思わず号泣した…『世界名作劇場』の人気を後押しした“愛くるしすぎる動物たち”の泣けるエピソード

世界名作劇場・完結版 『ロミオの青い空』 [DVD](バンダイビジュアル)

「いいんだよ、ラスカル。行っていいんだ」

「パトラッシュ、疲れたろう? 僕も疲れたんだ。なんだかとても眠いんだ……」

これだけで涙腺が崩壊しそうになるのは、決して筆者だけではないだろう。動物が出る作品は、いつもの倍泣けてしまう。

言うまでもなく、これらは日曜夜19時半枠のアニメ『世界名作劇場』(フジテレビ系列)で放送された『あらいぐまラスカル』と『フランダースの犬』の名シーンだ。同シリーズではほとんどの作品に愛くるしい動物たちが登場し、その人気を後押しした。そんな彼らの泣けるエピソードを振り返ってみた。

■少年と犬との強い絆に涙『名犬ラッシー』のラッシー

パトラッシュの名を出したからには、『名犬ラッシー』(1996年放送)のラッシーにも触れねばなるまい。

子犬のころから主人公・ジョンの親友としてともに過ごしてきたラッシーだが、ある事情から公爵に連れ去られ、ジョンと離れ離れになってしまう。それでもジョンに会いたいラッシーは公爵宅を抜け出し、600キロ以上離れた元の家へと帰ろうとするのだった。

ネス湖を泳いで渡り、野犬狩りに追われてボロボロになり、おまけに狼と間違われて銃で撃たれ、介抱してくれた優しい老夫婦の家もあとにして、ジョンを想い必死に進むラッシー。

そしてある朝、ラッシーが近くにいる予感で家を飛び出したジョンは、丘のはるか向こうに衰弱したラッシーの姿を見つける……。

原作でも映画でもドラマでも馴染みの内容だが、それでもラストは号泣必至だ。

■世代を越えて寄り添い続ける『ロミオの青い空』のピッコロ

犬は古くから人類の親友と言われるが、『ロミオの青い空』(1995年放送)では、オコジョ(イタチの仲間)が主人公を支えた。

煙突掃除夫として街に働きに出ることになった主人公のロミオに、勝手についてきてしまったオコジョのピッコロ。ロミオがピンチのときは小さな体で果敢に悪人に立ち向かい、友人・アルフレドが亡くなったときにはまるで慰めるかのようにロミオに寄り添い……と、ただ可愛いだけでなく頼れる親友であり続けた。

そしてラストシーン、大人になり子どもを抱いたロミオの肩には、おそらくピッコロの子孫と思しきオコジョが! きっと今度はロミオの子の良き友として寄り添ってくれるのだろう。

今、振り返れば、本作は人身売買や児童労働など重く暗いテーマを扱った作品だ。惨状のなかでひょっこり登場するピッコロは、ロミオだけでなく視聴者にとっても大きな支えだったように思う。

■何があっても離れない『母をたずねて三千里』のアメデオ

続いて、『母をたずねて三千里』(1976年放送)に登場した猿のアメデオ。いつも主人公・マルコの頭や肩に乗っている姿が印象的だが、途中でマルコがアメデオを手放そうとした場面がある。それは、友人のフィオリーナを船着き場で見送ったときのことだ。

アルゼンチン行きの移民船の出航に間に合わなかったマルコは、母への手紙をアメデオに持たせ、船上のフィオリーナに届けさせる。アメデオが舫い綱を伝ってフィオリーナの元へたどり着くと、マルコは“アメデオを母のところへ連れていき、僕の代わりに可愛がるよう伝えてくれ”と託した。しかしアメデオは再び舫い綱を伝って船着き場に引き返そうとし、海に落ちても泳いでマルコの元へと戻るのだった。

最初に母を見送り、次に友を見送ることになった船着き場で、アメデオだけはマルコの傍を離れなかった。それがマルコにとってどんなに大きな支えとなっただろうか。

■野生動物との出会いと別れ『大草原の小さな天使 ブッシュベイビー』のマーフィ

猿といえば、『大草原の小さな天使 ブッシュベイビー』(1992年放送)も忘れられない。野生動物との出会いと別れを描いた点では『あらいぐまラスカル』とも共通しているが、実は密猟問題や人種差別なども絡んだ社会派作品だ。

ケニアに住むイギリス人の少女・ジャッキーは、親を亡くしたブッシュベイビー(ショウガラゴ)の赤ん坊にマーフィと名付けて育てた。やがて本国に帰ることになったジャッキーは、マーフィを野生に帰す決意をする。

泣けるのはやはり別れのシーン。ブッシュベイビーのいる森でマーフィを放したものの、マーフィはどうしてもジャッキーの元へ戻ってきてしまう。たまらず泣き出すジャッキーだが、それでもマーフィを思えばこそ野生に帰す選択を貫いた。

そこにブッシュベイビーの群れが現れ、仲間たちに温かく迎えられたマーフィは、ようやくジャッキーの元を離れていく。最後に振り向くマーフィ、「さようなら、マーフィ」と涙を流すジャッキー。それぞれの決断が胸に迫る。

■引き継がれた命『七つの海のティコ』

最後に『七つの海のティコ』(1994年放送)のエピソードを紹介して終わりたい。

母を亡くした主人公のナナミは、海洋学者の父スコットと、親友であるシャチのティコとともに船で旅をしている。しかし物語の中盤、ティコは命を落とすことになる。

ティコの死から立ち直れないナナミを救ったのは、ティコの子どものジュニアだった。いつもはナナミにそっけないジュニアが、やたらとあとをついて泳ぐ。
「私はティコじゃないんだから」と冷たく言い放ったナナミだが、“ジュニアは私についてくればティコに会えると思ってるんだ、本当に悲しいのは母親を亡くしたジュニアなんだ”と、気づくのだ。

ちょうどそのとき巨大なシロナガスクジラが歌い、その歌声を聞いてやってきた年老いたシロナガスクジラが寿命を迎えて海底に沈んでいく。「命が引き継がれたんだ」とスコット。それを聞いたナナミは、ティコの命が自分やジュニアの中に引き継がれて生き続けることを悟り、その死から立ち直るのだった。

ともに母を亡くしたナナミとジュニアの新たな絆、そこに引き継がれている命の循環。壮大なスケールのエピソードだ。

大人になってこれらのエピソードを振り返ると、なぜか余計に泣けてくる。子どもの頭では、“可愛い、嬉しい、悲しい、かわいそう”程度の意識でも、もっとずっと深い部分で心を揺さぶられ、教科書では学べないことをたくさん教わっていたのだろう。

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