【格闘代理戦争】中谷優我、青木真也を通して見た格闘技「勝ち負けじゃない。恥をかくのも仕事」

試合後に笑顔を見せた中谷優我【写真:ENCOUNT編集部】

“泣き虫”だった中谷に笑みがこぼれた

ABEMAのドキュメンタリー番組『格闘代理戦争-THE MAX-』の決勝が17日、行われた。第3試合に行われたスペシャルマッチでは「TEAM青木真也」の中谷優我は「TEAM桜井“マッハ”速人」の中川海に3R、残り10秒で一本勝ち。試合後、安堵の表情の中谷に話を聞いた。(取材・文=島田将斗)

悲願のフィニッシュだった。青木から何度も「格闘技に向いていない」と言われ続けてきた中谷はトーナメント準決勝で1R・18秒で一本負け。それでもスペシャルマッチという形で決勝の舞台に戻ってきた。

この一戦に出るまでには紆余曲折あった。準決勝で破れた中谷は番組側からスペシャルマッチの打診をされるも「試合で膝を痛めてしまってまだ練習もできる感じではない状態で……。短いスパンでやるのは厳しいのかな」と消極的な言葉を口にする。

青木からは「今からできないっていうことを『やれ』とは俺は言わないよ。でも結局、仕事を全うできなかったんだよ。心が折れるとかやりたくないとか、そういう話じゃないんだよ、仕事って。やるんだよ、それがプロ格闘家だよ」とプロ根性を叩きこまれていた。

参戦はなくなったかのように思えたが一転、中谷のスペシャルマッチが決定した。この間にどんな心境の変化があったのか。

「ケガを言い訳に出場できないと言ったのは自分の自覚のなさでした。それも含めて格闘技に向いていないと言われたのだと思います。この番組に一緒に出させてもらってる以上、試合があると言われたら出なければならない。それがプロなんだと思いました。

自分って情けねぇなと。青木さんが言ってた『お前が受けた仕事だから』が出場した理由の全てです。勝ち負けじゃない。膝が痛くて負けても恥をかけばいい。それも仕事だと思うようになりました」

もしこうなったらどうしよう。これまでの2戦は負けへの怖さが大きかった。今回は左膝の内側靭帯を損傷しながら臨んだ試合。。組み技の練習は1度もできず、蹴ることもままならないレベルだった。コンディションは一番悪いはずだった。

「本当に準決勝で負けて悔しかったんですよ。後悔の大きい1か月でした。だからこそ別にここでやられてもいいや。自分から行けば後悔はないなと、それだけは決めてやっていました」

すぐに涙を流してしまう“泣き虫”。この日は思わず笑みがこぼれていた。それでも青木からは「やっぱり向いていない」と一蹴された。自身も「自分はリスクを冒せないタイプ」とそれを認める。見切りがついたのだろうか、ホッとしているようだった。

「これに挑戦してたくさんのことを得られました。格闘技に限らず挑戦の多い人生、気づきの多い人生にしていきたい。そもそも自分は格闘技を辞める、辞めないのレベルじゃないですから。格闘技は好きにやります。でも挑戦することを続けたいです」

現役大学生の中谷が青木を通じて見た格闘家の世界は他とは全く違うものだっただろう。与えられた仕事を最後まで全うすることや自分の弱みに向き合ってきたことはトーナメントの勝ち負け以上に重要なこと。これからどの道へ進んでもこの3か月の経験は生きるに違いない。島田将斗

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