没入型体験やナイトツアー、中国の博物館が打ち出す「新体験」

没入型体験やナイトツアー、中国の博物館が打ち出す「新体験」

梁啓超記念館で演劇ショーに参加する観光客。(2023年4月29日撮影、天津=新華社記者/孫凡越)

 【新華社北京5月18日】中国各地の博物館はここ数年、それぞれが持つ特徴を生かして展示内容を充実させ、体験型のコンテンツを増やすことで、人気観光スポットとして一目置かれる存在となっている。

 北京市の国家自然博物館での宿泊体験や天津市にある梁啓超(りょう・けいちょう)記念館のナイトツアーなど、夜間のサービスを打ち出す博物館が増えている。中国のSNSアプリ「小紅書(RED)」で「夜遊博物館(ナイトミュージアム)」と入力すると、関連投稿が6万件余りヒットする。開館時間の延長は、昼間に人気博物館のチケットが手に入らなかった観光客をがっかりさせないだけでなく、博物館の機能を拡張して来場者の満足度を高めることにもつながる。

没入型体験やナイトツアー、中国の博物館が打ち出す「新体験」

中国文字博物館を見学する来場者。(2022年11月16日撮影、鄭州=新華社配信/麻翛然)

 多くの博物館では、より見学を楽しんでもらおうと新技術を積極的に取り入れ、動的な手法で文化財を展示している。河南省安陽市の中国文字博物館では展示ホール内に設置された数多くの電子スクリーンでミニゲームが体験できる。スクリーンに表示された甲骨文をタップすると、対応する甲骨文字の形をした動物がハイライトされ鳴き声を上げる仕掛けになっており、甲骨文について概要を知るだけでなく、字体構造の原理も楽しく学ぶことができる。

 研究者らは科学技術を活用し、歴史上の人物の「復活」にも力を注いでいる。湖北省博物館ではこのほど、孝感市雲夢(うんぼう)県で発見された睡虎地秦墓の主とされる「喜」の3D復元像と墓から出土した人骨の総合的な研究成果を発表したほか、秦代の勤勉な基層官吏の生き生きとしたイメージを再現した。

 インドア派の人向けには、博物館が提供する「360度パノラマツアー」を利用してオンラインで館内を見て回るという選択肢も用意されている。湖南省の長沙博物館は公式サイト上で「バーチャル見学」ができる。マウスをクリックすると古琴のゆったりとした音色が流れ、博物館に「入場」できる。収蔵品について知りたい時は、高画質な大型写真と詳細な説明も閲覧できる。

没入型体験やナイトツアー、中国の博物館が打ち出す「新体験」

長影旧址博物館を見学する観光客。(2018年9月9日撮影、長春=新華社記者/許暢)

 博物館で没入型体験を味わいたいなら、吉林省長春市の長影(長春映画製作所)旧址博物館に行くといい。同博物館では従来の静的な展示形式を一新、館内で映画の登場人物にふんしたスタッフが来場客とコミュニケーションを取る「長影NPC」(NPCはノンプレーヤーキャラクターの略で、ゲームに登場するプレーヤー以外の登場人物を指す)を導入した。浙江省寧波市の中国港口博物館では、見学者は拡張現実(AR)ゴーグルを使って南宋から羅針盤を持った陶俑を「召喚」する。陶俑は自身の来歴を語りつつ、見学者を船に乗せ港の秘密を探る旅へといざなう。

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河南省洛陽市の隋唐洛陽城国家遺跡公園内にある応天門遺跡博物館で演劇ショーに参加する観光客。(2023年8月11日撮影、洛陽=新華社記者/魯鵬)

 博物館での各種体験や写真撮影の他に、ミュージアムグッズの購入も来場者の楽しみの一つだろう。各博物館が制作したオリジナル商品は、いわば最後の「展示ホール」。博物館はグッズを通じて来場者と文化財をつなぎ、古い文化財に新たな活力を与えている。

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ライトアップした江蘇省揚州市の中国大運河博物館。(2021年6月8日、ドローンから、揚州=新華社配信/孟徳竜)

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