「能登の思い背負って」地震で被災した道場の子どもたちと練習重ねた日々 石川の柔道少年が全国の舞台に挑む

今月5日、東京で開かれた全国少年柔道大会に石川代表として羽咋市の子どもたちが出場しました。能登のライバルたちの思いを背負い、全国の強敵に挑んだ戦いぶりを取材しました。

戦いの舞台は講道館 抱く特別な思い

柔道の聖地、東京・講道館。今月5日、各都道府県を代表する48の少年柔道チームが集まり、日本一を決める全国大会が開かれました。

石川の代表として出場したのは羽咋市の「邑知少年柔道教室」
大会には特別な思いを持って臨んでいました。

「毎日のように一緒に練習を」震災以降 様子の変わった道場

「イチ!ニー!サン!シー!」

威勢の良い打ち込みのかけ声が飛び交う道場。今年で50周年を迎えた教室は、3月に石川県予選で優勝し、初の全国少年柔道大会への切符を手にしました。

道場には「志賀町」や「輪島」と書かれた道着を着ている子の姿も。

邑知少年柔道教室 若狭雄介監督
輪島、七尾、志賀町の子たちは武道館が使えない、練習場所がないということで。1月後半からぜひこっちきて一緒に練習してくださいと声掛けした。そこから毎日のように一緒に練習させていただいている

元日の地震以降、教室では練習場所を失った能登のチームを受け入れ、一緒に稽古を行っています。

道場へと続く道が土砂崩れで寸断された輪島市の柔道教室も、数時間かけて羽咋市まで練習に訪れていました。

輪島柔道教室 井筒庸充監督
「輪島、珠洲からも来ている子がいるが、だいたい2時間かけて来ている。この場に集まればみんな笑顔で柔道しているので、指導者としてとてもこの上ない、嬉しい気持ちでいっぱいです」

「能登の思いを背負って」同じ道場で共に過ごした日々

かつてのライバルと共に練習に打ち込んだ日々。全国大会に出場するメンバーは、今回の試合に特別なテーマを掲げました。

キャプテン 松浦祐樹さん(6年生)
「僕たちのテーマは『今この一本に能登の思いを乗せて』やっぱり能登の思いを背負って戦って来れたら」

大会の1週間前、練習終わりにあるサプライズがりました。

「いつもありがとうございます、全国大会、頑張ってください」

輪島と志賀町のチームから手渡されたのはメッセージボード。練習を共にしてきたことへの感謝の気持ちや、大会への応援の言葉が記されていました。

「能登ー!オー!」

全員で声を出し練習を締めくくります。
能登のライバルたちの思いを背負い挑んだ全国の舞台、結果は…。

「目指すは日本一」迎えた大会当日 予選の結果は

東京で行われた全国少年柔道大会。邑知少年柔道教室は、予選は沖縄と徳島の代表と同じグループ、総当たり戦で1位になれば、決勝トーナメントへと進むことができます。

試合に出場する実力派ぞろいの団体メンバーの中でも、県内の小学生でナンバーワンの実力者、キャプテン・松浦さんが大将に控えます。

キャプテン 松浦祐樹さん(6年生)
「チームとして声出しの日本一になって、そのあとは試合で日本一。どっちも日本一になれたら」

初戦の相手は沖縄代表、糸満警察署少年柔道クラブ。

「能登ー!オー!」

能登への思いを声に出し、試合に臨みます。

先鋒は5年生の吉野さん。背負い投げをこらえようとした相手の隙を上手くつき、技ありで勝利をもぎとります。

続く次鋒・酒井さんも果敢に相手に攻め込みますが、態勢が崩れた一瞬を狙われ、惜しくも抑え込みで一本負け。中堅・山本さんも、相手の内股で一本負けを喫し、チームは後がない状況へと追い込まれます。

ピンチで迎えた副将戦。積極的につかんだ奥襟で、組み手を有利に進める岡本さん。大外刈りで一本、決着は大将戦にもつれ込みました。

大将の松浦さんは…。開始わずか7秒、鮮やかな大内刈りで見事一本勝ちを収め、
3勝2敗、チームは白星を飾りました。

続く徳島代表との一戦も、勢いに乗って勝利。初出場ながら、決勝トーナメントまで駒を進めました。

若狭監督
「雰囲気的には県予選と似ている、来てるぞ自信もって」
選手たち「はい!」

トーナメント1回戦の相手は兵庫県代表。優勝候補の一角です。

重要な一戦、ポイントゲッターの先鋒、吉野さんですが…相手の激しい猛攻を受けに回ってしまい、抑え込まれ一本負け。

続く、次鋒戦・中堅戦も立て続けに敗北を許し、大将戦で一勝を取り返すも、チームはベスト16で快進撃もここまで。

若狭監督
「もう一声というところがあるが、まあ実力通り。(ベスト16は)震災明けから一緒に練習してもらった能登のチームのみなさんのおかげ、本当にそう、それがなかったらこういう結果、全国大会にも来れていないと思うし、みなさんのおかげ」

最後は悔しさの滲む結果となりましたが、能登のライバルたちに伝えたい思いがありました。

岡本岬大さん
「予選突破できたことを伝えるし、次は3位以上になると願って。能登のおかげで勝ち取れたことを伝えたい」
松浦祐樹さん
「自信満々に答えたいが、ベスト16だったので、ちょっと謝るみたいな感じで伝えたいと思う」

全国の舞台で見せた能登の意地。仲間の思いを背負い地元を勇気づける一本を届けてくれました。

© MRO北陸放送