税務調査官の思うツボ!?…名義預金2,000万円の追及を受ける70代女性、つい口走った「余計なひと言」に大後悔【税理士が警告】

(※写真はイメージです/PIXTA)

税務調査というと、個人事業主や法人のイメージが強く、会社員や主婦など個人にはあまり関係がないと思っている人も多いのではないでしょうか。しかし、そんなことはありません。税務署は個人に対しても目を光らせているのです。もし自分が税務調査の対象になった場合、スムーズに済ませるためにも「納税者のNG言動」を把握しておきましょう。多賀谷会計事務所の宮路幸人税理士が具体例を交えて解説します。

「税務調査」は誰にでも起こり得る

日本は申告納税制度を採用しており、自分の申告は自分で行わなければなりません。そこで税務署は、個人と法人が提出した申告書に対して、申告内容が正しいかどうかを確認します。そこで不正行為や申告内容の虚偽、誤りなどがあれば是正を求める……こうした一連の調査手続きを「税務調査」といいます。

税務調査には強制捜査と任意調査があり、強制捜査は悪質だと判断された場合に行われます。国税局査察部が担当する調査で、裁判所の令状をもって実施され、脱税行為がみつかった場合は刑事事件として取り扱われます。

他方、任意調査とは一般的な税務調査のことをいい、通常行われる税務調査はこちらにあてはまります。ただし、調査官には「質問検査権」が与えられているため、正当な理由なく資料の提示や提出を拒んだ場合などは1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。任意といえども強制力もあるという点は知っておくとよいでしょう。

調査の対象となる割合ですが、法人は約3%、個人所得税は約1%、相続税は約9%ぐらいであるといわれています。また、基本的には所得が多い人が狙われやすいものの、税務調査は誰にでも起こり得る事象です。特に、相続税の申告は普段税務に縁のない個人が突然当事者となることから、故意か過失かは別として申告の漏れが発生しやすく、税務署から狙われやすい傾向にあります。

もしも自分が税務調査の対象になったら…当日の流れ

相続税の調査が行われる場合、相続税の申告完了後、おおむね1~2年以内に税務署から連絡が入ります。税務調査というと、ある日突然スーツの調査官たちが大勢押しかけてくるイメージをもつ人もいるかもしれませんが、それは強制捜査の場合です。一般的な税務調査では、税務署から事前に連絡があり、そこで日程などの打合せを行います。

もしも税務調査を受けることとなった場合は、当日までに提出した申告書とその申告のもととなった原資料をきちんと準備し、質問があった際スムーズに答えられるよう準備をしておきましょう。

税務調査当日に「絶対やってはいけない」NG言動

税務調査の当日は、以下のことに注意が必要です。

①余計な回答をしてしまう

税務調査対応の基本は「余計なことを話さない」です。提示を要求された請求書や契約書などの資料を用意して、質問に回答しておけば問題ないのですが、自信がなかったり、何かごまかそうと考えたりすると、つい余計にしゃべってしまい、厳しい追及を受けることがあります。

②不明確なことを言ってしまう

わからないことは無理に答えようとしないでください。あやふやなまま適当に答えると、逆に不信感を持たれることがあります。即答できない質問を受けた場合「その件は調べて後ほどご連絡します」と答えるのが無難でしょう。

税務調査は何年も前ことまで遡って聞かれるため、すべての質問に対して即答できなくても不自然ではありません。また、調査官も本音では「早めに終わらせたい」と考えているため、こちらも早く終えられるよう協力しましょう。

③敵対的な態度をとってしまう

ある日突然、自分が税務調査の対象になったら……はっきり言っていい気はしないでしょう。その気持ちは分かりますが、くれぐれも「必要以上に攻撃的な態度をとる」ことは避けるべきです。

相手も人間ですので、不用意な発言で感情的になった結果、相手もむきになり調査が長引くようなこともあるかもしれません。調査官も仕事で確認に来ているだけだと考え、挑発的なことは言わないほうが無難です。

④「ほかの人もやっている」

そのほか絶対に言ってはいけない“NGワード”があります。それは、「前回の調査では問題なかった」「ほかの人もやっている」といった言い訳です。

まず、過去に税務調査を受けたことのある個人事業主や中小企業におおいのが「前回の調査では問題なかった」という言い訳です。しかしこれは前回の調査で見落とされただけであり、むしろこの発言により遡って修正を受ける可能性が高まります。

また個人の場合、自分が追徴課税を逃れたいあまり「ほかの人もやっている」などと言ってしまうのは絶対に避けましょう。それは多くの場合たまたま税務調査が入ってなかっただけです。

以前、夫が亡くなった2年後に相続税調査を受けた70代の女性から、亡くなった夫が貯めていた「孫名義の名義預金約2,000万円」が税務調査で発覚した際、その女性は思わず「みんなやっている」「知り合いは大丈夫だと言っていた」などとゴネたそうです。結果、調査官から「その知り合いの名前を教えてください」と厳しい追及を受け、非常に後悔したという話を聞きました。

余計なリスクを排除するため…相続税の申告は慎重に

いかがだったでしょうか? 納税は「申告書を提出して終了」ではありません。特に個人は「まさか自分に限って」と油断している人も多いでしょう。

被相続人がなくなってから1~2年後、「税務調査に伺いたいのですが」という連絡が入っても慌てずに済むよう、相続税の申告は相続専門税理士など専門家に依頼することをおすすめします。

宮路 幸人

多賀谷会計事務所

税理士/CFP

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