旧態依然とした日本映画界に風穴を 日本発の映画製作ファンドがカンヌで会見【第77回カンヌ国際映画祭】

日本映画界に風穴を開けられるか? - K2 Pictures がカンヌで会見

“日本映画の新しい生態系をつくる”ことを目標にした株式会社 K2 Pictures(代表取締役:紀伊宗之)が現地時間18日、第77回カンヌ国際映画祭開催中のフランス・カンヌでプレゼンテーションを行った。紀伊のほか、共に作品製作をしていくクリエイターの代表として三池崇史監督と西川美和監督らも登壇した。

旧態依然とした日本映画界に風穴を開け、世界の市場に向けて展開していくために立ち上げられた K2 Pictures。現在、ほとんどの日本映画は映画会社、テレビ局、出版社などによって構成される製作委員会方式で作られており、国内外の新たな投資家が参入しにくい現状があるほか、クリエイターたちへの利益還元も限られたものになっている。

そこで K2 Pictures では、日本コンテンツに興味がありながら接点を持てなかった国内外の会社が参加しやすいように、弁護士と会計事務所のサポートのもと、海外からの投資も想定した法律・会計基準を持つファンド「K2P Film Fund I(読み:ケーツーピー フィルム ファンド ファースト)」を立ち上げ、クリエイターや制作に関わるスタッフに対する利益還元の仕組みを取り入れる。さらにハラスメントフリーできちんと休暇も取れるといった、労働環境の改善にも取り組む。

三池監督は「映画監督をしていて、日本のスタッフは非常に優秀だなと感じています。今一番大事なのは、現場にいるわれわれが、もう一度子供の頃のような夢を見ること。観る人を幸せにしながら、作っている人たちも幸せになるべきじゃないか、という紀伊さんの考え方に全面的に賛同します。それで現在、いろんな企画を検討、動かしているところです」と明かす。

西川監督はキャリアを重ねるにつれて日本の映画界の行き詰まりを強く感じるようになり、あえて大きな予算のかかる“絶対に既存の映画会社が出したくないような企画”を書いていたところ、K2 Pictures が「やりましょう」とそれに応えた。「不思議な会社だなと思って説明を聞きましたら、日本映画の仕組みを大きく変える非常に挑戦的なことを考えられていて頼もしく思いましたし、ぜひその船に乗ってみたいなと思いました。三池監督のようなキャリアのある監督だけでなく、新しい企画を考えている日本の若い監督にもチャレンジさせることを考えており、十分な予算とよい環境で撮らせるということを目指しているところにもとても共感しました。本当に新しい試みなので、日本映画界に激震が走るのではないかなとわたしも期待しています」と期待をかけた。

そのビジョンに賛同してパートナーとなったのは、三池監督と西川監督のみならず、岩井俊二監督、是枝裕和監督、白石和彌監督、そして「呪術廻戦」「チェンソーマン」など海外でも人気の高いアニメーション制作を行う株式会社MAPPAだ。K2 Pictures は彼らとともに、世界市場を目指した映画製作を進めていくことになる。

紀伊は「監督方に話しを持ち掛けた時、『おまえの振興会社となんかやってられるか』と言われるかもしれないと思っていたのですが、本当に皆さん歓迎してくれて、それくらい今の日本の映画の製作環境って悪いのだな、と今までのことを反省しました。それを改善していこうということに、賛同いただいているのだと思っています。謙虚にこれから闘っていこうと思っています」とコメント。

「日本映画界の弱点は、保守的で、閉鎖的で、意思決定がめちゃくちゃ遅いこと。それは映画界に限らず日本の産業全部そうなのかもしれませんが、そこを改善したいと思っています。戦略的であるためには、クイックな意思決定が必要。少ない人数で、思い切って意思決定していくことが必要だと思います」と展望を語っていた。(編集部・市川遥)

第77回カンヌ国際映画祭は現地時間5月25日まで開催

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