東京の名門進学校出身、パリ五輪狙う二刀流ハードラー 慶大キャプテンの覚悟示した豊田兼の45秒間

男子1部・400メートルで優勝した慶大の主将・豊田兼【写真:中戸川知世】

陸上・関東インカレで輝いた選手たち 男子1部・400メートル/慶大・豊田兼(4年)

9日から4日間、行われた陸上の第103回関東学生競技対校選手権(関東インカレ)。2年ぶりに国立競技場で開催された熱戦を取材した「THE ANSWER」は文武両道で部活に励む選手や、怪我や困難を乗り越えた選手など、さまざまなストーリーを持つ学生を取り上げる。今回は男子1部・400メートルに出場した慶大・豊田兼(4年)。決勝では2位以下を突き放し、45秒82の好タイムで優勝した。400メートル障害と110メートル障害でパリ五輪出場を目指す“二刀流ハードラー”。飛躍の場となった慶大で主将も務める21歳は、左脚に不安を抱えながらもチームのために力走した。(取材・文=THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂)

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最後の関東インカレで、主将の責任を果たした。豊田は左脚に不安を抱えながらも男子1部・400メートル決勝に出場。自己ベストの45秒57で走った準決勝からはタイムを落としたが、45秒82の好タイムで関東初戴冠を飾った。主戦場のハードルではない種目ながら地力で圧倒。「初優勝できて満足」と汗を拭った。

昨年8月のワールドユニバーシティゲームズ(中国)110メートル障害で優勝し、10月の日本GPシリーズ ヨギボーチャレンジでは400メートル障害のパリ五輪参加標準記録を突破。2種目でパリ五輪出場を目指す“二刀流ハードラー”だ。

パリ五輪では110メートル障害と400メートル障害の2種目で出場を目指す【写真:中戸川知世】

東京の名門進学校・桐朋出身。フランス人の父を持ち、195センチの長身を誇る逸材にとって、飛躍の舞台となったのは「色々な種目に挑戦できてレベルの高い大学」と選んだ慶大だった。「コーチと相談しながら課題を明確にし、日々の積み重ねで潰してきた」。入学から110メートル障害は0.8秒、400メートル障害では3.5秒もタイムを短縮した。

今季は主将にも就任。関東インカレはチームの総合得点でリーグが昇降することもあり、「慶応も1部では上位で戦えるチームではない。1着を取るのが僕の使命だと思っていた」と力走。母校のために体を張った。

「直前まで吐き気がするくらい緊張するタイプ。その中でも調整して結果を出せるのが強み」と話す21歳。ここからは父の母国で開催されるパリ五輪出場を目指す戦いが始まる。「まずは400メートル障害でしっかり決めて110メートル障害でも狙っていきたい」。慶大主将の役割を果たし、次は夢舞台への切符を掴み取る。

THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂 / Kaho Yamanobe

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