能登地震で被害 珠洲焼支援を 岡山出身作家ら、倉敷で作品展

「地元で支援の輪を広げたい」と話す三ノ上さん

 灰黒色の重厚感あるつぼ、土の風合いを生かした茶わんや角皿…。1月の能登半島地震で窯の崩落など壊滅的な被害を受けた石川県能登地方の珠洲焼作家の作品を集めたチャリティー展が、倉敷市中央の新渓園で24日まで開かれている。自身も窯を失った岡山市出身の珠洲焼造形作家・三ノ上暁さん(70)=金沢市=が企画。「地元の人に珠洲焼に触れてもらい、支援の輪を広げたい」と来場を呼びかけている。

 三ノ上さんら4人が被害を免れた計100点を出品。ざらざらとした手触りが特徴の茶わんや水指といった茶道具をはじめ、普段使いのカップや飯わん、菓子皿、舟形の花器や花の模様が描かれたつぼなどが並ぶ。三ノ上さんは地震で割れた作品を再生し「震災」と名付けたオブジェも披露している。

 珠洲焼は平安末期から石川県珠洲市を中心に生産された伝統工芸品。備前焼と同様、須恵器がルーツとされ、釉薬(ゆうやく)を使わずに焼き締める。室町後期に一時途絶えたが、1970年代後半に市などにより復興し、現在は約50人が手がける。

 最大震度7を観測した地震により同市では多くの窯元が被災した。三ノ上さんは昨年11月に完成し、今年1月下旬に初窯を予定していたれんが造りの薪(まき)窯が崩れ「見た瞬間、絶望した」と振り返る。他の出品者も工房が津波に襲われてほとんどの作品が流されたり、昨年5月の地震から復旧したばかりの窯が壊れたりした。

 余震への不安などから現在もほとんどが創作を再開できておらず、廃業を考える人もいる中、三ノ上さんが再起への一歩を踏み出そうと仲間に声をかけ、チャリティー展開催にこぎ着けた。作品は全て展示販売し、経費を除いた売り上げ全額を作家に届ける。

 三ノ上さんは「珠洲焼を手に取ってもらい、素朴な美しさを知ってほしい。皆さんの関心が、作家の背中を押してくれるはず」と話している。

 午前10時~午後6時。入場無料。募金箱も設置し、浄財は珠洲焼作家でつくる団体「創炎会」に寄付する。問い合わせは三ノ上さん(080―5852―7763)。

三ノ上さんが地震で割れた作品を再生したオブジェ「震災」
地震により崩落した三ノ上さんの薪窯=1月2日、石川県珠洲市

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