パリ五輪切符を掴んだ宮田笙子が涙のワケ 3連覇の瞬間、思い浮かんだ「ここにいない仲間」のこと

パリ五輪行きを決めた直後、涙をこらえるような表情を見せた宮田笙子【写真:中戸川知世】

THE ANSWER編集部・カメラマンフォトコラム

体操のパリ五輪代表最終選考会を兼ねたNHK杯第3日が18日、群馬・高崎アリーナで行われ、女子個人総合で19歳・宮田笙子(順大)が3連覇を達成し、初の五輪切符を獲得した。優勝の瞬間、エースが見せた涙のワケとは。(写真・文=THE ANSWER編集部・中戸川 知世)

◇ ◇ ◇

パリへの切符を手にして涙した。最終演目のゆかの演技を終えた宮田の得点が発表される。合計217.162点。3連覇を達成すると、トレーナーらと談笑する間に感極まり、涙をこらえるように少し口をゆがませた。

五輪で体操ニッポンの新エースとなる19歳の反応を捉えようと、多くのカメラが宮田の一挙手一投足を追う。重圧ももちろんあっただろう。その間から撮影し、ファインダーに写っていた表情は、悲願だった五輪内定の安堵から来たものかと思えた。

取材でも坂口彩夏について語り、涙ぐみながら語った宮田【写真:中戸川知世】

「怪我でここに立てなかった選手のことも考えると……」。会見でも涙ぐみながら言葉を紡いだ。「何年も前から海外派遣に一緒に行っていた仲間たちがパリ五輪にいない寂しさがある」

その一番の「仲間」こそ、2022年の世界選手権に共に出場し、切磋琢磨してきた2つ年上の坂口彩夏だ。今大会は怪我で欠場し、一緒にパリに行くことは叶わなかった。「居てほしかった」。宮田からほんの少し弱音が漏れた。

内定した5選手全員が10代で初出場。19歳にして、宮田がチーム最年長となる。「引っ張っていくことに不安というわけではないけど、私が不安な時に前向きな気持ちにしてくれる存在なので」。今回も試合前に坂口から応援メッセージをもらい、力に変えた。

「メッセージをくれた選手たちの分まで頑張ると約束した」

力強い言葉で締めくくると、宮田は両手で涙をぬぐって笑顔で前を向いた。チーム最年長であり、エース。パリに行けなかった仲間の思いも背負い、五輪の舞台に向かう。

THE ANSWER編集部・中戸川 知世 / Chise Nakatogawa

© 株式会社Creative2