「後世に語り継がれるスーパーアシスト」久保建英の超絶プレーに番記者も感嘆!「脅威になり続け、ファンは拍手で称えた」【現地発】

サッカーには後世に語り継がれる瞬間がある。それはゴールであったり、セーブであったり、プレーであったりする。

バレンシア戦で、それをやってのけたのがタケ・クボ(久保建英)だ。レアル・ソシエダが5年連続の欧州カップ戦進出を確定させるスーパーアシストだった。

ロマン・ヤレムチュクのシュートがオフサイドで取り消された直後の開始3分だった。アンデル・バレネチェアが左サイドからゴール前へクロスを供給すると、ファーポストに全速力で走り込んだのがタケだった。

ボールは少し長くなり、そのままゴールラインを割るかと思われたその瞬間、滑り込みながら左足アウトサイドを使って折り返すと、相手の巨漢GK、ギオルギ・ママルダシュヴィリの上空で一瞬、時間が止まったかのような錯覚を起こさせる完璧な放物線を描いた。アンドレ・シウバは押し込むだけでよく、ソシエダが幸先よく先制。そのまま逃げ切った。

【動画】久保の超絶アシスト!スライディングしながら巧みに折り返す
この一戦で、注目を集めたのが、タケとバレネチェアが久しぶりにスタメン揃い踏みを果たしたことだ。前日の記者会見で、タケとバレネチェアの最近のパフォーマンスの低下について聞かれたイマノル・アルグアシル監督は次のように答えている。

「今のラ・レアルには『しかし』をつけることができる選手は1人もいない。私は、1人1人がどう感じ、どう過ごしているか、そして対戦相手のプレースタイルも考慮して判断を下し、その中でタケとアンデルをスタメンから外した。2人とも準備は万端だ。これまで重要な存在としてチームを引っ張ってくれたし、シーズン終了まで同様の働きを見せてくれるのを確信している」

前節のバルセロナ戦でも2人はスタメンを外れた。タケにとってはかつての古巣との一戦でもあったが、70分まで出番が回ってこなかった。スコアは0-1と1点ビハインド。劣勢の流れを変えることを期待されての投入だった。しかし何本かクロスを入れるも得点には繋がらず、逆にソシエダは終了間際にPKから追加点を奪われ、0-2で敗れた。

そんななか、アルグアシル監督は中2日で行われたバレンシア戦では、一転して2本の「ナイフ」に賭け、そしてタケは勝利を呼び込む働きを見せた。右サイドで縦関係を築いたアルバロ・オドリオゾラとの連携不足が目についたのも確かだし、スタンドプレーに走る場面もあった。

しかし、そうした積極果敢に仕掛けるプレーがタケの代名詞でもある。先制した後も、呼吸が合わなかったが、何本かクロスを入れて相手を驚かせた。

バレンシアの反則すれすれの荒っぽい守備はその表れで、59分には、右サイド深い位置からのフリーキックで、正確なボールをピンポイントで配給。ファーサイドで待ち構えていたバレネチェアが頭で合わせるも、枠を捉えきれず、ボールは左のサイドネットを揺らした。

その後も厳しいマークに遭い、危険なゾーンに顔を出す場面は限られたが、相手守備陣の脅威になり続け、ファンは拍手でその働きを称えた。

ただ来シーズンの欧州カップ戦の出場権を獲得してもソシエダのシーズンはまだ終わっていない。市場の注目銘柄となっている主力が引き留めるための方程式があるとすれば、それは欧州でプレーし続けることだが、その訴求力がヨーロッパカンファレンスリーグ(ECL)よりもヨーロッパリーグ(EL)のほうが高いのは言うまでもない。

そして次節、敵地に乗り込んで、EL出場権を争うベティスとの直接対決に挑む。マジシャンがシルクハットからウサギを取り出すように、タケは繊細なボールタッチから繰り出した左足キックで貴重な勝点3を手繰り寄せた。

このシーズン終盤、調子を落としているといっても、ソシエダの重要な武器であり続けていることを示した。バレンシアはそのことを肌で知り、ベティスも強い警戒心を持って臨んでくるはずだ。

取材・文●ミケル・レカルデ(ノティシアス・デ・ギプスコア)
翻訳●下村正幸

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