低緯度オーロラの誤情報 「インプレゾンビ」のコピー投稿が拡散

検証対象

【カメラマンから】 北海道上ノ国町 オーロラでしょうか。 すごいことになってます。 (野) 待ってくれ、寝室の窓からオーロラを観測する日が来るとは!! #オーロラシチズン #低緯度オーロラ
(※画像付き投稿)

一般ユーザーのX投稿(2024年5月11日、約2500リポスト)

判定

判定の基準について

これらの画像はそれぞれイギリスとスウェーデンで撮影されたもので、上ノ国町ではない。

ファクトチェック

2024年5月11日、大規模な太陽フレアによる磁気嵐の影響により、通常は北極圏などの高緯度地域でしか見られないオーロラが、日本を含む低緯度地域でも広範囲に観測された(参照)。この時のオーロラを撮影した写真や動画は、SNS上でも多数投稿されている。

検証対象の投稿にはオーロラを撮影したと見られる2枚の画像が添付され、北海道の南端に近い「上ノ国町」という地名が書かれているが、後半の文章は文体が突然変わるなど、前半とのつながりがやや不自然である。

画像は別の場所

実際は、この2つの画像はどちらも上ノ国町で撮影されたものではない。

1枚目の画像は元々はイギリス在住だという別の一般ユーザーが投稿したもので、撮影場所はイギリス北部、スコットランドの首都エディンバラである。検証対象の投稿文面の後半も、この投稿がそのまま使われている。

2枚目の画像は、さらに別のユーザーがスウェーデンで撮影したものだ(画像3枚目が一致)。

また、「北海道上ノ国町」と書かれた前半の文面とハッシュタグの部分は、北海道新聞函館報道部公式アカウントの投稿からコピーされている。

上の3つの投稿はいずれも、検証対象の投稿(日本時間5月11日午後8:51)よりも前に行われている。検証対象の投稿は、実際にこの日に観測されたオーロラの画像を使ってはいるが、「北海道上ノ国町」は別の画像の説明であるため、全体として「不正確」である。

投稿者はコピー繰り返す「インプレゾンビ」

このコピー投稿を行ったアカウントは、ユーザー名は日本語のカタカナで表記されているが、プロフィール文は英語で書かれている。投稿は日本語や英語、タイ語などで、他人の投稿をコピーしたと思われる脈絡の無い文章に無関係の画像や動画を組み合わせたものが多い。

当該アカウントの投稿の例

最近Xでは、インプレッション(閲覧数)に応じた収益を獲得することを目的として、注目を集めた他人の投稿を盗用したり、無意味な返信を繰り返したりする「インプレゾンビ」と呼ばれるアカウントが大量に現れ問題になっている。こうしたアカウントには日本以外の海外を拠点とするものが少なくないとされている(参照)。

今回の投稿を行ったアカウントもこうしたインプレゾンビの1つであると考えられ、正確性を無視したコピー投稿が誤った情報の拡散につながっている。

オーロラに乗じたコピー投稿多数

上述のイギリス・エディンバラのオーロラ写真は、別のアカウントにも「石川県能登半島の輪島市」として投稿され、約300リポストを獲得している。この文面は、本来は石川県能登町の天体観測施設・満天星の公式アカウントが別の写真と共に投稿したものである。

イギリス・エディンバラで撮影されたオーロラを「輪島市」とする投稿。コミュニティノートによる訂正が加えられている

他にも、写真家の上田優紀氏が撮影したオーロラの動画を盗用した別の投稿に、さらに「青森県」と誤った文面を追加した投稿が、約1000リポストを獲得している。この文面もまた別の投稿からコピーされたものだが、動画は実際は上田氏が過去にアイスランドで撮影したものである。上田氏本人の抗議により、現在では盗用の投稿は削除されている。

今回の低緯度オーロラのように、X上で大きな注目を集めた出来事があると、それに乗じたインプレゾンビと思われるアカウントの投稿が活発化し、誤った情報も流れやすくなる傾向にある。過去には2024年1月の能登半島地震や4月の台湾での地震といった災害時にも同様の問題が起きており、注意する必要がある。

(大谷友也)

© 一般社団法人リトマス