乃木坂46が向かう新フェーズ Mrs. GREEN APPLE、サンボマスター……対バンライブで広げる可能性

乃木坂46が、5月21日に横浜アリーナで開催されるMrs. GREEN APPLE主催の対バンライブ『Mrs. TAIBAN LIVE 2024』に出演する。

乃木坂46が対バンライブに出演するのは、3月30日にさいたまスーパーアリーナで行われたサンボマスターとの『風とロック さいしょでさいごのスーパーアリーナ “FURUSATO”』以来2度目。そこでキャプテンの梅澤美波は、3期生、4期生、5期生のみの現体制の乃木坂46が対バンライブに出演するのは今回が初めてと話していた(2014年に1期生が出演する『乃木坂46 vs 氣志團 ~学生服反逆同盟~』があった)。つまり、グループはこの2カ月という短い期間のなかで立て続けに対バンライブに出演することとなる。

そもそもアイドルイベントにおいても、ライブ用語として「対バン」という言葉が使われるようになった現在に、どこまでを対バンライブとするのかは非常に曖昧であるが、乃木坂46側からすれば「バンドを相手にしたライブ」ということで言えば、間違いなく新たなフェーズに入っていると言える。

筆者が実際に現地で観た『風とロック』での光景は、普段のコンサートと比べると異様な盛り上がりであった。コロナ禍以降、オンライン配信が当たり前になってい乃木坂46のコンサートだが、『風とロック』はライブ配信なし。筆者はその日の夜公演のMAN WITH A MISSION、BRAHMAN、ACIDMANの“スリーマン”も観るため、1日通しで楽しむことができるゴールドチケットを購入。開演10分前でもアリーナスタンディングエリアのかなり前方で観ることができるのは、乃木坂46のコンサートではなかなか考えられないことである。

先攻は乃木坂46。スタンド席はペンライトを持ったファンで埋め尽くされ、筆者個人の感覚ではあるが来場した過半数が乃木坂46を目的に足を運んだと思われる。この日は3期生、4期生のみの出演ということで4期生楽曲、3期生楽曲のブロックを挟みながら、「ガールズルール」「インフルエンサー」「シンクロニシティ」といったグループの代表曲を皮切りに、新曲の「チャンスは平等」、「ごめんねFingers crossed」「好きというのはロックだぜ!」という“ロック締め”のセトリ構成となった。ワンマンライブと見間違えるような盛り上がりであったが、ユニークだったのが多くの拳が上がっていたことだ。それはサンボマスターのような、いわゆるロックバンドでのノリ方。筆者の目の前にはTHE BACK HORNのライブTシャツを着たファンが腕を挙げており、そのバックプリントを見つめながら、こんな光景は二度と見られないだろうなと感じたのだった。

後攻のサンボマスターは、言ってしまえばアウェイな客層。それでも「ミラクルをキミとおこしたいんです」「ヒューマニティ!」「青春狂騒曲」「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」といった新旧のヒット曲と山口隆の情熱迸るMCで“伝説”のライブを作り出していく。逆にサンボマスターのライブでペンライトが揺れているというのも滅多に見ることのできない光景だろう。そのまま主催者・箭内道彦の呼び込みでサンボマスター×乃木坂46のコラボレーションに突入。サンボマスターの「できっこないを やらなくちゃ」を乃木坂46のメンバーが歌い、踊った。箭内が岩本蓮加と田村真佑にインタビューした、フリーペーパー『風とロック 114号』では「アイドルとロックって交わることのない、ものというか。そういうのがぶつかるっていうのが、ちょっと不思議な感覚」(岩本)、「交わらないもの同士が、合わさるっていうのが、いまからすごく楽しみですね」(田村)とそれぞれ話していたが、想定以上のサンボとの化学変化が起こる結果となった。ちなみに、コラボステージの途中には山口が『ラヴィット!』(TBS系)シーズンレギュラーを務めていた弓木奈於の首にギターをかけるという一幕もあった。

そんな『風とロック』を経て出演となる『Mrs. TAIBAN LIVE 2024』には、35thシングル『チャンスは平等』の選抜メンバーが出演。山下美月の卒業後、初めてのライブという貴重なステージでもある。あくまでミセス主催のライブではあるが、乃木坂46のモバイル会員向けの先行チケット抽選も行われていたため、双方のファンが楽しめる客席の比率になるのではないだろうか。

今回の対バンライブに先駆けて、大森元貴(Vo/Gt)が4月29日深夜放送の『超・乃木坂スター誕生!』(日本テレビ系)に出演。中西アルノ、川﨑桜、奥田いろは、五百城茉央とMrs. GREEN APPLEの「春愁」をコラボ歌唱している。「春愁」は大森が高校の卒業式翌日、当時18歳の時に書いた楽曲。奥田、五百城はこの春に高校を卒業したばかりのメンバーであり、当時「春愁」を聴いて「変われた自分がいました」と涙する冨里奈央に、大森は「当時の自分も救われるというか、報われるというか。(『春愁』が)誰かのもとに届いて、そういう音楽の作用があるというのを僕も感じられて嬉しいです」と笑みを浮かべていた。

大森が同番組への出演を決めたのは、5期生メンバーがMrs. GREEN APPLEの楽曲を番組で歌っているのを目にしたからだという。5期生は「点描の唄 (feat. 井上苑子)」をはじめ、「青と夏」、「ダンスホール」、そしてオンエアでは大森が見ているなかで「ケセラセラ」と数多くのMrs. GREEN APPLEの楽曲を歌唱してきた。収録の裏側に密着した『超・乃木坂スター誕生! 5期生の挑戦』(Hulu)では、5期生が歌う「ケセラセラ」を観て、彼女たちには「ふわふわしたイメージ」があったが、「内なる熱いものを感じて。歌とかこの道に対する譲れないものがあるんだろうな。歌に真摯という意味で“芯”や“熱いもの”を感じました」と大森はコメントしている。

どのような形で、どの楽曲が歌われるかはわからないが、『Mrs. TAIBAN LIVE 2024』でMrs. GREEN APPLE×乃木坂46のコラボステージが実現する可能性は大きい。乃木坂46にとっては、大森が「ケセラセラ」での歌唱に「おお!」と驚いていたように、Mrs. GREEN APPLEファンの心を掴むことが対バンライブに出る大きなチャンスと言える。そして、ほかの坂道グループが先立って進出しているロックフェスへの出演など、乃木坂46にとっての未知の領域に挑むことがさらに間口を広めていくことにも繋がっていくだろう。

(文=渡辺彰浩)

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