【10年ひと昔の新車】アウディ S6/S7は、ハイテク満載の新型V8エンジンを搭載した

「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、アウディ S6/S7だ。

アウディ S6/S7(2012年:4代目フルモデルチェンジ)

S6セダンはベース車のA6セダンからフロントグリル下にエアインテークが追加されているが、ドレスアップは控えめだ。

昨年(編集部註2011年)のフランクフルト モーターショーでワールドプレミアされたアウディ S6/S7。S6は4代目、S7は初代となる。日本導入は今夏(編集部註:2012年夏)と噂されているが、本国ドイツで試乗する機会を得た。新しいV8エンジンは気筒休止システムやアクティブエンジンマウントなど、さまざまなハイテクを満載して登場した。

アウディにはスポーツモデルのラインアップが2種類ある。まず「S」モデルはアウディAGに、そして「RS」はクワトロGmbHによるスポーティネスの提案だ。今回、S6とS7が同時にフルモデルチェンジするにあたって、アウディAGが選んだのは、Sモデルに「大人のスポーツサルーン」という性格を与えることだった。

正直なところ、はじめは拍子抜けした。見た目は大人のサルーンでも、ひとたび走りだせば、バカ速っ!というのがアウディのSモデルの定石だったのに、新しいS6はあまりにも大人っぽく、洗練された乗り味だったからだ。見た目の印象も、あくまで控えめだ。フロントグリルの下にある追加のエアインテークやアルミ調のミラーなどで控えめにドレスアップしているだけで、ベースとなっているA6から大きく変わってはいない。

とはいえ、まずは乗ってみることにしよう。アウトバーンにのって速度を上げていくと、町中では軽かったステアフィールが頼もしい重量感を得て、豊かなインフォメーションを伝える。気筒休止機構を備えた新しいV8ユニットを新採用し、高速道路を一定の速度で流すようなシーンでは半分の気筒を休止するというが、普通に走っている分には気筒を休止していることには気づきにくく、しかも十分に力強い。

低負荷時は各バンクで2気筒ずつを休止してV4状態となる4LのV8 DOHCターボ。ルックスも重視されている。

見た目はおとなしいが、スロットルを踏み込むと・・・

S6にはワゴンのS6アバントも設定。車重はセダンより40kg重いとはいえ、V8ツインターボのパワーは十分以上。

ところが、ミュンヘンから郊外に向かうアウトバーンにのって車速を上げ始めた途端、S6は大人の仮面を脱ぎ捨てた。床までスロットルを踏みこむと、待っていたかのようにすべてのシリンダーが目を覚ます。車速の高まりとともにエキゾーストノートが高鳴り、圧倒的なトルクを発揮して加速する。

ただし、従来型のS6が轟かせたワイルドな咆哮とは異なり、V8エンジンが奏でる力強いハーモニーとともに滑らかに、リミッターの作動する250km/hまで加速していく。この走りの印象は、セダンのS6はもちろん、ワゴンのS6アバントや5ドアクーペのS7スポーツバックでも、変わることはなかった。

しかも、静粛性に関しては先代までとは比べ物にならないい。V8のうち4気筒を休止すると、本来はガタガタ・ブルブルと振動が出てたまらないはずなのだが・・・。じつは、アクティブノイズコントロールやアクティブエンジンマウントといったノイズや振動を軽減する装置を満載し、あくまで「大人のスポーツサルーン」としての性格を貫いているのだ。

その背景には、世界中に広がる環境志向がある。今回、「オート/コンフォート/ダイナミック」に加えて、「エフィシェンシー」なるモードが加わったのも、そうした影響だろう。アウディはスポーティネスを追求しながらも、環境性能の面でもリードしてインテリジェンスを感じさせる存在であろうとしている。そうした変化は、Sモデルが単なるスポーツではなく、アウディのトップカテゴリーだと思えば、十分に理解できるのだった。

こちらは5ドア クーペのS7スポーツバック。パワースペックはS6と同じで、走りの印象も基本的に変わらない。

●全長×全幅×全高:4930×1875×1445mm
●ホイールベース:2910mm
●車両重量:2020kg
●エンジン:V8 DOHCターボ
●総排気量:3992cc
●最高出力:309kW(420ps)/5500ー6400rpm
●最大トルク:550Nm(56.1㎏m)/1400-5200rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:フロント縦置き4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・75L
●JC08モード燃費:9.6km/L
●タイヤサイズ:255/35R20
●当時の車両価格(税込):1180万円

© 株式会社モーターマガジン社