ミラーレスカメラに一眼レフ用MFレンズを付けてAF化するマウントアダプターを試してみた

By 吉森信哉

異なる規格のレンズマウントを変換し、ミラーレスカメラに装着するマウントアダプター。数多くの製品が各社から発売されているが、マウント変換以外に「AF化」と「マクロレンズ化」の機能を持つ “技あり” のマウントアダプターを2機種をセレクト。実写を通じて、両モデルの魅力に迫ってみたい。

まずは、ライカMマウントをソニーEマウントに変換し、AF化する「TECHART LM-EA9」を試してみた。

ライカMレンズをAF化するマウントアダプター「TECHART LM-EA9」

2022年10月5日発売 参考価格 56,700円 (税込)

ライカMマウントをソニーEマウントに変換し、内蔵するモーターでMFレンズをAF化する機能を持つ。従来モデル (LM-EA7) では、AFモーターを収める突起部があったが、新しいモーターの採用でスッキリとしたデザインとなった。ほかのマウント変換アダプターと併用することで、一眼レフ用MFレンズのAF化も可能。

マウントアダプターをもう1つ加えて一眼レフ用レンズを「LM-EA9」に装着

「LM-EA9」に、一眼レフ用マウントをMマウントに変換するアダプターを加えれば、ニコンF、ペンタックスK、オリンパスOMなどの一眼レフ用MFレンズを装着し、AF撮影ができる。

2つのマウントアダプターで一眼レフ用MFレンズをAF化

ソニーEマウントカメラ用の「TECHART LM-EA9」は、約68mm径、全長約18mmの鏡筒内にAF駆動モーターを内蔵。レンズ側のマウント面を前後に動かすことで、MFレンズでのAF撮影を可能にする。

この製品はライカMマウントレンズ用だが、ほかのマウント変換アダプターと組み合わせることで、各種一眼レフ用MFレンズでのAF撮影が可能になる。今回はニコンFマウントレンズ → ライカMマウント変換アダプターと組み合わせて「AI Nikkor 28mm f/2.8S」を使用してみた。

撮影する前には、いくつかの作法 (準備) が必要になる。まず、ボディ内手ブレ補正機構を適切に働かせるために、装着するレンズの焦点距離データを設定する。この方法がユニークで、カメラの電子ダイヤルで絞り値を選び、一度シャッターを切ることで、レンズの焦点距離をカメラに覚えさせる。

たとえば、12mmならカメラ側の絞り値をF2.8、15mmならF3.2、18mmならF3.5、21mmならF4…と、取扱説明書にある焦点距離と絞り値の組み合わせ (全24種類) を見ながら設定操作を行なう。この設定により、EXIFデータに焦点距離の情報が記録され、撮影後に使用したレンズを確認できて便利だ。

撮影時の絞り値の設定はレンズ側で行なう。このとき、ボディ側の絞り値は常にF2.0に設定しておかないと、焦点距離の再設定が行なわれてしまうようだ。

広角レンズでも素早く正確にピントを合わせる

澄み切った青空に、寺院本堂の造形と色彩が映える。広角レンズによるMFでも失敗が少ない撮影距離である。それでもAFが使えれば、より快適なピント合わせが行なえる。なお、フォーカスリングは無限遠に近い位置に調節しておいた。

ソニー α7 III + AI Nikkor 28mm f/2.8S (絞り優先オート F8 1/400秒 −0.7補正 ISO100 WB : オート)

フォーカスリングでピントを大まかに合わせAFで追い込む

AFは、通常のAFレンズを使用する際と同様、シャッターボタンの半押しで機能する。合焦速度はAF-S撮影では十分満足できるもの。AF-C、顔検出、瞳AFもひと通り使用できる。

実際の撮影では、レンズのフォーカスリングの位置も重要。フォーカスリングが無限遠に近いと、レンズの最短撮影距離より少し離れた所までしかピントが合わない。反対にフォーカスリングが近距離だと、遠景にピントが合わなくなる。つまり、フォーカスリングで大まかな調節を行なったうえで、AFでピントを追い込むというのが上手な使い方であるようだ。はじめ、AF機能は必要ないのでは? と思っていたが、使ってみると快適で、ほかのレンズでも試してみたくなった。

被写体が近いときはフォーカスリングの操作も必要

花や観葉植物など近距離の被写体を撮る場合、レンズのフォーカスリングの調節も必要。最短撮影距離にセットするとAFが合う範囲が極端に狭くなる。ここでは1mくらいに調節してAF撮影。これで広い範囲にピントが合う。

ソニー α7 III + AI Nikkor 28mm f/2.8S (絞り優先オート F2.8 1/1000秒 ISO100 WB : 太陽光)

AF化マウントアダプター「LM-EA9」のポイント

① ボディ内手ブレ補正とEXIF記録に対応
「LM-EA9」はカメラで特定の操作を行なうと、装着したレンズの焦点距離を認識。これにより、ボディ内手ブレ補正とEXIF データに焦点距離が設定され、各機能が連動するようになる。

② AF-S、AF-C、顔認識、瞳AFが可能
像面位相差AFを使い、選択した測距点で正確なピント合わせを行なう。顔認識や瞳AFにも対応。なお、測距可能な範囲はレンズによって異なり、画面の中央付近でピントを合わせることになる。

③ 最短撮影距離が短くなる
レンズのフォーカスリングを最短撮影距離に合わせた状態から、レンズを最大4.5mm繰り出せるため、さらに被写体に近づける。

4つのモーターを内蔵したMマウント面が前後に移動し、ピントを合わせる。

元のレンズより近い距離にピントが合う

モミジバフウの実を使い、最短撮影時の写りを確認。使用した「AI Nikkor 28mm f/2.8S」は近接撮影能力の高いレンズとして知られているが、「LM-EA9」と組み合わせると、さらにレンズが繰り出されて0.165mほどの距離までピントが合った。

ソニー α7 III + AI Nikkor 28mm f/2.8S (絞り優先オート F4 1/320秒 −0.3補正 ISO100 WB : 太陽光)
最短撮影距離AI Nikkor 28mm f/2.8S : 0.2mTECHART LM-EA9 併用時 : 約0.165m

近距離撮影時にAFのありがたさを実感

近くにピントが合うようにレンズのフォーカスリングを近距離に調節し、小さなプールに浮かべられた花々に接近。広角の画角と絞り開放の描写で、温室内の雰囲気が適度に写し込めた。こういった近距離撮影では、やはりAFのありがたさを実感する。

ソニー α7 III + AI Nikkor 28mm f/2.8S (絞り優先オート F5.6 1/320 秒 +0.3 補正 ISO100 WB : オート)

そのほかのライカMレンズ用マウント変換&AF化マウントアダプター

ライカM → ニコンZ「TECHART TZM-02」

2023年2月21日発売 参考価格 56,700円 (税込)

ライカMマウントをニコンZマウントに変換して、モーターでMFレンズをAF化するマウンドアダプター。AF-S、AF-C、動画AF、顔検出AF、瞳AF に対応する。EXIF情報を共有することで、ボディ内手ブレ補正も使用できる。

ライカM → 富士フイルムX「Fotodiox LM-FXRF-PRN」

2020年11月4日発売 参考価格 46,800円 (税込)

ライカMマウントを富士フイルムXマウントに変換して、搭載するモーターでMFレンズをAF化する機能を持つ。「LM-EA9」「TZM-02」と異なり、モーター収納部が飛び出しており、レンズ、カメラボディと干渉して取り付けられない場合がある。AFの使用は像面位相差AF採用カメラのみで、AF-Sでの使用となる。

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