見上愛「奇跡だと思いました」 映画『不死身ラヴァーズ』で主演に!

――テレビドラマへの出演が続く中、今作を拝見して、より役の振り幅が広く、表現力が豊かな役者さんだと思いました。毎回エネルギー高く「好きです!」と言い続けるりのについて、どのような人物と捉えていますか。

ありがとうございます。りのは強いパワーを持った女の子なんですが、ただまっすぐなまま突っ走るのではなくちゃんと傷ついて、苦しんで、という人間くささが見えるのも好きなところです。人力車を引いたりギターを演奏するなど、体力面や練習時間などで結構大変でしたし、1日で中学時代と大学時代のシーンを撮ったこともありましたが、りのが持っているエネルギーに常に引っ張ってもらっている感覚があって。だから撮影中はずっと楽しかったです。それまで私は暗めだったりクールな役を演じることが多かったから、りのみたいなはじけた役を演じてみたかったんです。

――りのはご自身に近いですか?

「好き!」とまっすぐに伝えるような行動はしないけど、基本近いかも。これで共演4度目の青木(柚)さん(親友・田中役)には「見上のまんま!」と言われたんです。その時はピンとこなかったけど、終わってみたら確かにって。

――ネタバレの多い作品であまり掘り下げて書けないのですが、印象的だったのが、りのがアコースティックギターをかき鳴らしながらGO!GO!7188の曲「C7」を熱唱するシーン。エモーショナルでカッコよかったです。

実はこのシーンは急遽追加されたシーンでした。私は昔バンドでギターをやっていたのですが、当時演奏していた曲をいくつか松居監督にお送りして、その中から監督が選びました。あとから聞いて知ったんですが、原作者の高木さんは漫画でそのシーンを描いている時に、GO!GO!7188の「神様のヒマ潰し」を想定していたそうです。曲は違うけど、奇跡だと思いました。

――すごい! みなさんの世界観が一致していたんですね。

本当にびっくり。でもありがたいことだとも思います。

――劇中では、りののカラフルなファッションもまたパワフルさを発揮しています。見上さんは普段、カラフルな服を着ますか?

服そのものも、コーディネートを考えることも大好きなので、いろんなテイストの服を持っていて、日によって違うスタイルをしています。カラフルなものもありますし。そしてこの撮影中は、明るくて派手なりのっぽい服をたくさん着ていました。

――それは役作りのために?

基本的に服を選ぶのに時間がかかるので、その時演じている役のようなコーディネートすることが多いんです。服を選ぶ時の、何か理由が欲しいからなのかも。

――そもそも、俳優ではなく照明の仕事に憧れていたそうですね。

はい。中学生の頃、親に連れられて初めて舞台を観に行った時から観劇にハマって。こんなに大勢の人が同じものを見て、幸せになって帰れるなんてすごい! って。それで初めの頃は、舞台照明の仕事に興味を持つようになりました。そのうち一人で小劇場にも足を運ぶようになり、高校時代は月10本とか観ていました。ただ観劇が好きで、今でもそうですが趣味みたいな感じです。その後演出の仕事に憧れるようになって、大学は演出の勉強ができるコースに進学。そのうち、演出家になるなら演技の勉強も必要だと思い、今の事務所のスクールに通い始めたのが俳優になったきっかけです。

――中学から観劇にハマったとは。自己分析するとどんな性格ですか。

基本的にポジティブな性格だと思います。特に中学時代は超ポジティブで、落ち込んだり怒ったりという感情の波もなく、何事にもイライラもせずに動じない時期があって。当時は周りから「仏のようだ」と言われていたぐらい。それがしばらく続き、2年ぐらい前まではそういう状態でした。でも役を通していろんな考え方や生き方に触れながら自分を解放していくうちに変わっていったというか、人間味が深まってきたのかな(笑)。今はちゃんと、いろんな感情を出せるようになりました。生きやすいのは、以前の私だと思う。感情の波が少ないから傷つきにくいし、うまくこの世の中を渡り歩けるから。でもお芝居をするなら、今の状態のほうが表現の幅も広がっていいと思います。

――なるほど。ちなみに幼少期はどんなお子さんでしたか?

幼稚園や小学生の頃は、無敵であり最強期。小4の時の夢は、総理大臣でしたから(笑)。

――それは無敵ですね(笑)。

怖いものがなかったです。そこから失敗したり傷ついたりを繰り返しながら、どんどん最強じゃなくなっていったけど、でも無敵状態では人の痛みの深いところまではわからないから、やっぱり無敵ではなくなった今のほうがいいと思います。相手の痛みがわかったうえで人に優しくできたほうが、寄り添えている感じがしますから。

――見上さんには、ちょっとミステリアスな印象を持っていました。

よく言われます。だからこの顔に生んでくれた親に、ありがとうって思います。

――ミステリアスなのは顔の雰囲気からだと?

