2024北京モーターショーの新技術(2)高級EVメーカーZEEKRのアーキテクチャ「SEA-M」

中国の高級EVメーカーZEEKRは北京モーターショーで新車「ZEEKR MIX」を発表した。

吉利汽車傘下の高級電気自動車(EV)メーカーZEEKR(ジーカー/極氪)は2024年の北京モーターショーで新車「ZEEKR MIX」を発表し、家庭向けのすべての利用シーンに適用する5席のEVと位置づけられている。

ZEEKR MIXには大型車並みのスペースも小型車並みの作業性もあり、同クラス車の中でスペースが最大の5席車種で、同時に最も多い車室シーンモードを実現した。

6.3平方メートルの車室スペースを備え、前列シートは270度回転可能、回転角度は世界最大レベルで、無段電動調節も可能。2メートル近くの前後列共用レールがあり、スライドストロークは前列シートが800ミリ、後列シートが490ミリで、車内スペースを自由に変えることができる。

また、パーティーモード、ベビーモード、観光モードなどさまざまなモビリティーモードがある。

パーティーモードは、前列シートが180度回転し、4人が向かい合って座ることが可能で、幅調整可能のテーブルを搭載すると、車内は「移動式レストラン」に早変わりする。

ベビーモードは、子供連れの家族のためのカスタマイズ開発で、車内に面積約1.5平方メートル、高さ1.35メートルの空間を作り、8歳以下の子供は完全に立って自由に遊ぶことができ、瞬時に「子供部屋」に変えることができる。

若者が最も好む観光モードは、運転席、助手席がそれぞれ両側へ90度回り、車内を「移動式ベランダ」に変え、車を止めて道端の景色を楽しむことができる。

これらの簡単に調整可能な空間とモビリティーモードの実現はZEEKRの最新のSEA-M(浩瀚-M)アーキテクチャに基づいている。

自動車はスマート電動時代に入ったが、車内の空間設計は依然としてガソリン車時代にとどまっている。

ZEEKRは70億元(約1400億円)を投資してSEA-Mアーキテクチャを開発し、EVの構造に基づいた合理的なEV車内スペースアーキテクチャを再構築し、ユーザーの車内スペース使用ニーズと結合して、豊富な利用モデルを創造した。

空間利用率が上昇

現在のほとんどの新エネ車の車内空間利用率は70%前後で、ガソリン車から画期的な変化はない。一方、SEA-Mアーキテクチャの車内空間利用率は80%を超え、10%上昇した。

中型車のサイズで大型車のスペースを提供するために、SEA-Mアーキテクチャは車内スペースを徹底的に改造した。軸長比は64%を超え、最初の車種は4.7メートル未満の車長で、3メートルを超えるホイールベースを実現した。ショートフロントサスペンション設計とより前方の空調システムにより、ヘッドスペースを全面的に開放した。

ダンパーとばねを分離することにより、ホイールパックの厚みを減らし、コンパクトな同軸モーターによりリヤフロアの二つ目のクロスメンバーを後方に移動させ、座席の後部空間を広げた。

ドアの構造と材料の最適化により、車室の幅を10%以上上昇させ、前列にシートを3席設置することもできる。

SEA-Mアーキテクチャは自動車業界の中で最も整ったフロアを設計し、サイドシル(敷居)を取り除き、いかなる突起もなく、スムーズに乗り降りできる。

小型車並みの作業性を実現

SEA-Mアーキテクチャは中型車に大型車並みのスペースを提供するだけでなく、小型車並みの作業性も提供する。

SEA-Mアーキテクチャに基づいて生産された初代の車種は、最小旋回半径が5メートル以下で、同クラス車の中で最小レベルだった。新しいサスペンション構造により、同クラス車の中で最大の50度以上の前輪舵角を実現し、従来の車種の1.4倍となっている。

電動の両開きドアで乗り降りが便利

「貫通式電動両開きドア」には二つのメリットがある。まず、両開きドアは駐車時に余分なスペースを取らないため、安全で便利だ。次に、前後列の貫通設計により、ドアを左右にスライドして最大限に開くと、業界で最も広い1.48メートルの空間が出現する。

車体構造に遮りがなく、ドアを開けると、敷居がなく、段差もなく、車の床は地上から390ミリしか離れておらず、高齢者や子ども、妊婦なども乗り降りに困らない。

超高強度ピラーで安全性が向上

SEA-Mアーキテクチャに採用されている「コンシールド式ダブルBピラー設計」は、従来のBピラー(センターピラー)の材料に比べて強度が33%向上した。両サイドのドアには直径約70ミリの超高強度のスチール製ピラーが2本あり、各ピラーには2000メガパスカルの超高強度の熱間成形スチールが採用されている。潜水艦に使われる材料と同等の強度があり、熱膨張一体成形技術により内から外まで一切の隙間がない。

ダブルBピラーを基礎として、SEA-Mアーキテクチャはより究極な側面衝突防護を構築した。ドアフレーム上部の梁にはBピラーと同じ技術の超高強度のスチール製ピラーを採用し、車両の重量の4倍の押圧に耐えられる。ドアフレーム下部には3層構造の敷居梁が採用され、うちアルミハニカムと1500メガパスカルの熱間成形スチールはエネルギー吸収の除荷力と高い耐衝撃性を両立している。

ZEEKRはガソリン車に強い中国自動車大手傘下のEVメーカーのため、新エネ車時代の変化への適応は合弁企業に比べて明らかに迅速かつ柔軟だ。設立からわずか3年の現在、すでに中国新エネ車の第一線ブランドに仲間入りし、「新エネ車新勢力」の上海蔚来汽車(NIO)、理想汽車、小鵬汽車(Xpeng)などと肩を並べている。

ZEEKRは吉利汽車傘下のEVメーカーで、吉利グループにおける地位は吉利汽車と並ぶ自動車メーカーであり、両者は上下関係ではなく兄弟関係にある。

ZEEKRは従来のガソリン車メーカーが新エネ車分野に転換して参入する一般的なやり方と異なり、独立した企業、新しいブランド、革新的なユーザー組織とビジネスモデルで独立した発展を遂げている。

ZEEKRの成功は、従来の自動車メーカーがモデルチェンジや新エネ車業界に参入する際の参考になるだろう。(編集/CL)

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