台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維持」訴えへ

Yimou Lee

[台北 18日 ロイター] - 20日に就任する台湾の頼清徳新総統(64)は、就任演説で中国との関係において現状を維持することで安定を保つことを宣言する。次期政権で安全保障を担当する高官が明らかにした。

中国は、ほぼ毎日のように台湾の空域に軍用機を侵入させるなど、台湾に対して中国の主権を認めるよう圧力を強めている。4年間蔡英文総統の下で副総統を務めた頼氏には、こうした中国の強硬姿勢への対応が求められる。

頼氏は中国との対話を何度も申し出ているが、台湾を支配下に置くための武力行使の可能性を放棄していない中国側はこれを拒否している。頼氏と同氏が率いる与党・民主進歩党(民進党)は、台湾の未来を決めることができるのは台湾の人々だけだ、としている。

「私たちは、蔡総統が築いた基本を引き継ぎ、安定的で着実なアプローチについて話す」と、次期政権の高官は台北でのブリーフィングで語った。

この高官は、「現状を維持し、現状が損なわれないように全ての関係者と協力しながら、台湾が世界経済と地政学において不可欠な役割を果たすようにする」とした上で、中国が軍事的な圧力を強め、台湾の世論の分断を図る工作を行っていることから、新政権は内外で「より困難で複雑な」現実に直面することになる、と述べた。

「われわれは、国際秩序を破壊し続け、両岸交流の機会を台無しにしているのは他ならぬ中国側であることを、国際社会に明らかにし続ける」と、この高官は付け加えた。

中国で台湾政策を担う国務院台湾事務弁公室は今週、「台湾地域の新しい指導者」は平和的発展か対立かの明確な選択をしなければならないと述べた。ロイターのコメント要請には応じなかった。

1月の選挙で頼氏が当選する前、中国政府は頼氏が台湾の正式な独立を支持する立場として繰り返し非難し、選挙は戦争か平和かの選択となると主張した。

中国は、台湾が正式な独立を宣言するような動きがあれば、台湾を攻撃する理由になるとしている。台湾当局は、台湾はすでに独立国の中華民国であり、それを変えるつもりはないとしている。中華民国政府は毛沢東率いる共産党との内戦に敗れ、1949年に台湾に移転した。

中国は頼氏就任を前に、台湾付近を航行する外国船に模擬攻撃を行うなど、日常的な軍事活動をエスカレートさせていると、情報筋はこれまでにロイターに明らかにしている。

前出の次期高官によると、頼氏は台湾の国防をさらに近代化し、独自の軍用機や艦船の建造継続を約束するという。

「われわれの目標は、紛争が決して起こらないようにすることだ」と、この高官は語った。

ウィリアムという英語名で広く知られている頼氏は、1月の選挙で民進党が議会の過半数を失っており、大きな課題に直面している。

台湾の立法院(国会)では17日、議員同士がもみ合いになる混乱が起きた。立法院での虚偽発言を刑法違反とするなどの改革案を野党側が推し進めたためだった。

頼氏は18日未明、フェイスブックに書き込み、調和を取り戻して合意を得るために「理性的」な議論を呼びかけた。

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