『HUNTER×HUNTER』は再開間近?『NANA』『バガボンド』も…長期休載中の漫画はどこで止まっている?

『HUNTER × HUNTER』

2024年5月1日、漫画家・冨樫義博氏の公式Xアカウントが7か月ぶりに更新。ページ番号が書き込まれた原稿用紙の画像とともに「No405、やっております。ムーン・ヒーリング・エスカレーション!」と原稿の進展が伝えられた。

冨樫氏の漫画『HUNTER×HUNTER』は、『週刊少年ジャンプ』2022年12月26日発売号に掲載された第400話を最後に連載がストップしている。しかし、1日以降、冨樫氏は連日のようにXを更新し、14日の投稿では「No.407開始」と報告した。現在、本誌では「暗黒大陸編」が進行中で、暗黒大陸へ向かう船中でさまざまなキャラクターの思惑が入り乱れている状態。いよいよ迫りそうな連載再開に向けてこれまでのコミックスを読み直し、情報を整理しているファンも多いのではないだろうか。

『H×H』は現在不定期掲載だが、人気漫画の中には美内すずえ氏の『ガラスの仮面』のように様々な理由によって長期休載中となっている作品も少なくない。それらの作品は、現状どこで連載がストップしているのか、「長期休載中」漫画の連載ラストシーンを振り返っていこう。

■圧倒的な画力で描く宮本武蔵の生きざま『バガボンド』

1998年から『モーニング』で連載中の井上雄彦氏の漫画『バガボンド』は、吉川英治の小説『宮本武蔵』を元にした歴史物語だ。

圧倒的な作画、丁寧な心理描写など読み手を惹き込む魅力があり人気も根強いが、2010年に一時休載。2012年に再開するも、2015年から再び休載となっている。

この休載の理由は、スランプや体調不良などによるものと言われているが、休載中のインタビューをまとめた著書『空白』でも、『SLAM DUNK』と比べて終わり方に悩み、スランプに陥ったことを明かしていた。

現時点では『モーニング』に327話までが掲載されており、最新37巻は稲作を通じて人として成長する武蔵の姿が描かれている。

飢餓で苦しむ集落のために小倉細川藩の家老である長岡佐渡守の元に出向いて助けを乞い、小倉へ行くことを条件に米を受け取る武蔵。天下無双の武蔵が土下座までする姿に沢庵和尚も驚くが、変わったのは武蔵だけではなかった。村人たちも武蔵に影響を受け、武蔵が農業を教わっていた百姓の秀作に、自分たちにも米作りを一から教えてほしいと頼んだのだ。さらに村の女性は武蔵に剣の教えも乞う。秀作は「ここにいたら闘えなくなる」と武蔵を旅立たせようとするが、彼は収穫まで見届けることを選び、集落で生の本質や助け合いの姿勢を学んでいく。

収穫が近づいた頃、病に伏せていた秀作の命が尽きてしまう。武蔵の行動が村の人々の意識を変え、その後収穫が始まり武蔵に約束の時が訪れ、いよいよ小次郎のいる小倉へ……という場面で物語は止まっている。

同じく井上氏によるバスケ漫画『リアル』も、2014年11月の休載後、2019年25号より連載再開され、2021年26号で再び休載に入った。しかし、2023年39号で待望の新エピソードが掲載されファンを喜ばせた。

井上氏は、映画『THE FIRST SLAM DUNK』のインタビューで『バガボンド』について、「描きたい気持ちはずっとある。描けないってだけで」と語っており、再開への意欲を伝えている。最終エピソードの「巌流島の戦い」まであと少し。武蔵と小次郎の死闘をが読める日を気長に待ちたい。

■壮大な世界観で綴られるサイキックバトル『X』

1992年から『月刊ASUKA』(現『ASUKA』)で連載中のCLAMPの漫画『X』も、連載再開が望まれ続けている漫画のひとつだ。

滅びかける地球を前に、人類と地球を守りながら再建を望む「天の龍(七つの封印)」と、人類を滅ぼして地球をゼロからやり直す事を望む「地の龍(七人の御使い)」のバトルを描いた同作。

連載時からたびたび休載を繰り返し挟んでいたが、2002年に長期休載へとシフト。2004年に雑誌『ぱふ』のロングインタビューにて、ラストに向けた展開がダークな内容だったため、当時国内で起こった様々な事件や災害を鑑みて掲載が難しくなった旨を明かしている。

現在出版されているのはコミックス18巻までで、2023年11月に、雑誌掲載の未コミック化エピソードが『CLAMP PREMIUM COLLECTION X』の18.5巻として発売された。

天の龍と地の龍の争いが熾烈を極めた18巻。二重人格の幼女・丁(ひのと)のもうひとつの顔である「裏丁」に導かれて銀座に向かった天の龍・夏澄火煉と青軌征一狼の前に、地の龍の那吒と神威が現れる。感情を持たない那吒だが、火煉に母のような情を覚えて神威の命令に背いて彼女を守る。その決断を見た神威は、「これが彼の望み」と那吒を殺す。

銀座の結界は壊され、残る結界は東京タワーと都庁のみ。東京はほぼ壊滅状態となり、ついに人類と地球の存亡をかけた最後の戦いが始まろうとしていた……。という場面で物語は止まっている。そして18.5巻では、いよいよ二つの神剣の封印が解かれた。

封真の言う「神威にしか叶えられない」という言葉、神威の本当の願い、人類の行く末……。気になる点もあるが、CLAMPはかつてインタビューで「結末まで描きたい」と語っているため、いずれ謎が解けることを願う。

■二人のナナの友情と恋物語『NANA』

小松奈々と大崎ナナという同じ名前を持つ二人の女の子が織りなす、重く切ない人間関係を描いた矢沢あい氏の漫画『NANA』。2000年から連載が始まったが、病気療養により2009年に休載している。現在は、コミックス21巻(80話まで)が刊行されており、掲載していた『Cookie』で84話までが発表された状態だ。

21巻に描かれていたのは、ナナの恋人・本城蓮(レン)の死について。薬物中毒で自身のバンド・トラップネストの脱退を申し出たレンは、自分のせいで行方をくらましたボーカル・芹澤レイラに責任を感じ、彼女を迎えに車を走らせていた。記者の尾行に気づいた彼は加速するが、運転を誤って壁に激突してしまう。手以外の原型がないほど、悲惨な事故死だった。

レンはこの世を去り、受け止めきれず心が壊れたナナは、翌日の葬儀で涙も流せずにぼんやりレンの手を見つめていた。そこに未来のモノローグが入り、奈々は大きくなった娘の皐とともにレンを弔うシーンが描かれていた。

『Cookie』掲載分では、奈々がナナを支えるために動く姿が描かれている。奈々と夫のタクミ、タクミとレイラの関係、ナナの心、レン死後のトラネスなど、気になる点を残したまま物語は中断している。

矢沢氏は2022年に開いた初の展覧会『ALL TIME BEST矢沢あい展』にコメントを寄せ、「少しずつでもまた作品を描いていけたら」と語っていた。いつかまたナナたちに会える日を楽しみに待ちたい。

長期休載の作品の中には、あと少しで完結なのに……という絶妙なところで止まっているものもある。もちろん原作者の体調が最優先だが、時間がかかっても結末が読みたいと思う読者は多いだろう。

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