コワモテフェイスとピンクのスーツでうさんくささを漂わせつつ、ネタが始まるとウソしかつかない「架空漫談」で観客を惹（ひ）き込む、『Ｒ―１グランプリ２０２４』の王者・街裏ぴんくさん。ここにいたるまでの２０年あまり、なにがあっても、お笑いのことだけを考えてきた。ついに実を結んだ、街裏さんのＴＨＥ ＣＨＡＮＧＥとは。【第４回／全５回】
大阪の大学在学中にコンビを組み、２００７年からフリーで活動していた街裏ぴんくさん。２０１２年に上京した際、「タイタンに入ろう」と決意したのだという。
「雑誌のインタビューに太田光代社長のインタビューが載っていて。タイタンの若手芸人について答えているという内容でした。当時タイタンには、爆笑問題のほかに、ウエストランド、日本エレキテル連合、ツインタワー、瞬間メタルと、ほか数組という小規模で。
“所属芸人全員を全力で好きでやっている”“月１回の事務所ライブにしても仕事だと思ってやらせたいから、ちゃんとギャランティーを渡している”と光代社長が答えていたのに感銘（かんめい）を受けたんです。タイタンって小規模なのに活躍密度が高くて、光代社長のすごさやろうな、と思いました」
事務所に入ることはかなわなかったが、芸人を続けていれば交わる日が来る。２０１７年、爆笑問題のラジオ『爆笑問題カーボーイ』（ＴＢＳラジオ）からオファーがあり、出演することとなったのだ。
「そこで名前と芸を覚えていただいて。その後、２０２３年７月から『虚史平成』（ＴＢＳ Ｐｏｄｃａｓｔ）というネットラジオ番組が始まったんですが、収録の日に局内の喫煙所で、太田（光）さんにたまたま会ったんです。それから番組を聴いてくださるようになって、そうしたら８月にまた『カーボーイ』に呼んでもらったんです」
爆笑問題のラジオへの出演が奇跡の活躍の始まり
太田さんは番組で「おまえ、モーニング娘。の初期メンバーになる予定だったんだよな」と振り、街裏さんの世界観に全力で乗り話を進めた。
「勝手にゴールまで届けてくれるんです。途中で田中（裕二）さんが“ウソはもういいよ！”と根本を覆すようなツッコミをしてくださって。本当にありがたくて。太田さんの“こいつの芸をリスナーにわからせるんだ”という気概を感じて、衝撃を受けました。そしてその日に爆笑問題のマネージャーさんから、“タイタンライブに出てくれませんか”と言っていただいたんです。めっちゃうれしかったですね」
２０２３年８月２５日、全国の映画館２５館で同時生中継されたことでも話題となった「タイタンライブ」に出演したことは「大きな転機のひとつ」と話す。
「なにせ、芸人を辞めようと思って嫁に言ったら、“バイトが続かないやつが一般社会で働けるわけがない。一般社会をナメるな。なんとしてでも芸人の世界にしがみついて、稼いできてくれ！”と返されたのが２０２２年で、“２０２３年、本気でやります”と伝えていた年でしたからね。
嫁のひと言があって、意識が変わって、仕事が増えてきて──という矢先のタイタンライブだったんです。風が吹いてきたかもしれへん、と思っていたときに、２０２３年１１月にはＲ―１グランプリの芸歴撤廃が発表されて。勢いを感じていました」
ちなみに太田さんは、『太田 石井のデララバ』（ＣＢＣテレビ）の公式ＹｏｕＴｕｂｅチャンネルの３月８投稿動画「Ｒ―１グランプリ優勝予想」で、石井亮次アナに「単勝１番」を問われると「街裏ぴんくじゃないかな～」と予想。さらに「２番手対抗」にはルシファー吉岡さん。そして、「三連単でいくと？」と問われると「吉住」と見事に最終決戦の３人を言い当てていたのだ。
「全部当ててたんですよ！ とんでもないなと思いましたね。それでめっちゃ背中を押されました。そこまで応援してくださっているんだ、というのがうれしかったです」
ぶれずに続けていればかなうことがあるのだと、思わずにはいられなかった。
街裏ピンク（まちうら・ぴんく）
１９８５年２月６日生まれ、大阪府出身。学生時代に漫才コンビを組んだのち、２００７年からピン芸人として活動。２０１７年８月『ＪＵＮＫ爆笑問題カーボーイ』（ＴＢＳラジオ）の第二回地下芸人まつりで優勝。２０２２年２月、『Ｂｅ―１グランプリ』で優勝し、芸歴制限が撤廃となった『第２２回Ｒ―１グランプリ２０２４』（フジテレビ系）で優勝を果たした。５月に東京と大阪にて第十七回 街裏ぴんく漫談独演会「一人」を開催。
■公演情報
澤部渡（スカート）×街裏ぴんく『ＶＡＬＥＴＵＤＯ ＱＵＡＴＲＯ ２０２４』
・名古屋公演：名古屋クラブクアトロにて７月２４日（水）１９時開演
・大阪公演：梅田クラブクアトロにて７月２３日（火）１９時開演
・東京公演：渋谷クラブクアトロにて８月５日（月）１９時開演
チケットは５月１１日（土）より各チケットプレイガイドで一般発売開始
前売４，５００円（１ドリンク要オーダー）
