【連勝ストップの清水。攻撃のキーマン2人は何を思う(1)】「タンキも入ったし、中で行けそうな場面があったけど…」。6戦ぶりの復帰の乾貴士が悔やんだこと

横浜FC戦でプレーする清水エスパルスの乾貴士 撮影:中地拓也

今季J2で破竹の勢いを見せ、首位を独走している清水エスパルス。4月7日のヴァンフォーレ甲府戦から7連勝というのは、序盤苦戦した昨季とはまさに対照的だ。

指揮を執る秋葉忠宏監督も「今季は自分が最初からチームを見ていますし、選手も違う。走力も含めて全てが揃っている」と自信に満ちた発言をしていたが、J1から降格してきた横浜FCにも勝ち切れれば本物だろう。

そういう意味で、5月18日のアウェーゲームが注目された。約6000人の大サポーターが駆けつける中、清水は相手を圧倒したかったが、逆に横浜FCの組織的守備を崩せず、苦しむ展開を余儀なくされた。

「特に前半は横浜FCさんの気迫や球際の強度、何が何でもこのゲームを制するという圧力に押され、我々がコンマ1秒遅れを取った分、かなりゲームを持っていかれてしまった」と指揮官も反省の弁を口にしていた。

前半17分の1失点目のダメージも大きかった。井上詩音との右ショートコーナーから左足キックの名手・福森晃斗が蹴り込んだクロスに反応したのはガブリエウ。これは守護神・権田修一も止めきれなかった。

「セットプレーで先制されると相手も頑張って守るので、特に難しくなる。もう一度、先制点を取れるチームになるようにしていかないといけない」とベンチから戦況を見守っていた乾貴士は険しい表情を浮かべた。

ただ、6試合ぶりにケガから復帰したこの男がいれば、後半は違いを作ってくれるはず。1点のビハインドで試合を折り返した清水サイドにはそういう期待も高まっていたはずだ。

実際、後半の清水は攻撃の迫力と推進力が一気に上がった。乾もカルリーニョス・ジュニオと代わって後半9分から登場。このタイミングで秋葉監督が4バックから3バックに布陣変更したため、乾はルーカス・ブラガとともに2シャドウの一角に陣取り、フィニッシュに絡む仕事を強く求められた。

「とにかく1点を取りたかったので、まず同点にすることだけを考えてやりましたけど、思ったようなプレーができなかった」と本人はギアが入りきらなかったことを明かす。

■狙いを持った攻めを繰り出そうとしていたが

指揮官はその後も何枚かカードを切り、後半30分からは再び4バックへシフト。乾はボランチに下がったが、中央一辺倒になりがちな攻撃に効果的な変化を与えられなかった。彼自身は時折、外に開いて的確なパス出しなどで違いを作っていたが、どうしてもゴールが遠い。焦燥感も募ったに違いない。

「中で行けそうな場面が何度かあったし、相手も5バックで守っていたので、外からっていうのもなかなか難しかった。ただ、(ドウグラス・)タンキが(後半30分から)入ったことで高さはあったので、それを生かしたいと思ったんですけどね…」と背番号33は狙いを持った攻めを繰り出そうとしていたが、最後の最後まで得点には結びつかなかった。

そして、逆に後半ロスタイムに一瞬のカウンターから伊藤翔の一撃を浴び、0-2でタイムアップの笛。清水は7連勝がストップし、乾自身も復帰戦を飾ることができなかった。

「自分が帰ってきて敗戦というのはすごく責任を感じてますし、ここで連敗をしないことが大事。勝って修正していくことが一番なので、次に向けてしっかりまた準備したいですね」と彼は改めて気合を入れた。

35歳のベテランが並々ならぬ意欲を示すのも、同日に日本代表時代の盟友・岡崎慎司(シントトロイデン)の現役ラストマッチがあったことが大きいようだ。

「試合自体は見られなかったけど、全員が整列して花道を作ったところは見ました。岡ちゃんはホントに愛されてますよね。自分ももうすぐ(引退)ですけど、できる限り、頑張りたい」と乾はしみじみと発言。自分がピッチで戦えるうちに清水の名門復活を果たし、恩返ししたいと考えているはずだ。

やはりここからの立て直しには、稀代のテクニシャンの底力が重要。いち早くコンディションを引き上げ、ゴールを奪ってほしいものである。

(取材・文/元川悦子)

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