無観客でも「かっちゃ」熱く 伏木曳山祭、復興願い迫力の激突 

「かっちゃ」で提灯を揺らして激しくぶつかり合う山車=18日午後8時、高岡市伏木本町

  ●バリケードに密集

 「けんか山」で知られる伏木神社の春季例大祭「伏木曳山祭(ひきやままつり)」は18日、高岡市伏木地区で行われ、山車(やま)が巡行した。能登半島地震で甚大な被害を受け、今年は復興をテーマに実現にこぎ着けた。提灯山車(ちょうちんやま)がぶつかる目玉の「かっちゃ」は無観客を強いられたものの、住民は入場を規制するバリケードの前に集まり、衝撃音に耳を傾けながら復興の思いを新たにした。

 総代の笛を合図に、約360個の提灯をつけた重さ約8トンの山車4基がぶつかり合うと、「ドーン」という衝撃音が響いた。曳き子の威勢の良い掛け声とともに、祭りの熱気は最高潮に達した。

 本町で曳き子を指示する拍子木頭を務める川端将大さん(26)は「自分が目いっぱい楽しむことで元気を届けられたと思う」と振り返った。

  ●「山車が出て行われるだけでうれしい」

 祭りの実行委員会は会場にバリケードを設け、ケーブルテレビの生中継での観覧を呼び掛けた。それでも祭りの呼び物を一目見ようと人波が押し寄せた。伏木駅近くの実家から訪れた川上朱美さん(50)=富山市=は「毎年間近で見ているので寂しいけど、山車が出て、かっちゃが行われるだけでもうれしい。祭りがあるから親族が実家に集まる」と目を細めた。

 伏木地区は道路の損傷や電柱の沈下など地震の被害が大きく、実行委は協議を重ね、例年の4分の1の規模に縮小して祭りを開催することを決めた。

 「かっちゃ」は安全面を考慮し、会場を伏木本町の山倉前の県道に移した。七つの山町のうち、石坂(いっさか)町と寳路(ほろ)町は地震の影響でぶつかり合いの回避を余儀なくされた。

  ●「足掛かりに」

 伏木本町の山倉前で巡行の出発式が行われ、実行委の針山健史会長は「復興の足掛かりとしてとらえたい」と今年の祭りに寄せる思いを伝えた。全国山・鉾・屋台保存連合会長の橘慶一郎衆院議員、佐藤一絵副知事、角田悠紀市長があいさつした。

 脇田歩総々代の出発宣言で、花傘(はながさ)を広げた花山車5基が伏木本町を中心に練った。寳路町は花山車を山倉前に展示し、若衆が太鼓と標旗をのせた台車を引いて巡行に参加した。伏木コミュニティセンターの山倉から出発した十七軒町(じゅうしちけんちょう)は伏木湊町などを巡った。

 祭りは市無形民俗文化財に指定されている。

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