マニアックな“ささやき”がおもしろい!
【女子的アートナビ】vol. 334
本展では、サントリー美術館が所蔵するコレクションのなかから、国宝・重要文化財クラスの名品や、これまであまり展示される機会のなかった“迷品”など、さまざまなメイヒンを展示。
さらに、展示作品の近くには、通常の作品解説だけでなく、「学芸員のささやき」と題したマニアックな情報も提示されています。
担当学芸員の柴橋大典(しばはしだいすけ)さんは、本展について次のように述べています。
柴橋さん 名品と聞いて思い浮かべるのは、国宝など誰もが認める作品だと思います。しかし、展覧会にあまり出品されてこなかった“迷品”も、少し視点を変えるだけで魅力的な作品に見えてくる可能性を秘めています。本展では、国宝・重要文化財16件を含むサントリー美術館のメイヒンを集めました。ご自身にとってのメイヒンを探してみてください。
いきなりユニーク…
では、展示作品からいくつか気になるものをピックアップしていきます。
最初の展示作品は、いきなりユニーク。正面から見ると、太鼓のようにも見える不思議なフォルムで、とても惹きつけられます。
この白い物体は鞠(まり)で、その周囲にあるのは鞠挟(まりばさみ)。古代から伝えられてきた蹴鞠(けまり)用の道具です。蹴鞠とは、鹿皮製の鞠を蹴り上げて落とさないように受け渡しする貴族の遊び。さすが貴族の道具だけあって、鞠挟もゴージャス。蒔絵もあしらわれて美しいです。
ユニークな“迷品”のすぐ近くには、サントリー美術館が誇る国宝《浮線綾螺鈿蒔絵手箱》が展示されています。
金粉や螺鈿などで装飾され、華やかで美しい手箱です。「学芸員のささやき」には、北条政子が愛蔵していた手箱だという言い伝えや、新たな伝説なども記載。ぜひ会場で読んでみてください。
素朴でかわいい絵入り本
また、サントリー美術館の大人気“迷品”《かるかや》も展示されています。
本作品は、仏教の教えを説く説経節(せっきょうぶし)「苅萱(かるかや)」の絵入り本です。素朴でかわいい絵ですが、本の内容はホッコリするものではありません。
主人公は、無常を感じ、妻子を残して出家した苅萱道心(かるかやどうしん)。彼は、息子が父を探しに高野山を訪れても自分が父だと名乗らず突き放し、信濃に移って善光寺で亡くなります。さらに、高野山で出家した息子も父と同じ日の同じ時刻に亡くなったというストーリーです。
プロの絵師が描いたものではありませんが、素朴で心を打つ“迷品”です。
《かるかや》がグッズに…!
ミュージアムショップでは、なんと《かるかや》がマトリョーシカになっていました! なぜマトリョーシカになったのか、非常に気になるところですが、素朴な絵画がそのままの雰囲気で人形化されていて、めちゃくちゃ和みます。それぞれのお顔も愛らしく、部屋に置いてずっと眺めていたくなるグッズです。
ほかにも、多くの作品が美しいアクセサリーやステーショナリーグッズになっています。どれにしようか迷うほどの良いグッズも“メイヒン”のひとつですね。
本展は6月16日まで開催。ぜひ、メイヒンを探しに足を運んでくださいね。
Information
会期:2024年4月17日(水)〜6月16日(日) ※作品保護のため、会期中展示替を行います
場所:サントリー美術館(東京ミッドタウン ガレリア3階)
開館時間:10時~18時 ※金曜および6月15日(土)は20時まで開館 ※いずれも入館は閉館の30分前まで
休館日:火曜日(6月11日は18時まで開館)
入館料:一般 ¥ 1,500、大高生 ¥ 1,000、中学生以下無料