「操る楽しさ」という視点で言えば、ハイブリッドモデルの展開についても道筋が明確にされました。将来的なBEVシフトを見据えての原資的な役割を担いながら、さらなる燃費改善と卓越した走りを高い次元でバランスさせることを目指すと言います。

ハイブリッドを含めたICE領域への投資も続けながら、EV開発技術との連携が進む。開発における統合的な協調が、計画の実現速度を左右することになりそうだ。

その技術的コアとなるのは、Honda独自の2モーターハイブリッドシステム「e:HEV」。進化の方向としては、軽量化と高効率化が進められます。同時にプラットフォームの効率化が追求されることになります。そこには、共用化によるコスト削減も含まれるようです。

注目すべきは、「走りの楽しさ」をわかりやすくグレードアップしてくれる電動4WDシステムの採用でしょう。EV開発のプロセスで開発された高性能電気モーターを用いて、最大駆動力を向上。さらに、駆動力配分制御をより高レスポンス、高精度に熟成させることを目指します。

ホンダらしくここでも、その制御ロジックにはロボット開発を通して磨かれた「モーションマネジメントシステム」が役立てられています。安定した車両挙動と優れた運動性能が協調することで、かつてない痛快な走りが期待できそうです。

もうひとつ、「走る楽しさ」に関する別の一面からのアプローチも、進められます。それは「すべての人に生活の可能性が拡がる喜び」を支えるためのモータリゼーションの成熟。土台となるのは、自動運転やADASの価値が極限まで高められ、深く理解され、ユーザーに受け入れられるための「ソフトウェアデファインドモビリティ」の実現です。

独自のモービルOS開発に加え、AIに関しては「ホンダ独自のカスタマイズ」を実施・・・やがてホンダのクルマたちは、「知性を宿すような進化」を遂げることになります。

見どころ聴きどころが盛りだくさんの「ビジネスアップデート」は、乗車から後車までシームレスな移動やストレスのない自由な移動の悦びなどなど、さまざまな「キャッチフレーズ」が提案されました。その先に待つのは、乗り物としての進化を超えた、これまでにない「感動体験のアップデート」になりそうです。(文:神原 久 Webモーターマガジン編集部)

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