全員10代、経験者ゼロに「怖い。でも楽しみ」 体操女子・五輪代表5人に強化本部長が向けた本音

優勝カップを手に表彰台から降りる宮田笙子【写真:中戸川知世】

NHK杯で体操女子のパリ五輪代表が決定

パリ五輪体操女子の日本代表メンバー5人が決まった。最終選考会を兼ねたNHK杯が18日、群馬・高崎アリーナで行われ、3連覇を果たした宮田笙子(19=順大)ら4月の全日本選手権との合計得点上位4人が個人総合枠で代表入り。5人目には跳馬で高得点を並べた牛奥小羽(19=日体大)がチーム貢献度から選出された。全員が10代で、いずれも五輪初出場。フレッシュな選手たちが、団体で64年東京五輪以来のメダル獲得を目指す。

「ちょっと、怖いですね。でも、楽しみでもあります」。日本体操協会の田中光女子強化本部長は、本音を口にした。19歳から16歳までの5人全員が五輪初体験。「やっぱり特別な場ですから、経験者がいないのは不安もあります。ただ、若いだけに当たれば大きい。伸びしろに期待しています」と話した。

体操の団体は、選手を入れ替えながら五輪に臨んできた。21年東京の村上茉愛、16年リオデジャネイロの寺本明日香、12年ロンドンの鶴見虹子、チームの中心には常に前回大会の経験者がいた。しかし、今回は3大会連続出場を狙った杉原愛子が落選。東京五輪平均台6位でチーム貢献度での代表入りを目指した芦川うららも届かず、五輪経験者がゼロのチームになった。

56年メルボルン大会から女子団体に出場する日本にとって、歴史的にも異例のメンバー構成になった。これまで前回五輪の経験者0で団体戦に出場したのは平均年齢16.3歳で6位になった84年ロサンゼルス大会だけ。過去の団体戦には常に20代の選手がいたから、10代の選手だけで団体に出場すれば初の挑戦となる。

だからこそ、エースとして宮田の意識は高い。4月の全日本選手権でトップに立ち、NHK杯の1日目で五輪代表を確実にすると「今日は団体決勝のつもりで臨んだ。自分のこと以上にチームを意識して演技した」と話した。股関節の痛みで満足な演技はできなかったが、最高のパフォーマンスは「パリにとっておく」と言いきった。

全員が10代、パリ五輪開幕時の平均年齢は17.8歳になる【写真:中戸川知世】

平均年齢17.8歳でパリ五輪開幕…19歳で最年長の宮田「お姉さんのように」

19歳ながら、牛奥と並んでチーム最年長。田中強化本部長も宮田をキャプテンに指名することを示唆した。シニアになって間がなく、まだ交流のない選手もいるが「まずはコミュニケーションをとって。お姉さんのように、若手からついていきたいと思ってもらえるようにしたい」。初の五輪を前に自信をのぞかせた。

目指すのは、団体でのメダル獲得。16年リオは4位、21年東京は5位と僅差で逃しているだけに「団体メダルを第一に考えたい」と宮田。「五輪はリオで知った」という他の選手たちも口々に「団体のメダル」をパリでの目標に掲げた。

米国が頭ひとつ抜けている女子の団体は「英国、イタリア、中国、フランスときて、日本が続く状態」と田中本部長。「大会本番と同じような状況を作って練習するなど、工夫しながら本番を迎えたい」と秘策を明かし、経験者の杉原を補欠としてチームに帯同することで「いろいろと伝えてほしい」とも期待した。

平均年齢17.8歳(開幕時)で臨むパリ五輪。全員が初出場で五輪経験値こそ少ないが「当たれば」一気に勢いに乗る期待感もある。6人中経験者4人をそろえ、平均年齢26.0歳の「大人のチーム」で地元の期待に応えた東京五輪以来60年ぶりのメダル獲得へ、フレッシュな女子団体チームが悲願へ挑む。

▼パリ五輪体操女子代表

宮田笙子(19=順大)
岸 里奈(16=戸田市SC、クラーク)
岡村 真(18=相好体操クラブ、四日市大)
中村遥香(16=なんば体操クラブ、相愛学園)
牛奥小羽(19=日体大)

荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima

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