プレミアリーグのVAR廃止投票を受けてスペイン紙がラ・リーガ各クラブの見解を紹介! ソシエダ指揮官は「時間を無駄にしない以前のサッカーの方が好きだ」

2016年のクラブワールドカップを最初に、各コンペティションや各国リーグで導入されたVARだが、その運用については多くの議論を巻き起こしており、プレミアリーグでは今後の継続をめぐり、各クラブによる投票が行なわれることになったことが話題になっている。

ウォルバーハンプトンが「2019-20シーズンに導入されたVARは、サッカーとファンの関係を悪化させた。プレミアリーグのブランドの価値を低下させるとともに、多くの否定的な結果を招いている」として、廃止決議案を提出したことにより、6月6日のリーグ総会で70%(14クラブ)以上のクラブがこれに同調すれば、このシステムは世界最高峰リーグから姿を消すことになる。

誰もが納得できる判定を助けるテクノロジーとして期待されるも、導入前からその運用方法については不安視もされており、案の定、いまだに多くの誤審が物議を醸している状況であり、リーグ側も改善に乗り出しているとはいえ、リバプールのユルゲン・クロップ監督は、自チームが受けた多くの“被害”を踏まえ、「現在のVARの使われ方に対しては、私は反対票を投じる」と、VARそのものへの反対ではなく、運営側への不信感を強調している(英国公共放送「BBC」より)。

不満はありながらも、プロサッカーには付き物となった感のあるテクノロジーの恩恵の排除という、時代に逆行する動きが起こる可能性は、現時点では低いのではないかという見方が大勢を占めているようだが、果たしてどのような決着を見るか、そしてそれによって今後にいかなる影響があるのかは、サッカー界にとっては非常に興味深いものである。

もちろん、VARに関するトラブルはプレミアリーグに限ったことではなく、各国リーグでも多かれ少なかれ問題が生じているのが現状だが、スペインではマドリードのスポーツ紙『MARCA』が、ラ・リーガ(1部)の各クラブのVARに対する見解を、クラブの声明やアクション、監督のコメント等から紹介している。

2シーズンぶりにリーグを制したレアル・マドリーでは、カルロ・アンチェロッティ監督が「VARは誤って使用されており、むしろ使いすぎだ。(判定に)ゲームをより良く理解している元サッカー選手や監督を含めるべきだ」「例えばオフサイドで、膝や足のわずかな部分が判定に影響を与えるのはおかしい」と語ったとして、「VARが審判の権限を奪い、ゲームの精神や現実にそぐわない決定を下していると考えている」と綴った。

続いてバルセロナについては、直接VARに対する賛否の見解は示されなかったが、宿敵マドリーとのクラシコ(第32節)で、ラミン・ヤマルのゴールが認められなかった件で、「ジョアン・ラポルタ会長は、全てのテレビ映像が示されなかったと考え、VARの正常な機能について強い疑念を表明した。彼は、この点を明確にするためにCTA(技術審判委員会)との会合を要求し、ボールが完全に入ったことが確認できる他の映像があった場合、法的措置を講じると脅した」という、エピソードを伝えている。
今季、旋風を巻き起こしているジローナは、「今季中に一度も声明を出していない。セグンダ(2部)時代には、デルフィ・ジェリ会長を通じて公式声明を出したり、特定のプレーの解釈に対する不満を露にしたりしたこともあったが、今季は非常に中立的な立場を取っている」とのことで、またミチェル監督についても「彼はVARを、常に審判を助けるためのツールだとして支持しており、クラブとともに導入を拒否したことはない」との姿勢を紹介した。
一方、アトレティコ・マドリーは、「VARによりサッカーがさらに公平になると非常に明確に認識しており、そのため、クラブとしてはサッカーにおけるテクノロジーの使用を支持しているが、まだ機能するに十分ではなく、完璧になるためには時間がかかると認識している。エラーを回避し、より迅速な審議を行なうために改善されることを望んでいる」と、支持を表明していると伝えながらも、「エンリケ・セレソ会長は、個人的にはVARに反対の意見で、これはディエゴ・シメオネ監督の考えとは大きく異なる」とも付け加えている。

そして、久保建英が所属するレアル・ソシエダでは、クラブではなくイマノル・アルグアシル監督の「正直に言って、私は以前のサッカーの方が好きで、VARは好きではない。あまりに時間がかかるからだ。確かに、正確な判定の可能性は高まるが、誤解や論争は依然として存在している。ゆえに、以前のように時間を無駄にしないサッカーの方が好きだ。VARとその運用には、映像の選び方や時間の使い方において多くの改善が必要だと思う」との個人的な意見が紹介された。

ちなみに、その他のチームの見解は、ベティスは「支持も調整の必要あり」、ビジャレアルは「完全支持」、バレンシアは「特定の時期には批判的だった」、ヘタフェ「一時的に廃止して1年間の準備期間を設ける」、アラベス、セビージャ、オサスナ、ラス・パルマス、マジョルカは「明確な意見は示さず」、ラージョ・バジェカーノ、セルタは「支持」、カディスは「改善を要求」、グラナダは「正しく適用されれば優れたツール」、アルメリアは「満足していない」となっている。

構成●THE DIGEST編集部

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