もちろん顔だけじゃないと思うけど、実はそんなに喋るんですね、そんなに笑うんですね、なんて言われることも多いんです。だから見た目とのギャップかなって。

――ミステリアスに思われることも悪くないと思っている、ということでしょうか。

少なくともこの仕事をする場合はプラスだと思っていて。例えば、ひとことセリフを発した時に何を考えているかわからないと思わせることで、表現に生きてくることがあると思うから。

――将来的な目標はありますか?

小・中・高・大そして今といろいろな自分がいたけど、ずっと変わらなかったのは表現するのが好きなこと。お芝居もその表現方法の一つですが、お芝居に限らず、いつか演出をやってみてもいいし、いろんなアプローチで表現し続けられたらいいな、と思っています。例えば、私の親友のおうちに窯があるので私もたまに陶芸をやっているんですが、それも表現の一つ。

――すごく個性的な作品を作っていそうです。

あははは(笑)。家には自分で作った食器とか小物入れ、人間をモチーフにしたコースターなんかもあります。でも見たことあるような食器を作るなら買えばいいと思うんです。そのほうがキレイだし。だからどこにも売っていない、自分が欲しいものを作っています。

――そういう創作力のソースはなんですか?

考えたこともなかったけど…小さい頃から何か創作するのが好きでした。小学生の頃に通っていた塾のノートの表紙に、シールや毛糸、切り抜きをコラージュして、誰よりもデコっていたり。当時から、自分の得意なことや好きなことに対して努力できるような道に進もうとは思っていました。

――見上さんにとってはクリエイティブな時間は必要なんですね。

あとは、リフレッシュする時間も必要です。時間が空いたら友達と一緒に、ドライブがてら長野や山梨に行って、絵を描いたり写真を撮ったりもします。朝日を拝んで、温泉に入ったりも。そうやって自然と触れ合っているとすごくリフレッシュできる感覚があって。家にこもってアニメを見るのも好きな時間ですが、自然の中にいる時も、アニメを見ている時も、一回仕事とかいろんなことを忘れられるんです。それは私にとってすごく必要なこと。なぜなら役に入っている時間が長くなるほど、見上愛として生きる時間が減ってしまうから。本来の自分でいる時間を大事にしていないと、自分が行方不明になっちゃいそうで怖いんですよね。役と自分のバランスをとっているということでもあるのかな。だから意図的にそういう時間を作っているし、それを理解してくれている友達に囲まれて楽しく過ごしています。

――見上さんのこと、2mmぐらいわかってきたかもしれません。

えっ! 私としては100%のうち85%ぐらい喋りましたよ。今までのインタビューの中でも一番ぐらいに…(笑)。

――まだまだ奥深そうだと思って(笑)。でもたくさんお話しいただき嬉しいです。この先やってみたい役はありますか?

今回の映画もそうですが、コメディタッチな作品はまたやってみたいです。それから、学生時代のピュアな感情がまだ残っているうちに学生役をたくさんやっておきたい。あとはいわゆる悪役とかも。最近は正義と悪をはっきり分けるというよりも、悪の裏にある気持ちなどを描く作品も増えているので、ひとことで“悪役”と言うのも難しいんですけど。

――見上さんが演じる悪役、見てみたいです。

やってみたいですが、間抜けになっちゃう気がする…。悪役を演じようとすると、周りからは「動きがダサい」って言われることが多いんです(笑)。でも経験を積んで、悪役でも威厳を持って演じられるような俳優になりたいです。

長谷部りのは中学の時に“運命の人”甲野じゅんに再会。「好き」と告白するが、その瞬間にじゅんは姿を消してしまう。その後じゅんは何度も別人となってりのの前に現れ、そのたびにりのは恋に落ちて全力で想いを伝える。その結末には、奇跡が待っていた…。『不死身ラヴァーズ』は全国ロードショーで公開中。

みかみ・あい 2000年10月26日生まれ、東京都出身。’19年にドラマで俳優デビューし、’21年に映画『衝動』で倉悠貴とW主演を務め、映画初主演を飾る。ドラマ『Re:リベンジ‐欲望の果てに‐』(CX系)に出演中。またNHK大河ドラマ『光る君へ』に、藤原彰子役で出演予定。ドラマ『ゲームの名は誘拐』(WOWOW)は6月9日より放送スタート。

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※『anan』2024年5月22日号より。写真・前田拓也(TRON) スタイリスト・下山さつき ヘア&メイク・豊田健治 インタビュー、文・若山あや

(by anan編集部)

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